作品タイトル不明
301 じゅんちょう順調!!
莉奈の朝は、いつもより早かった。
日課のジョギングを今朝はヤメて、朝の身支度をしていた。
エギエディルス皇子のために、今日は腕によりをかけて食事を作る予定だったからだ。
とりあえず、食料庫や厨房に何があるか大体把握してあるから、何となくメニューは考えてある。後は下準備をするだけだ。
「あら、おはようリナ。どこに行くの?」
部屋から出ると、廊下でラナ女官長達に会った。
朝食前に部屋の掃除に来てくれていたらしい。
「んっと、厨房」
「え? 朝から何か作るの?」
厨房というのだから朝から何か作るのだろう。莉奈が、こんな早朝から何かを作るのは珍しい。
ラナ女官長は少しだけ驚いていた。
「エドがこの間、番を迎えたじゃない? だから、何かご馳走でも作ってあげようかなって」
「あら! イイじゃない! 殿下もリナにお祝いされたら喜ぶと思うわ」
ラナ女官長はそう言って、嬉しそうに笑ってくれた。
ラナ女官長もこの間、エギエディルス皇子を置いて莉奈が王都リヨンに行ってしまった時、彼がショックを受けていたのを今だに思い出す。
そんな莉奈が、彼だけのために祝ってくれれば、その事を払拭するくらい喜ぶに違いない。
「ところで何を作るの?」
「内緒」
莉奈は口に人差し指をあて、思わせ振りに笑った。
言っても分からないと思うけど、出来るまでは内緒にしたかったのだ。
「エギエディルス殿下がいらっしゃるまでには戻って来なさいよ〜」
「わかった〜」
◇◇◇
朝から昼に掛けて、厨房は今1番忙しい。
パンを捏ねたり焼いたり、サラダやスープを作ったり。昼の仕込みをしたり、本来なら素人が入ってイイ領域ではない。
「何してんだ? リナ」
身を屈めてコソッと材料を頂こうとしていた莉奈は、あえなくマテウス副料理長に見つかった。
忙しく動いているから、ひっそりコッソリしていれば見つからないかなと思ったけど、そう上手くはいかないらしい。
「気にしないで下さい」
「気にする」
「気にならない訳がない」
「朝から何を作るんだよ?」
見て見ぬフリをして欲しいと思ったのだけど、無理の様だ。
まぁ、イイや。放っておこう。
「無視すんなよ」
答えないで作業に取り掛かろうとしていたら、ツッコミを入れられた。
「エドが番を迎えたお祝いに、何かご馳走を作ろうと思う」
「あっ! それはイイ!!」
「手伝いがいるなら言ってくれ」
莉奈が作る理由を言えば、皆賛同してくれた。
エギエディルス皇子、愛されているね。
「さて、まずはサラダを作りたいんだけど、海老を茹でて貰える?」
冷蔵庫にあった海老を、バットごとドスンと作業台に置いた莉奈。
エギエディルス皇子、海老フライの時に幸せそうに食べていたからね。相当な海老好きだと思う。
「サラダに海老?」
サラダ=野菜か鶏肉。
今までがそうだったから、海のモノは不思議みたいだ。
「マヨネーズと海老、最強だよ」
「「「確かに!!」」」
海老フライとタルタルソースの組み合わせを思い出したのか、皆の喉がゴクリと動いた。
「キュウリは一口大、トマトは飾り付け用として8等分に切ってくれるかな?」
「あいよ!」
忙しい朝なのに、元気な料理人達だ。
一緒にいると時間を忘れるくらい楽しい。
まっ、たまにウザい事もあるけど。
「で、アボカドがあったから、それも種と皮を取って一口大に切っておく」
莉奈は切って貰ったキュウリと、今切ったアボカドを大きなボウルにドッサリ入れた。
「茹でた海老も粗熱を取ったらここに入れる……でマヨネーズを大量投入して、塩胡椒して混ぜれば海老アボカドのサラダの完成」
海老を茹でたり殻を剥いたり、マヨネーズを作る作業は大変だけど、今はマヨネーズは常備してくれているから、簡単に出来るサラダである。
「なるほど、海老とアボカドか」
「マヨネーズとアボカドは旨いよな〜」
「俺、マヨネーズは万能調味料だと思う」
「パンに付けて焼くのも美味しいよね」
「じゃがいもに付けるの最高!」
出来上がった海老アボカドサラダを、味見用に小皿に盛りながら皆は楽しそうにしていた。
マヨネーズを知ってから、色々と試している様である。
「フフッ。マヨネーズのおかげか、皆のお腹もだいぶ大きく育ってきたよね?」
莉奈は実に愉しそうに笑った。
リック料理長は立派なお腹になってきたし、料理人達も少しずつお腹周りのサイズが、イイ具合になってきた。ヨシヨシ。皆さん順調に育ってきたね!!
フフッ。
もっともっと、大きくな〜れ!!
莉奈は愉しそうに口元を上げていたのであった。