軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お一人様用和風ワンパンパスタ

時々ある一人ご飯。そういうときの 悠利(ゆうり) は、手抜き料理をしたり、試作中の料理をしたり、他の人のことを考えずに自分が食べたいだけの料理を作ったりする。

そして今日は、お手軽に作ろうと思う日だった。どうせ自分しか食べないのだ。食べたいものをその日の気分で作っても許されるだろう。……え?いつもそんな感じじゃないか?それはそうですが、一応食べる仲間達のことも考えて作っています。一応。

「パスタにしようかなー」

冷蔵庫の中身を確認し、悠利はそんなことを呟いた。パスタにしてしまえば、それ一つでお昼ご飯が完成するという利点がある。ご飯やパンの場合はおかずが必要になるが、パスタは具材を入れて作るのでそれだけで完成するのだ。麺類はその傾向が強い。

勿論、ご飯でも丼系にすれば何も問題はないのだが。ただ、胃袋の状態を考えて、丼系は重いからちょっと……な気分になったのである。自分だけなので好きに作ってよいや、みたいなノリである。

そんなわけで、本日のお昼のメニューはパスタに決まった。それも、一人なので洗い物も少なく済ませるための、ワンパンパスタである。

ワンパンパスタとは、その名の通りワンパン、フライパン一つで作るということだ。通常パスタを作る場合は、パスタを茹でる鍋と、具材を炒めたりするフライパンの二つが必要になる。ワンパンパスタは、それを全部一つのフライパンでやってしまおうという感じの料理である。

大人数の分を作るときは、むしろパスタを茹でる鍋と具材を作るフライパンは別の方が向いている。ワンパンパスタは少人数、それも自分の分を自分で作るときに向いているのだ。なので、悠利は今日のお昼はワンパンパスタにしようと決めたのである。

メニューが決まればあとは作るだけだ。悠利は冷蔵庫の中から、必要な食材を取り出した。

本日のワンパンパスタは、シンプルにきのこの和風パスタである。きのこはあっさりとして美味しいだけでなく、旨味がたっぷり入っているので入れるだけでグッと味が深まる。後は、流石にタンパク質を何も取らないのは身体に良くないので、ちょっと奮発して厚切りベーコンを入れることにする。ベーコンも旨味が出るので完璧だ。

つまり必要な食材は、パスタにきのこ(今日使うのはしめじと舞茸)、そして玉ねぎとベーコンである。

これが肉食メンツの食べる料理であったなら、ベーコンよりもお肉の方が喜ばれるかもしれないし、肉が苦手なメンツならば、エビやイカなどのシーフードを使うのもありだろう。アレンジは色々出来る。

ちなみに、本日の味付けはあっさりめを考えているので、和風と鶏ガラの顆粒だしと酒と醤油という、日本人の悠利にはとても食べ慣れた味付けだ。

「さあ、作るぞーっと」

そんな風に張り切る悠利であるが、一人分なので、野菜を切るのも割と一瞬で終わる。普段二人や三人で作っているとはいえ、やはり人数の多い食事は下ごしらえも大変なんだよなということを改めて感じる悠利であった。

しめじと舞茸は石突きの部分を包丁で落として、食べやすい大きさにばらしておく。玉ねぎは皮を剥いてから半分に切り、芯を取った後に食べやすい大きさに切っておく。あまり細いと火が通って溶けてしまうし、太すぎるとパスタと食べるには不向きなので、それを考えて自分が食べやすい大きさにしていく。

厚切りベーコンの方も、厚みはともかく幅に関しては玉ねぎとあまり変わらないぐらいにしておく。というのも、ベーコンは流石にしっかりと火を入れなければならないからだ。

これがハムの場合はそのまま食べられるのだが……。しかし、ベーコンにはハムにはない別の美味しさがある。それが旨味としてパスタに絡むことを考えると、今日は味付けにひと役買ってくれそうなベーコンになったのである。

