軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

166 軍部 "白竜宮"

「お前……よそ見してんなよ」

莉奈が軍部の厨房を見てみたい……と言った一言により厨房に向かっていた。だが、莉奈がすれ違う人や調度品等にまで、興味津々にキョロキョロと見ていたのでエギエディルス皇子が呆れていた。

「だって、王宮や私の宮とは全然雰囲気が違うんだもん」

さっきは竜の方に目がいって、全然気にもしなかったが今は違う。初めて来た白竜宮がどんな所なのか、見れるなら見れるだけ見てみたい。

ちなみに王宮は侍女もいるし、警備・警護の衛兵達がいる。当たり前なのだろうが、軍部はそれらがまったくいない……というか、近衛師団か衛兵しかいない。

ハッキリ言って……男ムサイ!!

もちろん女性の兵もいるが、どの世界でも同じなのか圧倒的に男性が多い。気のせいかもだが……匂いが違う気がする。臭い訳ではないけど……。

「そっちじゃねぇ」

と右を行こうとした莉奈の襟首を、ネコにでもする様にひょいと掴んだフェリクス王。興味津々であちらこちらキョロキョロし過ぎて、道を逸れていたらしい。

「なっ! 首を引っ張らないで下さい!!」

「首じゃねぇ "襟" だ」

「変わらん!!」

と思わずタメ口で反論した。首も襟も莉奈にしたら大した差はない。口で言ってくれればイイのに、襟首を掴んだその行為は莉奈からしたら大問題であった。

「なら……手でも握ってやろうか?」

フェリクス王は軽く腰を曲げ、からかう様に莉奈の耳元で囁いた。

「……なっ!」

耳に……耳に……息がかかった~~!!

さすがの莉奈も、耳元にふいにかかった声と息に驚き、反射的に耳を押さえ離れた。だが、フェリクス王の声が耳に残っていて、顔がボッと火照っていくのを抑えきれなかった。

「……くくっ……お前……意外と可愛いな」

フェリクス王は、莉奈の初めて見せた表情に、何だか可愛いく見え堪らずくつくつと笑っていた。いつもは何事にもあまり動揺しない莉奈が、顔を真っ赤にして睨んできたのだ。

「か……可愛……うっさいわ!!」

莉奈は顔をプイッと背け、やっと言えた言葉がそれだった。

別に男の人に "可愛い" と、言われた事は初めてではない。なのに、フェリクス王が言った言葉に、どうしようもないくらい、心臓がドキドキとしていた。

上手く返せたら良かったとは思うが、そんな余裕はなかったのだ。

逃げる様にドカドカと前を歩き出す莉奈の背に、フェリクス王の楽しそうな笑い声が響くのであった。

◇◇◇

フェリクス王が、軍部の厨房の位置を把握していたのには、莉奈は少し驚いていた。王宮ならいざしらず、軍部で食事を摂る事などなさそうだからだ。

でも、普通の王とは違い、戦闘要員の人員の数に自らを入れているくらいなのだから、食堂を使う事もあるのかもしれない……と思い直した。

「……着いたぞ」

フェリクス王は、厨房の前で莉奈の襟首をポイッと離した。

前をドカドカ歩いていた莉奈は、道が分かる訳もなく結局またフェリクス王に、襟首を掴まれていたのだ。

「…………」

ネコじゃあるまいし、なんとも複雑である。不本意だ。軽く睨んでみたものの、ニヤリと笑われるだけで無意味だった。

いつか、アッと言わせてやる……と王に対してよからぬ事を考えていた莉奈だった。

「「「…………っ!?」」」

フェリクス王兄弟が、この軍部に来ていたのは知らされていた。だが、まさかこんな場所に顔を出すと思わなかった料理人達は、不意に開いた扉とそこにいた人物に口を開けたまま固まった。

「あっ……結構広い」

さすがに王宮程の広さはないが、それでも充分広い。設置してある調理機材、器具もほぼ同じそうだ。

「へ……陛下……!!」

誰かがそう呟くと、正気に戻り皆一斉に膝を折り始めた。だが、フェリクス王は「構わん」とそれを御した。

「な……何か……ふ……不手際が!?」

近くにいた料理人が、ガクガクと震える様な声で訊いた。そうでもなかったら、王がここにわざわざくる訳がないと思っていたのだ。

「この女が、厨房をみたいと言ったので連れて来たまでだ」

と王は莉奈をチラリと見た。料理人の視線が一斉に莉奈に集まった。

……あれ? この似た様なやり取り……やった覚えがあるぞ?

「 "この女" です、以後お見知りおきを……」

ほら……確か誰かと来た時にやったぞ?

莉奈は内心首を傾げつつ、料理人達に服を軽く摘まんでカーテシーもどきで挨拶した。

「「「…………え?」」」

料理人達は、そんな挨拶に絶句し……

―――パシン。

と莉奈の頭に、軽い平手が落ちた。

適当とも無礼ともいえる莉奈の言動に、フェリクス王が呆れ笑いをして平手を落とした様だった。

「「「…………っ!?」」」

もはや料理人達は、絶句である。莉奈の言動はもちろんの事だが、王がツッコミの様な平手を、この少女にしていたからである。