軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

414 木を隠すには森の中

「後は酒の肴か」

莉奈は思わず呟いた。

ハイボール祭りに備えて、料理人達はからあげやポテトフライなど、様々な料理を作り始めている。

ならば、ここはハイボール祭りにもう一つ色を添えてあげるかな。

「あ、でも豚肉がないや」

そう思った早々、豚肉が余りない事に気付いてしまった。

王族分は当然あるが、皆まで回らない。

ロックバードのおかげで鶏肉は豊富にあるし、牛肉の代わりにブラッドバッファローの肉がある。だが、豚はまだ少ない。

「肉?」

呟きを拾ったリック料理長が、訊いてきた。

「あ〜うん。何か作りたいなと思ったんだけど、豚肉が余りないから……」

皆の分が作れないと言おうとしたら、リック料理長が見習いに何か言って、小さな 魔法鞄(マジックバッグ) を持ってこさせた。

莉奈は意味も分からないままその 魔法鞄(マジックバッグ) を手渡され、小さく眉根を寄せた。

「ん? コレがどうしたの?」

「肉なら、色々ここに入ってるよ」

「色々?」

色々とはなんだろうと、莉奈はさらに眉根を寄せた。

色々の意味がまったく分からなかったのだ。

「まぁ、漁ってみろ」と言われ、莉奈は恐る恐る 魔法鞄(マジックバッグ) の中に手を突っ込むと、頭の中に入っている物の一覧表が浮かんだ。

・ロックバードの各部位。

莉奈も知っているポピュラーな? 魔物の肉に混じり、知らない肉も混ざっていた。

・一角ウサギのモモ肉。

・ボア・ランナーの各部位。

・ブラックブルの各部位。

・ブラッディーバイソンの各部位。

「魔物の肉」

軽く視ただけで、色々な肉が入っていた。

一角ウサギだけは、モモ肉しか入ってないのか各部位の表記はなかった。

ちなみに、各部位を詳しく見ると……モモ肉やムネ肉の細かい表記に変わる。同じ物や似た物が入っていると、まとまって表記されるみたいである。

「軍部の人達が狩って来た魔物を解体して、それをシュゼル殿下が【鑑定】に掛けて分けてくれたんだよ。それはリナ用」

「え、あ、そう」

つい最近、その肉用の 魔法鞄(マジックバッグ) を貰ったのだと教えてくれた。皆用の厨房で自由に使える肉は別の 魔法鞄(マジックバッグ) にあるそうだ。

そういえば……ロックバードを食べた時に、一般市民に魔物の肉が勝手に出回らない様に鑑定するとかなんとか、フェリクス王達が言っていた。

あの時は、莉奈にも手伝ってもらう様な事を言っていたけど、結果的にはシュゼル皇子が鑑定作業を1人でやってくれたらしい。

お礼も兼ねて、近いうちに何か作らねばならないなと、莉奈は考えたのだった。

「ちなみに、リックさん達はコレ味見したの?」

「「「してない」」」

「は?」

先に貰っていたのならと莉奈が訊いてみれば、料理人達の答えはノーだった。

味見くらいすればいいのにと、莉奈は皆をジトッと見た。

「「「……」」」

一斉に目を逸らす料理人達。

要はいくら鑑定で可と出ても、まだ初見の魔物の肉は不安があるので、1番最初には口にしたくない……という事なのだろう。

「それでもお前達は王宮料理人か!!」

莉奈はとりあえず、ふざけ混じりに罵っておいた。

料理人なら、とりあえず味見せいと。

それには皆も「ごもっともです」と笑って頭を下げたのであった。

◇◇◇

「まぁ、それはともかく……」

同じ肉が入っていると思われる皆用の 魔法鞄(マジックバッグ) を見つけた莉奈は、中からとある肉を出していた。

「そこは、自分用じゃないのかよ」

「私に毒見をさせる人達に言われたくない」

莉奈がそこから取り出したのを見た料理人が、笑って言ったので莉奈は当然の権利だと返した。

「"ボア・ランナー"ってなんだ?」

1番良く分からないボア・ランナーのモモ肉を取り出した。

バットに無造作に載っている肉は、赤身の肉で牛肉に似ているが、牛肉とは違う脂の入り方をしている。赤身なのでサシという感じではなく、筋の様な脂身が1本入った感じだ。

それは斜めに入っているので、交通標識の通行禁止みたいに見える。

何の肉か分かってはいるが、一応【鑑定】して視る事にした。

【ボア・ランナーの外モモ肉】

後ろ脚付け根の外側の部位。

食用である。

脂肪が少ない赤身の肉。内モモ肉より硬めだが美味しい。

"外"モモ肉……か。

肉といえば、痩せてから自分を【鑑定】していないなと……莉奈はいらん事を考えてしまった。そして、思わず自分を鑑定して視た。

そう、視てしまったのだ。

〈状態〉

いたって健康。

だが、お腹がプックリ戻り気味。

ーーイヤーーッ!!

視なきゃ良かった。

確かにお腹周りがキツくなっている様な気がした。

痩せて気が緩んだせいで、走るのをサボリがちになっていた。

だけど、食べ物は皆と同じで自分が広めたハイカロリーが多い。となれば、こうなるのは当たり前である。

現実を叩きつけられた莉奈は、あえなく撃沈したのだった。

「リナ?」

「どうした?」

「その肉はマズイのか?」

莉奈が自分の鑑定を前に倒れたとは知らない料理人達は、心配そうに声を掛けていた。

手にした魔物の肉が美味しくないのだと、勝手に解釈した様だ。

「あははっ!!」

莉奈は残酷な現実を前に壊れた。

しかし、同時に思った。

「木を隠すなら森の中だよね!!」

「「「はぁ??」」」

莉奈の唐突な発言に、皆は怪訝な表情をしていた。

まったくもって意味が分からない。

ブタを隠すには群れの中。

デブを隠すにはデブの中だ!!

莉奈は自分の体型が気にならなくなる様に、周りもふくよかにしてしまえばイイ……と、間違った方向に猛烈に意欲を燃やし始めていた。

皆は、莉奈が碌な事を考えていないと悟ったが、それが何かまでは分からなかったのだった。