作品タイトル不明
143 カクテルは?
結果……騒いでいた人達は莉奈に鉄拳をくらい、おとなしくなった。今は静かに洗い場で、仲良く洗い物をしている。
「ん……完璧」
冷やし固めながら混ぜ、クリーム状になったミルクシェイクに、莉奈は大満足だった。皆の視線はアイスクリームに見える、ミルクシェイクに釘付けである。
作っておいてなんだが……ストローがない。この間散歩で見つけた麦藁的な物が、 魔法鞄(マジックバッグ) の中にあるけど、それを使うのはものスゴい抵抗がある。口に含めば藁臭そうだし、そもそも細いから吸えないだろう。
なら、鉄パイプ的な物でもと……莉奈は一瞬考えて自分で否定した。鉄パイプでシェイクを飲むのは絶対におかしい。
ワイングラスにミルクシェイクをスプーンで注ぎ、ククベリーのジャム、ミルクシェイク、ククベリーの実、それを交互に2層仕上げた。最後に相変わらずの固いパンを、細長く切り上に斜めに刺して完成。
……よし "パフェ" の出来上がり。
「…………」
莉奈は首を傾げた。ナゼ……パフェになった。
「へぇ……オシャレで可愛らしい……それが "シェイク" ?」
出来上がったパフェを見た、リック料理長が感心した様に頷いた。赤と白が何層にもなっていて、見目にも華やかだったからだ。
「シェイク……違う、パフェ」
「え?」
「パフェ」
「……え? パ……フェ……?」
リック料理長は目をパチクリさせていた。シェイクと言っていなかったのか……と。そして "パフェ" とは何なのか。
「なんか……パフェになった」
エギエディルス皇子が喜ぶ方向に考えていたら、ナゼかパフェが出来ていたのだ。本当ならもっと色々盛りたいところだが、作るつもりで用意していなかったので、仕方がない。
「「「えぇ!?」」」
シェイクもパフェも分からない皆は、何がなんだか分からないまま驚いていた。
……ん?
そういえば "サンデー" っていう似たデザートもあったな……と思い出し莉奈は再び首を傾げる。
"パフェ" と "サンデー" の違いってなんだろう?
確か……パフェはフランス語の "パルフェ" が語源って聞いた事がある。サンデーはアメリカが起源だと思ったけど……。後は盛り付けるお皿の違いとか、トッピングが違うとか、昼食べるのがパフェで夕方以降がサンデーという説もあるが、詳しくは知らない。
個人的な意見でいうのなら、サンデーは小さめの器で可愛らしく。パフェは長めの器で豪華な気がする。
そして "サンデー" にソーダ水を注いだ物は "マンデー" というらしい。日替りランチならぬ、日替りサンデー!!
だけど火曜日以降はない。やるなら徹底的に作れば良いのに……飽きたのかな?
小さい器に盛ったから厳密にいうと、"サンデー" かもしれない物をチラリと見て「まぁ、いいか」という結論にした。
だって分からないし……正直美味しければどっちでもいい。
莉奈はシェイクではなくナゼか出来たパフェと、口を覆っていたハンカチを 魔法鞄(マジックバッグ) にしまうと、残ったミルクシェイクにスプーンを入れ掬った。
「美味しい」
一口食べたのだ。ミルクシェイクは濃厚で滑らか。
フェリクス王達が作ったアイスクリームには負けるが、クリーミーに仕上がっていた。ストローでガッツリ飲みたい。
「ねぇ」
莉奈の肩をチョンチョンと突っつくリリアン。いつの間にか洗い物も終わり戻って来たらしい。食わせろと言っているに違いない。
莉奈はリリアンを無視して、それをカクテル同様小さいグラスに盛る。
「ねぇ~~っ!」
無視していたので、突っつく指が激しさを増す。人の腕をゲームのリモコンみたいに、高速連打するのヤメテもらっていいかな……リリアン、腕に穴が開くから。
「10個あるから甘味チームで、分ければいいでしょ……」
そう言って最後のシェイクの天辺に、ククベリーの実を1つ載せた。ソフトクリームの上だけ、そんな感じだが可愛らしく仕上がったと思う。
「10個……? 1・2……」
ジッ~と見ていたリリアンが眉を寄せ、出来たミルクシェイクの数を指差し確認しながら数える。何か数が気になる様だ。
「11個あるよ!?」
リリアンが叫んで11個目を持ち上げた。1つ多くて半ば歓喜に似た声だった。貰えるとでも思ったのかもしれない。
だが、莉奈はそれをヒョイと取り上げ 魔法鞄(マジックバッグ) にしまった。
「はい、10個でした」
「「「え~~っ!?」」」
莉奈がそう言って後片付けを始めれば、甘味軍団は驚き再び声を上げていた。欲しかったのなら、余計な事を言わなければ良かったのかもしれない。
余談だが……僅かにボウルに残ったミルクシェイクをリリアンと、恥と外聞を捨てた一部の人達が、指を入れこそぎ落として口にしていたのには……軽く引いた。