軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

213 チキンカツサンドとタルタルソース

「んっ。このクリームを付けると、じゃがいもが美味しい!!」

タール長官は、マヨネーズをじゃがいもに付け、口にした途端に目を瞬いた。

酸味のあるこのクリームは、生クリームとも違うまったりとした舌触りで、ものスゴくじゃがいもに良く合っていたのだ。

「じゃがいもなんか嫌いでしたけど……これなら、もっと食べたい」

タール長官はニコニコと笑い、気に入った様子だった。

タールさんがじゃがいも嫌いだった事に、少し驚いたけど……。

「酸味がしつこくなくて、美味しいですね」

「お酢は好きじゃないけど、これはイイ!!」

「じゃがいもがスゴく美味しい」

「だよな。じゃがいもなんか、モソモソして好きじゃなかったけどイイね」

「なんか。他の物につけてみたい」

魔導師5人にも好評の様だった。

お皿に残ったマヨネーズまで、キレイにじゃがいもに付けて食べていた。

「あっ。たぶん、夕食に同じのが出ますけど、チキンカツサンドセット作って来たんで食べますか?」

「「「 "チキンカツサンドセット" ?」」」

皆が一斉に小首を傾げると、なんだか可愛いと莉奈は笑った。

「これです」と莉奈は 魔法鞄(マジックバッグ) から、チキンカツサンドセットのトレイを1つ出した。

飲み物はエギエディルス皇子と同じ、リンゴジュースが付いている。他の飲み物がイイというのなら、他にもあるけど。

「その紙の中に、チキンカツサンドが入ってるんだぜ?」

作った本人でもないのに、エギエディルス皇子がふふんと自慢気に鼻を鳴らしてみせた。

先に知っているのが、少し優越感を感じるみたいだ。

「開けても?」

「タールさんのですから、どうぞどうぞ」

お伺いを立ててきたので、莉奈は手を添えて強めに勧めた。

タール長官はまず、輪っかに揚がったキツネ色の物体に、ピクリと口が微妙に動く。少し大きめのグラスには、想像だがリンゴのジュースなのだろう。そして……包み紙。

「……っ!」

ゆっくりと包み紙を開けた途端に、タール長官の表情が綻んだ。

見るからに柔らかそうなフカフカのパン。それに挟まる緑の野菜達。そして、見た事のないキツネ色の衣を纏った何か。

チキンカツと言うのだから "鶏肉" なのだろう。

周りに何が付いているか……なんてどうでもイイから、カブリつきたい。

―――ゴクン。

タール長官を囲む様に見ていた、魔導師達が生唾を飲み込んでいた。

「お好みで添えてある、タルタルソースを付けて食べて下さいね?」

マヨネーズが苦手でも食べれる様に、パンには入ってはないのだ。後乗せ。好きなだけ乗せればイイ。

「タルタルソース」

「マヨネーズにピクルスとか、玉ねぎを混ぜたソースです」

口を綻ばせたタール長官に、莉奈は再び笑みが溢れた。マヨネーズが気に入ったみたいだから、興味津々なのだろう。

「エドはお兄ちゃんと食べるんでしょ?」

エギエディルス皇子が誘惑に負けて、いそいそと自分のを 魔法鞄(マジックバッグ) から取り出そうと手を掛けたので、莉奈はくすりと笑った。

小腹が空いていて目の前で食べられれば、食べたくなるよね?

「うっ……」

手を離した皇子は、待てをくらった仔犬みたいに、シュンとしてしまった。

……ヤバイ。マジで可愛い過ぎる!!

莉奈は目尻が垂れに垂れていた。何この超可愛い~皇子!!

「エド。ククベリーのアイスクリームあげるから、チキンカツサンドは後でお兄ちゃんと食べなよ」

「やった!!」

今食べたら唯一の家族団らんが無くなるしね。でも何か食べたそうだから、作り置きのアイスクリームを出してあげたら、キラッキラと瞳が輝いた。

ヤバ~イ!! 萌え死にしそう。

莉奈は鼻血が出そうで、鼻や口元を慌てて手で押さえていた。

乙女ゲームにハマる同級生の気持ちが、異世界で分かるとか……リアルヤバイ!!

◇◇◇

「んんんっ!!」

タール長官が、チキンサンドを口にした瞬間、驚きと歓喜の混じる声が漏れた。

「いつものパンと違う!」

まずは、口にした周りのパンの柔らかさに驚いていた。

石のパンから、バゲットもどきのパンが主流になってはいる。だが、さらに柔らかいパンを口にして驚きしかなかったのだ。

あれだけでも衝撃だったのに、さらに上回る柔らかいパンがあるとは。

「砂糖をさらに加えると、柔らかくなるんですよ」

「砂糖……んっ……チキンカツ……はぁ~、ロックバードが美味しい」

莉奈の話を聞きながらチキンカツも頬張れば、さらに歓喜の声が漏れる。あの魔物の肉の美味しさ。それを柔らかいパンと、サクサクのチキンカツが引き立てまとめるタルタルソース。

「これが、チキン……カツサンド」

タール長官は皆が見ているのも忘れ、気付けば無我夢中でペロリと平らげていたのであった。