軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205 呪いのペンダント

「高そうだけど……貸してくれるの?」

莉奈はペンダントをマジマジ見ながら訊いた。

国の紋章まで入ってるし、さすがに高価な物だと分かる。

「やるってよ」

とエギエディルス皇子は小さく笑った。

莉奈が "貸してくれるの" なんて遠慮がちに言ったからだ。ありがとうと貰ってもおかしくはない。妙な所で配慮を見せる莉奈に、なんとも言えなかった。

「……え? マジで!?」

莉奈は素直に驚いた。

高価な物を……というのもあるが、見ていて綺麗だし面白い。正直嬉しいが、コレをくれる様な事をした覚えはない。

「……ん? やるってよ?」

驚きつつペンダントを2度見し、エギエディルス皇子の言葉に疑問を覚えた。

"やる" ではなく "やるってよ" と彼は言った。……と言う事は、誰かにあげてヨシと言われて持って来たのだろう。

「フェル兄が持ってろって」

「……」

そういう事ですよね~? シュゼル皇子は今、王宮にはいないし。

それを訊いた瞬間、莉奈は喜びが複雑な物に変わった。何かあるに違いないと悟ったからだ。

こんな高価なペンダントをタダで寄越す訳がない。突き返せないのかな?

「お前……微妙な顔すんなよ」

エギエディルス皇子は心底呆れていた。

フェリクス王からと聞き、あからさまに顔を渋らせたからだ。

兄王から物を貰って、そんな表情をする女性を初めて見たのだ。怖いと恐れられてはいるが、王でありあの美貌だ。女性は放ってはおかないのも事実。

その兄王から物を貰える、下賜されるのだ。女性なら悶絶モノだし、男性なら畏れ多くて歓喜に震えてもおかしくはない。

なのに……この目の前の少女。あからさまにテンションがダダ下がりしている。色んな意味でオカシイ。

「返却出来るのかな?」

「返却すんなや」

ションボリして見せた莉奈に、エギエディルス皇子は苦笑いしか出ない。

兄王からのプレゼントにここまで、ガックリするのはお前くらいなモノだぞ?

「フェル兄からってのはともかく、番を持っちまったんだから持っとけ」

手にも取ろうとしない莉奈に、苦笑いしながら押し付けた。

「帰って来ませんけど?」

あなたのお兄さんのせいで? と含ませる。

「ぶっ……帰って……来るんじゃねぇの?」

エギエディルス皇子は思わず噴き出していた。あんな状況初めて見たので、面白くて仕方がない。

「マジ適当」

兄王とイイ、この弟とイイ、他人事だと思って適当過ぎる。

莉奈は諦めてペンダントを手に取った。なんかやだな~。

そんな2人のやり取りを聞いていた、リック料理長とマテウス副料理長は色々な意味で驚愕していた。

フェリクス王から何かを下賜されたのにも驚愕だが、"番" ?

番って……竜の事? だとしたら、莉奈は竜騎士になったのか?

