軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

409 後は木の実を割ってもらえれば

「アッツ、ん!? 旨っ!!」

エギエディルス皇子は、ハフハフと熱い息を漏らしながら、揚げたてのからあげを頬張っていた。

「ニンニク醤油も美味しいでしょう?」

「すげぇ旨い!! 俺はからあげは塩が1番だと思っていたけど、ニンニク醤油も堪らない!!」

瞳をキラキラさせたエギエディルス皇子は、抱き締めたいくらいに可愛い。

大好物がまた出来たようで何よりである。

「塩ニンニクも美味しかったけど、この醤油? 風味が堪らないわね」

「ただ塩辛いんじゃなくて、独特な風味があってイイな」

「カチ割りの実の中身、俺初めて知った。塩辛い果汁としか聞いた事なかったし」

「タコだけじゃなく、コレも特産になるんじゃない?」

「だよな。うちの村、貧乏村で出稼ぎが多かったけど、タコとコレで脱却出来るかもしれない」

皆にも揚げたてを渡せば、ニンニク醤油味は想像以上にウケが良かった。

皆が好きなからあげにしたのが、良かったのかもしれない。

「リナ、もう1個くれ」

仔犬の様なエギエディルス皇子に強請られ、莉奈は思わず目が垂れた。

「ちょうどいい時間だから、陛下達と昼食にしようか?」

「うん!!」

そう嬉しそうに言ったエギエディルス皇子の笑顔に、今日も癒される莉奈なのであった。

◇◇◇

「からあげか」

昼食を摂るために来たフェリクス王が、テーブルの上に載る料理を見て呟いた。

「先程、陛下に切って頂いた醤……ユショウ・ソイの果汁で味付けをしましたからあげです。サラダはチーズをたっぷりと載せたシーザーサラダ。後、肉に肉はいかがかと思いましたが、これもユショウ・ソイで味付けしたサーロインステーキになります」

執事長イベールや侍女達が、水を注いだり取り分けたりしている横で、莉奈は簡単に料理と、ユショウ・ソイこと醤油の説明をしていた。

シュゼル皇子がサラダを興味深く見ている横で、兄と弟は最後に出したサーロインステーキに釘付けであった。

「ステーキだ!!」

目の前に置かれたサーロインステーキに、エギエディルス皇子はテンション高めである。

食べやすい様に切ったおかげで、チラッと見える脂ののった肉の美しく美味しそうな断面が、思わず生唾を誘う。

いただきますと言うが早いか、エギエディルス皇子はからあげではなく、サーロインステーキを口に頬張っていた。

「柔らかっ!! なんだコレ。肉が溶けてく」

「ソースが旨いな。あの木の実……醤油とか言う果汁が肉を引き立てているのか」

エギエディルス皇子とフェリクス王は、サーロインステーキに舌鼓を打っていた。

気に入ってくれたのか、2人は味わいながらもフォークが次々と肉に伸びている。

「シーザーサラダのドレッシングがすごく美味しい。チーズがまた良いアクセントになって……野菜が美味しく頂けますね」

シュゼル皇子は、肉よりも先に気になっていたシーザーサラダを堪能している様だった。

「ん、ドレッシングにニンニクが入っているんですね。だから、食欲を唆るのかもしれません……あ!」

「あ?」

シュゼル皇子がドレッシングの分析をしながら口にしていると、何かハッとした様子で莉奈を見た。

莉奈は何か足りなかったかなと、首を傾げる間もなくシュゼル皇子が満面の笑みを向けてこう言った。

「ハチミツを下さい」

「……」

「ここにハチミツを足したら、ドレッシングがよりマイルドになるかと思うのーーった!!」

シュゼル皇子が最後まで言うまでもなく、小さなスプーンが彼の額に飛んで来た。

もちろん、弾き飛ばしたのはフェリクス王である。

確かに、シーザーサラダのドレッシングにハチミツはアリかナシでいったら、アリである。でも、なんでもかんでも甘い物をかけるのはヤメて欲しい。

「甘味甘味って、お前は蟻か?」

「…………プッ」

フェリクス王が呆れてそう言うものだから、莉奈は思わず吹き出してしまった。

フェリクス王が、そんな事を言うとは思わなかったのだ。

「リ〜ナ〜?」

シュゼル皇子が可愛らしく頬を膨らませ、わざとらしく莉奈に抗議してみせた。

「し、失礼いたしました」

笑いを押さえながら、莉奈は形ばかりの謝罪をした。

シュゼル皇子も本気で怒ってはいないみたいだし。

「あ」

「「「あ?」」」

莉奈が笑いながら、何かに気付いて思わず声を上げれば、フェリクス王兄弟が何だと視線を向けた。

食事中に言うのも何かな? と視線を泳がしてはみたものの誤魔化せる状況ではなく、苦笑いして莉奈は口にした。

「えっと? 蟻といえば、白蟻は"ゴキブリ"の仲間だったな……と」

「「「……」」」

途端にフェリクス王兄弟の表情が引き攣り、和やかだった雰囲気がどんよりとしたのは言うまでもなかった。

◇◇◇

「ふぅ、腹が苦しい」

エギエディルス皇子は、ニンニク醤油のからあげをパクパクと、驚くくらいに食べていたから苦しそうだ。

食べ過ぎたとお腹をさすっている。

「今日はニンニク尽くしでしたね」

シュゼル皇子に、食後のデザートのアイスクリームを出してあげると、嬉しそうに微笑みながらそう言った。

「あ、確かに」

言われてみればニンニク醤油のからあげ、サーロインステーキのソースにも、シーザーサラダにもニンニクは入っている。

ニンニク味尽くしだったなと、莉奈は言われて気付いた。

「エド、アイスは?」

「腹が苦しいからいらない」

侍女が淹れてくれた紅茶を飲んで一息吐いていた。

エギエディルス皇子はシュゼル皇子と違って、食後に是が非でも甘味を食べようとは思わない様である。

なんとなくフェリクス王をチラッと見れば、意味ありげにグラスをトントンと指で叩いて口端を上げた。

昼からお酒なんてあげませんよ? と莉奈はプイッと視線を逸らせれば、途端にクツクツと笑う声が聞こえたのだから、揶揄われたのだろう。

「しかし、あの木の実が調味料になるなんてな」

食事を終えたフェリクス王が、ワイングラスに入った水を飲みながら、侍女達の片付ける姿を見ていた。

下げる皿を見て、今口にした料理を思い出しているのだろう。

「なので! 残りの実も切って頂きたいのですが!!」

もう、この硬い木の実をどうにか出来るのはフェリクス王しかいないと、勝手に思い込んでいる莉奈は、多少ビクビクしながらもフェリクス王にお願いしてみた。

「別に構わねぇが、俺じゃなくても出来るだろうよ」

瞳をキラキラさせて自分に頼む莉奈に、フェリクス王は微苦笑しつつ弟2人をチラッと見た。

別に刀で斬らなくとも、魔法でどうにかなるのだ。ならば、弟達でも……いや、風魔法を使える者で構わないのだ。なのに、わざわざ自分を選ぶのだから、笑うしかない。

その言葉と視線に、莉奈はハッと気付いて末皇子を見て頭を下げた。

「エド様。お願いしてもよろしいでしょうか?」

「うっわ。気持ち悪ぃ」

普段しない莉奈のその態度に、気持ち悪くなったエギエディルス皇子は、心底嫌そうな表情をしていた。

友人か家族の様な莉奈に、今更そんな言動をされてもむず痒く、気分が悪くなるだけだった。