軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

370 シュゼル皇子は平常運転

あっという間に夕食の時間になり、莉奈は執事長イベールと一緒に、王達の食堂に来たのだ。

そこで、まずはと出したのが、小さなおむすびと玄米茶である。

「コレは?」

「陛下に頂いたお米を炊いたのが、それになります」

「ブタのーー」

軽く説明した途端に、エギエディルス皇子がそう口に出したので、莉奈は軽く睨んでおいた。

「あのお米が……って、少ないですね?」

おむすびを見たシュゼル皇子が、小さく笑っていた。

そうなのだ。莉奈が試食として出したおむすびは、一口分しかなかったのである。

「本日の夕食はピザですからね。ご飯でお腹を満たしてもと、味見程度のご用意とさせて頂きました」

エギエディルス皇子なんか、おむすびを2個くらい食べたら、お腹が一杯になっちゃうかもしれない。

せっかくのピザが、台無しだからね。

「にしても、一口」

フェリクス王は小さく笑うと、ためらいもなくそのおむすびにフォークをブッ刺し、口に放り込んだ。

「……甘い」

フェリクス王の甘味センサーが反応した。

「そんなに甘いですか?」

確かに甘さは感じるとは思うけど、お菓子とは違う甘さだ。

だが、フェリクス王には違うのかなと、莉奈は思ったのだ。

「噛めば噛む程にな。だが、嫌いな甘さじゃねぇよ」

莉奈の言っている甘いの意味が分かっているのか、シュゼル皇子の好きな甘味とは違うと言っていた。

「周りの塩が、お米の甘さを引き立てているのですね。ん、玄米茶も香ばしくて優しい味がします」

シュゼル皇子も一口で食べると、玄米茶を堪能していた。

「このお茶も米なのか?」

エギエディルス皇子が、驚いた様子で訊いてきた。

あのお米からおむすびにお茶と、まったく違う食べ物に変わるとは想像も出来なかったのだ。

「うん、そう。それは玄米茶って言うんだよ。作り方は色々あるけど、それは玄米を炒って作ったの。私の国では、この玄米茶に緑茶って言う緑色の茶葉を足して、紅茶みたいにティーポットに淹れて飲んだりする」

緑茶を粉末にした抹茶を足した物もある。

ほうじ茶も美味しいけど、玄米茶も香ばしくて好きな味だ。

「緑茶」

どんな味なんだろうと想像しながら、エギエディルス皇子は玄米茶を飲んでいた。

自分の知っている紅茶とは、どう違うのだろうかと。

「紅茶と同じ"茶の樹" から作るから、緑茶は作れる可能性は高いと思うよ?」

「え?」

「緑茶は紅茶と同じ茶葉から、出来るんだよ」

エギエディルス皇子が、ビックリした様に見て来たから、莉奈は笑っていた。彼は驚いた顔も可愛い。

「紅茶と同じ茶葉ですか?」

シュゼル皇子は、それを聞いて興味が出たらしい。

「はい。同じ茶葉でも、その発酵具合で変わるんです」

人やテレビからの知識程度しかないけど、莉奈は簡単に説明した。

「紅茶は完全発酵の茶葉で、緑茶は正反対の不発酵茶葉。ちなみに、半発酵にすると烏龍茶って言うお茶になります」

確か、そんな感じにザックリと分かれたハズ。

細かく言うと白茶とか黄茶、黒茶とかにも分かれた気がするが、そこまでは分からない。

「同じ茶葉で、そこまで変化するんですか。茶葉は奥が深いんですね」

シュゼル皇子は、玄米茶を飲みながら興味深そうに頷いていた。

よし、ココは一つ緑茶欲しさに口を滑らせておこう。

「緑茶を粉末にさせたのを抹茶と言って、アイスーー」

「アイスクリームに加えると、苦味がアクセントのフレーバーになるんですね!?」

うん?

軽く言っただけで、何故そこまで味が分かるのかな。

自分で言っておいてなんだけど、シュゼル皇子が怖い。

「そうだ、紅茶!! ダージルン系の苦めの紅茶をアイスクリームにして、練乳をかけると美味しいと思うのです。リナ、紅茶のアイスーー」

ーーカン!

「いたっ!」

キラッキラとし始めたシュゼル皇子の額に、どことは言わず小さなスプーンが飛んで来た。

テーブルに用意されていたカトラリーから、フェリクス王が小さなスプーンを一つ取り、指で弾いたみたいである。

「甘い氷菓子に甘い練乳をかけるとか、馬鹿じゃねぇの?」

「失礼な。アイスクリームのカクテルですよ」

「あ゛ぁ?」

「お酒とお酒、お酒とジュースを混ぜるのがカクテルと言うのなら、アイスクリームと甘味のソースを混ぜるのは、アイスのカクテルです」

「……」

「……シュゼ兄、何を言ってんだよ?」

その強引な理屈に、フェリクス王は唖然となり、エギエディルス皇子は呆れていた。莉奈は絶句だったけど。

ものスゴいこじつけで、ものスゴい屁理屈である。

ちなみに、ダージルンとはアチラの世界でいうダージリンの事だ。

「ですよね? リナ」

シュゼル皇子が満面の笑みで同意を求めてきたので、莉奈は引き攣った笑顔でこう返した。

「……違います」

「あれぇ?」

シュゼル皇子は、莉奈が同意してくれなかったと、首を傾げていた。

莉奈も思わず頷きそうだったけど、全然違うからね? 否定しておかないとカクテルの定義が破壊されちゃう。

何、アイスクリームのカクテルって。

カクテル界が大混乱する案件だよ。