そうして食材を切り終えたら、フライパンにオリーブオイルを入れ少し熱してから、ベーコンを投入する。

野菜などを炒めるときのコツは、火が通りにくい具材から炒めるというものである。なので、一番火が通りにくく、かつしっかり火を通すべきなベーコンから炒めることになる。

そうしてベーコンにしっかりと焼き色がついたら、そこにきのこと玉ねぎを追加する。今日使う具材はこれで終わりなので特に深く考えずに、ベーコンが先で他のものは次というぐらいの簡単さだ。

なお、葉物野菜があった場合はもう一段階分ける必要がある。葉物野菜の場合、茎や軸の部分はしっかりと火を通すべきなので先に入れる。そして、葉っぱの部分は火の通りがとても早いので、最後の仕上げにさっと混ぜる方が美味しく仕上がるのだ。

それはさておき、具材をすべて入れたらしっかりと火が通るまで炒める。目安はきのこがしんなりとなり、玉ねぎが透明になるくらいまで炒めることだ。特に玉ねぎはしっかり炒めた方が甘みが出るので、この作業で手を抜いてはいけない。

熱せられたオリーブオイルに具材を入れたことによって、ジュージューと音がする。焼いたベーコンから漂う香りにきのこや玉ねぎの匂いも混ざって、それだけで十二分に美味しそうでもある。

具材に火が通ったら、フライパンに水と料理酒、和風と鶏ガラの顆粒だしを入れる。入れたら沸騰するまで待って、しっかりと沸騰したら、パスタを半分に折って入れる。そして、パスタの茹で時間分しっかりと茹でる。

ちなみに、このときの水の量が少なすぎるとパスタにしっかりと火が入らないので、そこは注意が必要だ。適量はフライパンによって違うが、しっかりとパスタがお湯につかるぐらいの分量は必要である。

その後、吹きこぼれないように注意しながら、フライパンの中身を火にかける。パスタの茹で時間分がすぎた頃には水も大分減っているが、念のためパスタの味見をする。

一本つまんで食べてみると、特に芯の硬さなどは残っていないので、そのまま火を強めて水気をしっかりと飛ばす。ここで余計な水分が残っていると仕上がりがベチャッとしてしまうので、焦げ付かない程度に火を強めて余計な水分を飛ばしておくのだ。

余分な水分がきっちり飛んだら、仕上げに醤油を回しかけて味を調える。ここはあくまでも好みなので、醤油の量は味見をしながら確かめる。和風と鶏ガラの二種類の顆粒だしの旨味とベーコンの旨味、そしてきのこと玉ねぎの旨味がしっかりと混ざったパスタに、醤油がまとまりを与える。

「いい感じに出来たー」

これでよしっと悠利は満足そうにうなずくと、そのままフライパンの中身をパスタを入れる用の大きな器へ入れる。食べやすそうな大きさの舞茸としめじに、ベーコンのピンクが何とも言えず鮮やかだ。

「んー、青じそがあれば刻んで散らすんだけど、今日はないから……」

どうしようかなと考え悠利は色々と食材を探し、ちょうどいいものが見つかったとばかりに海苔を手にした。海苔をちぎって、更に砕いてパラパラとパスタの上に散らせば、全体的に白っぽかったパスタに黒が彩りに入っていい感じの仕上がりになった。

「今日は海苔にしたけど、今度作るときは青じそでも刻もうかなー」

自分一人なのでこの辺はちょっと手を抜いた悠利である。他の誰かに作るときならば、あらかじめ彩りを考えて青じそやネギを刻んでおくのだが……。どうしても自分一人のご飯となると、ちょっぴり手を抜いてしまうのだ。まあ、たまにはそんな日があっても悪くない。

とりあえず、盛り付けが終わったら洗い物を後にして、まずは温かいうちにパスタを食べよう。そんな気持ちでパスタを運ぼうとした悠利は、そこでピタリと動きを止めて一度盛り付けた自分のパスタから少量を小さな器に移した。

