軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149 魔物ロックバードに舌鼓

厨房には鶏肉……ロックバードの焼けるイイ匂いが溢れていた。だが今回は大量な訳で、食堂の方にも匂いが広がる。

ナゼかそれに混じって……ニンニクの焼ける独特の香ばしい匂いがしていた。

「え……リナ?」

リック料理長が莉奈の作る、フライパンの中身を凝視した。

皆が皆、莉奈が味見をした様に、ロックバードのモモ肉やむね肉を、ただただ焼いていた。だが、莉奈はフライパンに軽く油を引いて、先にニンニクを次にモモ肉を焼いていた。予想外のオプションだ。

「ん?」

「ん? じゃねぇよ!! そういう事は先に言えよ!!」

キョトンとした莉奈に、皆がツッコミを入れた。莉奈のやる事=旨い……が常習化していて、アレンジなど考えていなかったのだ。

だから当然の様に、普通に焼いていた。そういう事をやるならやるで、先に教えて欲しいと叫んでいた。

「俺もニンニクで焼く!!」

「俺も!!」

「あ……あたしは、ニンニク臭くなるからイイや」

ニンニクの焼ける独特の香りに、ある者は負け、ある者は匂いを気にして入れない選択肢を選ぶ。

皆、思い思いで再び肉を、焼き始めていたのだった。

◇◇◇

「はい、エドどうぞ」

ニンニク臭くはならない程度の、軽めに香りをつけて焼いたロックバードのソテー。クレソンがあったから飾りつけ程度にのせてある。

「近衛師団の皆さんもどうぞ」

エギエディルス皇子とまったく同じ物を、5人いる近衛師団兵達の前に置いた。

「「「ほぉ~~っ!!」」」

鶏油のイイ匂いと、食欲をそそるニンニクの香り、そして見るからに香ばしい色に嬉々とした声が漏れた。

「あっ、エドには "カクテルもどき" もあるよ?」

とククベリーのジュースを追加で出してあげた。

勿論ミルクセーキも作ってあるが、ミルクセーキでは少しお酒っぽくないから、さっき即席で作ったククベリーのジュースだ。ククベリーとシュガーシロップ、レモンと水で簡単に作った物。

ワイングラスに注ぐと、ククベリーの果汁が赤いから赤ワインに見えた。ロックバードのソテーと合わせたら、レストランでディナーをしている様にも見えるだろう。

「ワインっぽい!!」

大人っぽくなれる、このジュースにエギエディルス皇子は、ものスゴく嬉しそうな 表情(かお) を見せた。

ワイングラスを持ってクルクルと、テイスティングする様に回して楽しむと、それを一口飲んだ。

「ククベリー……ククベリーだな?」

兄王フェリクスが、カクテルの時にやっていたみたいに楽しんでいる。

「後は?」

可愛いなと思った莉奈は、面白そうに訊いてあげた。

「あと……? 後……」

エギエディルス皇子は首を傾げた。後に何が入っているかまでは分からないらしい。一生懸命チビチビとテイスティングしている。

「殿下、分かりませんかね?」

莉奈は、さらに面白そうに訊いた。

この世界、レモン水というジュースに似た飲み物はあるが、ジュースはなかった。ならば、ジュース自体初めてだし、レモン汁を入れるなんて分からないだろう。

「……う~ん? レモン……レモンの香りがする」

エギエディルス皇子は、味からは分からなかった様だが、微量に入っている新鮮なレモンの香りに気付いた様だった。

「正解にございます、殿下」

と莉奈は一礼して見せた。良く分かったなと感心する。甘さを引き立てる程度にしか、入れていないのにスゴい事だ。

「正解した殿下には、ミルクセーキとチーズオムレツ、そしてパフェをプレゼント」

コトンコトンと 魔法鞄(マジックバッグ) から取り出し、エギエディルス皇子の前に出してあげた。量が多くて食べきれないだろうけど、 魔法鞄(マジックバッグ) があるから平気だしね。

「すげぇ~」

エギエディルス皇子は、あまりの豪華さに目を瞬かせていた。そしてどれから食べようか、目移りしてキョロキョロしている。

まぁ、それよりもそれを横目で見ていた、近衛師団兵の皆の方が面白かったけどね。見た事のない料理と数に、しばらく口をあんぐり開けてたから。

「……ど……どうしよう」

歓喜で軽くパニック状態のエギエディルス皇子。どれから食べようか迷い箸ならぬ迷いフォークをしている。

「とりあえず、ロックバード以外は鞄にしまったら? 熱々の内にどうぞ?」

莉奈は向かいの席に座り、可愛いなとクスクス笑いながら提案した。冷たいデザートは最後かなと。明日でもいいしね?

「だな!!」

エギエディルス皇子は、大きく頷くといそいそと 魔法鞄(マジックバッグ) にしまった。だが、小さめに作ったチーズオムレツは食べる気なのか、テーブルに残していた。

「はぁ~。ニンニクと焼くとさらに旨いな~」

エギエディルス皇子は、ナイフとフォークを器用に使いモグモグとロックバードのソテーを堪能していた。

その優雅な姿は、やっぱり皇子様なんだなと、莉奈は少し見惚れていた。

生意気盛りなエギエディルス皇子が、姿勢も良くお行儀も良く、しっかりとしているのだ。弟が同じ歳だとしても、こんな優雅な雰囲気は出せないだろう。

「うっま」

「マジかよ……あのロックバードだぜ!?」

「信じられねぇ……魔物が……旨いとか」

「くっそ! 知ってたら燃やしたり、棄てたりなんかしなかったのに!!」

「俺達は……こんなに美味しい肉を棄ててたのか!」

近衛師団兵の皆は、ロックバードを食べながらも嘆いていた。今の今まで必死に倒した魔物……こんな美味しい "肉" を、廃棄していたかと思うと、悔しいやら悲しいやら心中複雑らしい。