バターを届けに行って、何故そんな事になっているのか。まったく話が分からない。

ただ分かる事としたら、莉奈はアッチでもコッチでも何かをやらかした……という事だけだった。

「で、これはなんなの?」

ペンダントを手に持ちプラプラさせていた。ただのアクセサリーでない事は分かった。だけど、何かまでは分からない。

王からでなければ、純粋に綺麗で嬉しいのだけど。

「 瞬間移動(テレポート) が出来る魔導具」

「どうやって使うの!?」

瞬間移動(テレポート) が使えると聞いた途端に、前のめりに食いついた莉奈。

【門の紋章】がなくても、許可さえ下りれば転移の間から使えると聞いた事はあるが、転送・転移をするのに【魔導具】も必要だとは知らなかった。

だからこのペンダントに門の紋章が刻まれているのか。莉奈は途端にテンションが上がり始めていた。もう返さないぞとばかりに、ペンダントをしっかり首から下げる。

「ゲンキンだな、オイ」

さっきの今で、テンションの変わり様にエギエディルス皇子は呆れて苦笑いをしていた。

フェリクス王からの貰い物はいらないが、 瞬間移動(テレポート) は欲しいらしい。あからさま過ぎて言葉が出ない。

「どうやって使うの!?」

もう1度訊いた。

そんな皇子を他所に、莉奈は興奮しかない。あの魔法を好き勝手に使えるなんて夢の様だ。

「【転送の間】で使えば――ってオイ!!」

とまだ説明もし終わっていないのに、莉奈は扉に向かおうとしていた。エギエディルス皇子は慌ててその腕を握り、引き止めた。

説明もまったくしていないのに、お前は何処に行くのだ……と。

「やろうやろう!!」

莉奈の瞳は、好奇心でキラッキラッである。

「やろうやろうじゃねぇよ。説明を最後まで聞けや」

聞いてもないのに出来る訳がない。落ち着けと云わんばかりに席に戻して座らせた。

「使い方知らないのに使えないだろう?」

仕方がないなと、エギエディルス皇子はため息を吐く。

口を尖らせ早くしろと目が訴えているからだ。

「まず。さっき回した時、色が変化しただろ? それは、宮の色と連動してる」

「ほうほう」

莉奈は改めてコイン型のツマミをカチカチと回してみた。確かに宮の色にしか変化はしない。

「白はココ "白竜宮" んで緑はお前の宮 "碧月宮"」

「ふむふむ」

莉奈は今度こそ、エギエディルス皇子の説明をしっかり訊く。何かあっては困るからである。

説明を聞いている限り、色が王宮にある宮を表している様だ。

白なら、今いる "白竜宮"。

緑は、自分の住んでいる "碧月宮"。

「銀は、王宮 "銀海宮" に行ける」

「ふむふむ。赤は?」

カチカチ回すと赤色に変わる。赤色は何処の誰の宮だったっけ?

「…………俺」

エギエディルス皇子が少しだけ、頬を紅くしてそっぽを向いた。

どうやら自分の宮に、行ける様にしてある事が恥ずかしいらしい。

――――キュン。

――――ナニその顔~。超可愛いんですけど!!

「エドの宮か~。遊びに行ってもイイのかな?」

許可なくても行っちゃうけど……。可愛い過ぎてニヤニヤが止まらない。頬をツンツンしたい。

「好きにしろよ!!」

エギエディルス皇子はさらにプイッと横を向いた。

―――ツンデレだ!! マジで可愛い~。

そっぽを向きながら許可を出してくれるなんて、莉奈はツボにハマって口許が緩みっぱなしである。

この超可愛いエギエディルス皇子の宮は確か……

" 緋空宮(ヒクウキュウ) "だったハズ。

よし、ドンドン遊びに行こう。

「黒は……タールさんのいる……" 黒狼宮(コクロウキュウ) " 」

莉奈は色と宮を確認しながら見ていた。魔法省長官のタールがいるのは "黒狼宮" 。そこにも行けるみたいである。

行けない宮も勿論ある。例えばシュゼル皇子の " 紫雲宮(シウンキュウ) " は登録されていないのか、いくら回しても紫には変わらない。

行く予定はないからイイけど……。

「ん? 金色? そういえば "金色" ってドコだっけ?」

カチカチ回すと銀の次に金色に変わる。何度回しても金色に変わった。

金色……金色ってドコ?

「……」

「エド?」

エギエディルス皇子にドコだと訊いてみたら、複雑そうに横を向いて唸っていた。

「リナ……」

リック料理長が、顔面蒼白にして頬をヒクヒクとひきつらせていた。当たり前だけど、何処か分かるみたいだ。

「金色って?」

ならリック料理長に訊いてみる。

何故だか知らないけど、エギエディルス皇子は言いにくそうだし。

「「 金天宮(キンテンキュウ) 」」

リック料理長とマテウス副料理長が、顔を硬直させていた。表情を見れば、血色も悪い。

「……」

となれば、2人がそうなる所となる訳で……。

――――え?

―――こっわ!!

そうだよ!! "金色" だもん。あの方しかいないじゃん!!

莉奈は慌ててペンダントを、首から外した。

"金天宮" ってこの国のボスの所だ!!

こわいコワイ怖い恐い!!

「返却致します」

エギエディルス皇子の方へと、ススッとペンダントを滑らせた。

そんな恐ろしい代物を持っていたくはない。こんなモノ返却だよ返却。

「出来る訳がないだろう」

エギエディルス皇子が渇いた笑いを浮かべながら、ペンダントを手に取るとゆっくり莉奈に歩み寄る。そして顔面蒼白で嫌がる莉奈の首に掛けてきた。

ノーノーと首や手を振る莉奈を完全に無視し、再び莉奈の首にペンダントが戻ってしまった。

「最悪だ」

莉奈は魂が身体から抜け始めていた。

これはペンダントではない "首輪" だ。

外す事の出来ない呪いの首輪に違いない。

「ワタシハノロワレテシマッタ」

莉奈は魂が抜けていくのを感じたのであった。