「まあ、足りない分はパンでも食べればいいよね」

そんな独り言をつぶやいて、自分の器と新しく作った小さな器の二つを持って食堂スペースへと移動する。

そして――。

「ルーちゃーん、そろそろご飯の時間だけど、どうするー?」

廊下に向けて悠利が声をかければ、遠くの方でキュピーという可愛らしい鳴き声が聞こえた。

誰もいないので、思う存分アジトの掃除が出来るとばかりに、ルークスは張り切ってあちこちの掃除をしていたのである。勿論、個人のスペースに入るときは許可を取ってある人物のところにしか入らない。入ってはいけない場所の見極めもきっちりと出来るあたり、本当に賢いスライムである。

そんなルークスは、大好きな悠利の声が聞こえたので、猛スピードで廊下を移動してきた。ぽよんぽよんと跳ねる動きはコミカルで可愛らしいが、びゅんっとすごい勢いでそれなりの距離を跳躍するので結構なスピードが出ている。誰もいないので思う存分スピードを出している感じだった。

しかし、そんな猛スピードで悠利に近づいては怪我をさせることも解っているので、食堂の前に来る頃には速度は落とされ、悠利の前に現れたときにはいつも通りのぽよんぽよんという跳ねっぷりしかなかった。

「お掃除お疲れ様。ルーちゃんもご飯食べる?」

スライムは雑食なので食事らしい食事を用意する必要はない。特にルークスは、アジトのあちこちを掃除したり、生ゴミの処理をすることでエネルギーを回収しているので、他の従魔達ほど明確なご飯というものは必要ないのだ。

しかし、そこはやはり大事な仲間には美味しくご飯を食べてほしいと思うのが、悠利をはじめとする皆の考えだ。なので、食事の時間には同じようにルークスも食事をとるようになっている。

「ルーちゃん用の野菜炒めは、朝にいっぱい作ったのが残ってるからそれもあるんだけど……。これ、今日の僕のご飯のワンパンパスタなんだけど、食べる?」

「キュー?」

「ちょびっとなんだけどね、おすそ分けだよ。同じものだと嬉しいかなと思って」

「キュ!キュウ!」

悠利の言葉に、ルークスは体を縦に振って肯定を示した。やったぁ!みたいな感じの目をしている。実に嬉しそうだ。

ルークスは雑食のスライムらしく何でも食べる。ただ、好物は野菜炒めである。何故かは誰にも解らない。

しかしそれとは別に、大好きなご主人様である悠利と同じ食べ物に大喜びするのだ。ルークスの中ではプレミア感でもあるのか、同じ食事を提供されるとそれはもう大喜びするのだ。悠利もそれを知っているので、ルークスにおすそ分けを用意したのである。

「それじゃあ一緒に食べようか」

そう言って笑うと、悠利は自分の席の隣にルークス用の小さな器を置き、そして椅子の上にクッションを積み上げた。

何せ、ルークスは愛らしいスライムだ。悠利達が座っていい感じになる高さの椅子だと、テーブルに届かないのである。他の仲間達がいるときは足元で食事をとるルークスだが、悠利と二人きりのときはこうやって並んで同じテーブルでご飯を食べるのだ。

これは、ルークスの中では最大級の贅沢である。なので、今もとても喜んでいる。

「はい、ルーちゃんどうぞ」

悠利の言葉を合図に、クッションが積まれた椅子の上にルークスは器用にぴょんと飛び乗る。そして、目の前に置かれた小さな器の中のワンパンパスタを見て、キラキラと目を輝かせる。

その視線が、悠利の前に置かれた悠利の分のワンパンパスタに向く。中身を確認して同じものだと理解して、また嬉しそうにふるふると身体を揺さぶるのであった。

「いただきます」

「キュピピピー」

悠利が手を合わせていつものように食前の挨拶をすると、隣でルークスも同じようにちょろりと体の一部を伸ばして手を合わせるような形をとり何かをつぶやいた。神妙な顔をしているが、恐らくはルークスの言葉でいただきますと言っているのだろう。ルークスは悠利が大好きなので、悠利がすることをこうやって真似したがるのだ。

