作品タイトル不明
305 瞳がどうなるの?
「「「シュゼル世界最強伝説」」」
莉奈の無邪気な言葉に、皆複雑そうな表情をして呟いていた。
莉奈は一体何を想像しているのだろうか?
「あの……リナ?」
「 技能(スキル) なんて、 模写(コピー) 出来るんですね!!」
「えぇ、まぁ」
「ドンドン 模写(コピー) しちゃって下さい!!」
「……」
シュゼル皇子が苦笑いして訊いてみれば、耳を疑う返事が元気良く返ってきた。
ドンドン模写して……。
そんな返答にますます困惑するシュゼル皇子達。
「お前……嫌じゃねぇのかよ?」
エギエディルス皇子が呆気の表情で訊いていた。
自分だったら、貴重な能力を 模写(コピー) されるなんて気分が悪い。絶対にイヤだ。
「え? 全然? だってただの 模写(コピー) でしょ? 取られてなくなる訳じゃないし、体重を視られる方がウン千倍ヤダよ」
ラナ女官長にスリーサイズを視られていた方が、どれだけ衝撃だった事か。
今は、勝手に視ないでと念を押してあるけども!!
「……体重」
エギエディルス皇子はもう何も言い返せなかった。
何故そんなモノと莉奈は比べるのだ。比べるレベルが違う。むしろ体重なんかどうでもイイと、エギエディルス皇子は思った。
「ちなみに 模写(コピー) する時ってドコか痛くなったりしますか?」
莉奈は、シュゼル皇子に疑問を投げかける。
模写自体に抵抗感はまったくないが、痛かったりするのはご免である。
「何も感じたりはしないと思いますよ」
シュゼル皇子はそんな簡単に快諾した莉奈に、ある意味感服しながら答えた。
自分はされる側ではないから、する側の意見でしかないが、過去にそんな事例はない。なんなら、バレずにこっそり 模写(コピー) 出来たりもする。
だが正直、絶対に断られると思っていたシュゼル皇子は、内心驚いていたのだった。
「痛くないなら、イイですよ」
「ですが、私の 瞳(め) の変化に気分を害さなければ良いのですが」
改めて承諾してくれた莉奈に、シュゼル皇子は自身の変化に怯えて欲しくないと断りを入れた。
「え? 瞳(め) が変化するのですか?」
「えぇ、少し」
「白目になるとか……グルングルン回るとかですか?」
それだと怖いなと莉奈は眉を寄せた。
だって、こんな美形のシュゼル皇子が白目とか、ホラー映画の様な目はイヤ過ぎる。
「白目」
「グルングルン」
シュゼル皇子は笑顔のまま固まり。エギエディルス皇子が、心底気持ち悪そうな表情をしていた。
兄の目玉がグルグル回るのを、想像したのかもしれない。
少し離れて聞いていたゲオルグ師団長とタール長官も、苦笑いしていた。
「残念ながら白目にもなりませんし、目も回りませんよ。ただ、瞳の色とかが変わる様ですね」
莉奈の想像力はある意味恐ろしいと、シュゼル皇子は笑う。
そして自身の変化は見た事がないので、見た者の話を伝える。
「なんだ、色が変わるだけ。最悪、第3の目が額から出てくるのかと思ってました」
莉奈があっけらかんとスゴイ事を言った。
それを聞いた皆は、複雑な表情のまま一瞬固まっていた。想像力が逞し過ぎる。
「「第3の目」」
ゲオルグ師団長とタール長官は、珍しく顔を見合わせて苦笑いする。
「そんな気持ちの悪い 技能(スキル) なんかいらねぇ」
例え 模写(コピー) 能力があったとしても、そんな気持ちの悪い姿になるならいらないと、エギエディルス皇子は呟くのであった。
「本当に良いのですね?」
「どうぞ?」
改めてもう一度確認してくるシュゼル皇子に、莉奈は快諾した。
「そんな無邪気に言われると、なんだか悪い事をしている気分になりますね」
シュゼル皇子はそう言いながら、莉奈にゆっくりと近付いて来た。
怖いより、間近にシュゼル皇子がいてドキドキする莉奈。顔が紅くなっていなければイイなと思う。
そして、右手で莉奈の頬をそっと包み込んだ瞬間ーー
「触れる必要なんかねぇだろ!?」
そんな呆れた様なツッコミと共に、兄シュゼル皇子の傍からエギエディルス皇子が、ドスンと体当たりしていた。
渾身の体当たりにシュゼル皇子はフラリと横に飛ばされた。
「何をするのですか? エディ」
まさか、弟に体当たりされると思わなかったシュゼル皇子。少し驚いた様にしていた。
「それはコッチのセリフだし。 模写(コピー) するのにリナに触る必要なんかねぇだろ」
「まぁ、そうですけど」
「けど何だよ?」
「なんだか可愛らしくて」
「はあァァっ!?」
あんな発想する女のどこが可愛いんだ? とエギエディルス皇子は驚愕していた。
これからする事を話しても、莉奈は怖がるどころか楽しそうに笑う素振りまで見せた。
シュゼル皇子は、そんな風にしてくれた彼女がなんだか可愛く見えていたのだ。だから、つい無意識に頬に触れていたのだった。