軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

289 ふてくされるのは皆同じ

しばらくすると、近衛師団兵が数名来て、大きな荷物を 魔法鞄(マジックバッグ) から次々と出していた。

運ぶのが大変だからと、 魔法鞄(マジックバッグ) を借りてきた様だ。

10個近くの袋や木箱を、竜の部屋の近くに下ろしている。

開けて見たら、中にはレースのカーテンや紫色の生地、必要なさそうな小物がたくさん入っていた。

竜は基本的に、自身の身体の色と同じ色を好むから、ゲオルグ師団長もたくさん用意していたのだろう。

「おわっ!」

作業をしていた近衛師団兵の驚く声がした。

ふと奇妙な視線に気が付いて見れば、作業している宿舎の周りには、興味津々の竜達が顔を覗かせていたのだ。

ニュッと首を伸ばしてアチラコチラの宿舎の影から竜の顔が見えれば、見慣れている近衛師団兵の人達もそれは驚くだろう。

「竜喰らいが、また何かし始めたぞ」

「何をしているんだ?」

「ゴミ部屋の掃除か?」

竜達はボソボソとだが、わざと聞こえる様に話している。

彼等には 念話(テレパシー) なるモノが使えるのだから、声に出さなくてもイイハズなのに、人間にも分かる様にわざと声を出しているのだ。

莉奈は野次馬ならぬ、野次竜に呆れていた。

「リナ、あなたはナゼ、ゴミ部屋の掃除なんかをしているのですか?」

そこには莉奈の番、空色の竜も混じっていた。

「ゴミ……改装だよ」

「 "からあげ" の部屋をですか?」

「……から……あげ」

可哀想に……ゲオルグ師団長のせいで、この部屋の子 "からあげ" なんて呼ばれてますけど?

「からあげとか言うのヤメてあげて」

仲間にまでからかわれたらこの子、2度と帰って来ないかもしれない。可哀想過ぎる。

「からあげでも、焼き鳥でも構いませんが、ナゼあなたが改装を」

「ゲオルグ師団長に頼まれたから」

「……」

莉奈がそう言うと空色の竜は、何故か不満そうな 表情(かお) をした。

「なんか、不満そうだね?」

「あなたは私の番。他の番にかまける意味が分かりません」

空色の竜は、フンと不機嫌そうに鼻を鳴らした。

良く分からないけど、自分以外の竜の相手をするな? みたいな事なのだろうか。いわゆる嫉妬?

「まぁ、そうなんだけど。頼まれたし」

「頼まれたら何でもやると?」

「そういう訳じゃないけど」

「……私の呼び名も決めてないのに、他人の番の掃除や改装など」

空色の竜はブツブツ文句を言って、完全に拗ねていた。

竜もソッポを向くなんて事もあるのか、と莉奈は困った様に笑っていた。

子供みたいな事を言う番が、面白いやら可愛いやら複雑である。

「呼び名はちゃんと考えているし、後で特盛りのご飯を用意するからガマンして」

苦笑いしながら莉奈がそう言えば、空色の竜はムッスリとこう言い残して去って行った。

「美味しくなかったら、暴れる」

ーー暴れるなよ。

それには、この場にいた近衛師団兵達も同様に苦笑していたのであった。

◇◇◇

「これでイイでしょう!!」

作業する事3時間ちょっと、ゲオルグ師団長の番の部屋のリノベーションが終わった。

部屋のベースは、紫色の光沢のある布地をふんだんに使って飾り付けた。莉奈の番の部屋は竜に評判がイイから、少しだけ似せた。

天蓋みたいな派手な感じが好みらしいから、レースのカーテンを天蓋風にした。紫色の布地も軽く重ねてふんわりと垂らしまとめてある。

少しだけ余った布地をリボンにして、アクセント程度にカーテンや壁に取り付けた。

もちろん天窓も作ったし、餌、ご飯置き場も食べやすい位置に設置したよ。

竜はキラキラした物が好きらしいって聞いたけど、さすがにそれは持っていないので、欲しければ竜自身がゲオルグ師団長にでもねだるでしょう。

まぁ、竜がねだるのはちょっとした恐喝、 強請(ゆす) りともいうのかもしれない。

「何か、コレみたら俺の番もやり直せって言いそう」

「右に同じ」

「俺の番、あそこで何か言いたげに見てるし、もう最悪だ」

竜騎士も兼任している近衛師団兵達からは、渇いた笑いが漏れていた。