作品タイトル不明
380 コロコロ、うにうに、ピョンピョン
莉奈はソファからズリズリと落ちていく様な気分だった。
そろばんの話はどうしたんだろう?
仔イヌが2匹こちらを見て、瞳をキラキラさせている。
期待には添いたいけど、材料もないしそんな気分ではない。莉奈は相変わらず、しょうもない愚策に出た。
「え〜と、串……串団子とは……」
「「串団子とは?」」
「ダンゴ虫を串に刺して焼いた食べ物?」
「気持ち悪っ!!」
莉奈の苦しい言い訳を聞いたエギエディルス皇子が、ものスゴい表情をして身震いしていた。
自分で言っておいてなんだけど、最悪な誤魔化し方だ。どうして上手く誤魔化せないのだろうか。
「エディ、お前ミミズが好きだったろ? ダンゴ虫も食えて良かったじゃねぇか」
「俺がいつミミズ好きになったんだよ!!」
莉奈の誤魔化し方に呆れ笑いをしていたフェリクス王が、エギエディルス皇子を揶揄えば、頬を膨らませ抗議していた。
莉奈が王竜の咆哮でクラクラしていた時に、適当に言った事をフェリクス王は覚えていた様だ。
「エディ、ミミズを食べるのですか?」
「食べるかーーっ!!」
コテンと首を傾げたシュゼル皇子にも揶揄われ、エギエディルス皇子はさらに膨れっ面になっていた。
「アハハ」
この兄弟、仲が良くて面白いよね。
莉奈は王族達のやり取りに、思わず笑いが漏れていた。
ーーきゅるるる〜。
そんな兄弟団欒の中、奇妙な音が響いた。
莉奈のお腹の鳴った音である。そう言えば、碧空の君達にお礼を渡そうとしてたので、朝食を食べていない事を思い出した。
だけど、なんで鳴るかな? 恥ずかしいとお腹を慌てて押さえたものの、止まる訳もなく何の意味はなかった。
「リナ、お前ダンゴ虫食いたいのかよ?」
揶揄われた仕返しとばかりに、エギエディルス皇子が馬鹿にした様に笑っていた。
「食べな……ぁ」
ないよ……と言いかけて、莉奈は嫌な食べ物を思い出してしまった。
「なんですか?」
シュゼル皇子は、莉奈が何かを思い出したか思いついたのかと、ワクワクして訊いた。
知らない甘味がまだあるのかと。
ーーのだが、シュゼル皇子はすぐに後悔した。
「虫で思い出したんですけど、私のいた世界ではチーズに湧く"蛆"を一緒に食べる国があったな……と」
うろ覚えだが、羊の乳で作ったチーズに蛆虫を湧かせて食べる国があったハズ。夕飯時に家族とバラエティ番組の罰ゲームか何かで見て、気持ち悪いと話した覚えがある。
ピョンピョン跳ねる白い蛆虫ごと、チーズを食すとかなんとか。
その蛆は食用なのかな? と改めて考えゾッとした。
蛆が食用だったとしても、食べたくない。
「はあぁぁ!?」
途端にエギエディルス皇子が、身震いして叫び声を上げていた。
きっと想像したに違いない。
シュゼル皇子は絶句し固まっていた。
「気持ち悪ぃ」
フェリクス王は渋面になり、口を手で押さえていた。
珍しく執事長イベールも、顔を顰めている。
皆が皆、グネグネと動き回る蛆虫の湧くチーズを想像したのだろう。
「あ」
「今度はなんだよ!?」
エギエディルス皇子がピクリと反射的に身体を動かした。
莉奈がまた、何かを思い出した様な声を出したからだ。
「"ダニ"を外皮に付けたチーズもあった気がする」
「うぇぇ〜っ。気持ち悪ぃ事を言うんじゃねぇ!! チーズが食えなくなるだろ!?」
エギエディルス皇子は再びブルッと、身震いしていた。
チーズを見るたびに思い出すからヤメロと。
「この世界にはないの?」
「俺は聞いた事がない!!」
「私も知りません」
「知らねぇし、知りたくもねぇ」
莉奈が訊いてみればエギエディルス皇子、シュゼル皇子、フェリクス王が嫌な顔をして教えてくれた。
執事長イベールに関しては、顔を顰め口を押さえている。
冷静な彼をも唸らせる食べ物の様だ。
「赤ワインに良く合うらしいですよ?」
美味しいかはともかく、蛆虫チーズをパンに載せ、赤ワインと一緒に味わうのが通だとかって聞いた覚えがある。
独特の風味と、舌にピリッと軽い刺激がくるとか。
お酒好きなフェリクス王に、酒の肴にいかがですか? と訊いてみた。
「赤ワインまで不味くなるだろうが」
ますます渋面になるフェリクス王なのであった。