軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

329 歓喜の舞

「お待たせ致しました」

莉奈は出来上がった料理を持って、食堂に向かった。

師匠バーツは、先程渡したビアスピリッツァーは飲み終わったのか、持っていた 魔法鞄(マジックバッグ) から自前のお酒を取り出してグビグビと飲んでいた。

顔が赤いし、完全に出来上がっている。

「待たされたぞ、小童」

「からあげだけで、良くそんなに飲めますね?」

酒の肴は、からあげだけしか出していなかったのに、カラ瓶が何個かテーブルに転がっている。

莉奈は良く飲むなと呆れていた。

「酒なんぞ、水だ」

「水だとしても、飲み過ぎでしょう」

こんな短時間で何L飲むのかな? この人。

何をそんなに飲んでいるのだろうと、少し興味が湧いた莉奈は、テーブルにある見た事のない酒瓶を手にした。

中身はまだ残ってはいるが、瓶の色が無色透明ではないので、中の液体の色は良く分からない。

これは角形の四角い酒瓶だけど、ワインは基本的に四角い酒瓶に入っていないし、なんだろうと気になる。

だから、なんのお酒かなと、軽い気持ちで【鑑定】を掛けて視た。

【ホーニン酒】

"米" と "米麹"、"水" を原料にした醸造酒。

ーーえ?

【ホーニン酒】

"米" と "米麹"、水を原料にした醸造酒。

「…………っ!!」

莉奈は目を見張った。

見間違いかもと、目を擦り何度も何度も視た。

【ホーニン酒】

"米" と米麹、水を原料にした醸造酒。

米。

こめ。

コメ。

ーーお米、キターーーーッ!!!!

莉奈は酒瓶を持って、1人で小躍りしていた。

ずっとお米に飢えていたのだが、 強請(ねだ) るのは気が引けていたし、ないと勝手に諦めていたのだ。

なのに、ココにきて米の存在を確実なモノとした。

莉奈は気持ちが抑えられなくて、身体が勝手に動いていたのだ。

お米がある。米から造った酒がある。

なら、お酒の一種の本みりんは絶対にある。

そして、醤油や味噌もある可能性が出てきた。

莉奈は歓喜に湧きまくっていた。

「お前、何踊ってんだよ? 隠れて酒でも飲んだのか?」

そんな莉奈を不審な目でエギエディルス皇子が見ていた。

不気味がっているといってもイイ。

「エド〜ッ!! 酒だよ。酒!!」

「んな事は分か……って、だ、抱きつくんじゃねぇ!!」

莉奈は、感極まってエギエディルス皇子に抱きついていた。

エギエディルス皇子は顔を真っ赤にさせて、わたわたとしている。まさか、莉奈に抱きつかれるとは思わなかったのだ。

「だって、酒! 米! 米ーーっ!!」

暴れるエギエディルス皇子を無視して、莉奈はさらに強く抱きついていた。

◇◇◇

しばらくして、やっと解放されたエギエディルス皇子はぜぇぜぇとテーブルに突っ伏していた。

どうやら強く抱き締め過ぎて、首を絞めていたらしい。

「バーツさん!! 米!! 米はどこにあるんですか!?」

そんな事も今の莉奈は気にならない。なので、お酒を持って来たと思われる師匠バーツに詰め寄った。

だって、米から造った酒を持っているのだから、米を知っているに違いない。

「はぁ!?」

「米、こめ、コメだよ!! バーツの旦那!!」

久々のお米、ご飯にありつけると興奮した莉奈は、師匠バーツの襟首を掴んで揺さぶっていた。

「お、おい、コラ、揺らすな!! バカ女!!」

「米、米はどこ!?」

「バカ女! ヤメんか!!」

バーツは悶絶である。

お酒でホロ酔いなところに、莉奈の揺さぶりだ。悪酔いしてきて目が回り、胃や胸がムカムカしてきていた。

莉奈の馬鹿力になすがままであった。

ーー数分後。

アーシェスによって解放されたバーツは、悪酔いして死んだ様になっていた。

「このお酒がどうかしましたか?」

莉奈のオカシな挙動など今更だと、シュゼル皇子は気にもしない。

莉奈が小躍りする前に見ていた酒瓶を手に取り、一体何に歓喜したのか同じ様に【鑑定】して視ている様だった。

「米から造ったお酒ですか」

「そうなんですよ。米、お米が食べたい。どこにあるんですか?」

やっと冷静に戻った莉奈は、今度はシュゼル皇子に訊いた。

物流に詳しいシュゼル皇子なら、この国の何処にあるのか知っているに違いない。

「残念ながら、この国にはありませんね」

シュゼル皇子が申し訳なさそうに言うと、莉奈はガックリと床に膝を突いて倒れた。

天国から地獄に落ちた気分だった。

「あの、リナ?」

莉奈は誰の目にも分かるくらい落ち込んでいる。

少しだけ心配になったシュゼル皇子は、大丈夫なのかと声を掛けてみた……のだが、すぐに復活した。

「だが、しかし!! この世界のどこかにはある!!」

莉奈は立ち直り、スクッと立ち上がった。

シュゼル皇子は、喜怒哀楽の激しい莉奈を見てほのほのしていた。

面白い子だなと。自分の目の前で、こんなに表情をコロコロと変える人はそうはいない。

あっても、精々顔面蒼白になるくらいだ。

見ていて飽きないなと、思うシュゼル皇子なのであった。