その光景の微笑ましさにふふふと楽しそうに笑った後に、悠利は目の前のワンパンパスタに向き直る。ルークスに少々お裾分けはしたが、そもそも具材もそれなりにたっぷり入れたのでこの分量でも悠利にとってはお腹いっぱいになりそうだった。

いざ!とフォークをパスタに差し込み、きのことパスタをひとまずくるくると巻いて口へと運ぶ。味付けはあっさり和風だが、きのこの旨味がぎゅっと染み出たスープで茹でた形になっているので、パスタ全体に味が染み込んでいる。噛めば噛むほどじゅわりと味が広がるきのこの旨味に、それをすべて受け止めるパスタ。絶妙のバランスである。茹で加減もバッチリだ。

和風のあっさりとした味付けときのこの相性は悪くない。悠利はこういうあっさりめの味付けも好きなので美味しいと思っているが、もしも仲間達に作る場合は、ここにすりおろしたニンニクを入れるとか、具材を炒めるときにバターを使ってコクを出すのもいいかもしれないと思った。今度作るときは、色々違う感じにしてみようかなと考えながら食べる悠利だ。

続いて、食べ応えのある厚切りベーコンを食べる。表面に焼き目をしっかりつけたので、香ばしさもばっちりだ。パスタと一緒に口の中に運べば、ベーコンらしい肉のどっしりとした旨味と、オリーブオイルで焼いて焦げ目をつけたことによる香ばしさが何とも言えないハーモニーを奏でる。

しかしそれだけでなく、和風の味付けにしたことでどこかあっさりと仕上がっている。本来ベーコンは油がしっかりとあるためにザ・肉という感じなのだが、和風の出汁で茹でたことによりそのパンチが少々弱まっている。

とはいえ、何もそれは悪いことではなく、食べやすさへと変わっている。しかも、そうして溶け出した旨味はすべてきのこや玉ねぎ、パスタへと染み込んでいる。つまり、余すことなく楽しめるというわけである。これはこれで実に美味しい。

最後に、しんなりとした透明の玉ねぎと共にパスタをいただく。パスタに絡みやすいようにほどほどの太さに切った玉ねぎは、くるくると巻くのにも抵抗はなかった。口の中に入れれば、玉ねぎが持ち合わせる具材特有の甘みと、他の食材や調味料の旨味を吸い込んだ、何とも言えない濃厚な風味が口の中に広がっている。

そうして全ての具材を食べ終えて悠利は、やはりこの具材にしてよかったと思った。どれか一つだけにしてはいまいちの仕上がりだろうが、お互いがお互いの美味しさを引き立てあって、より深みのある味付けになっているのだ。

また、アクセントとして散らした海苔もいい仕事をしている。あっさりとした和風の味付けと海苔が合わないわけがない。しんなりとした海苔はパスタに絡み、それが口の中で海の味を広げてくれるのだ。突貫で散らした海苔であったが、これはこれで上手に出来たなと思う悠利なのであった。

「ルーちゃんも、美味しい?」

「キュピ!」

「良かった」

悠利の問いかけに、ルークスは満面の笑みを見せた。スライムに味覚があるのか、人間と同じように美味しいと思っているのかは謎だが、少なくともルークスが喜んでいるのだけは事実であった。悠利にとってはそれで十分だ。

なおルークスは、悠利の真似をしたがることがあるのは前述したが、今もそうだった。自分の身体の一部をちょろりと伸ばしてフォークみたいな形を作り、それでパスタを掬おうとしている。

「……ルーちゃん、器用だねぇ」

スライムの食事の仕方は対象を吸収、分解することなので、そんな風に口に運ぶような行動をとらずとも、身体全体で対象を包み込めば終わる。しかしルークスは、悠利達と同じようにやろうと頑張るのである。

なお、スライムに口はありません。口はないけれど、あるとしたらこの辺かな?みたいな感じの場所にパスタを運ぼうと頑張っている。

しかし、自分の身体をフォークのように変形させたものではイマイチ上手に出来ず、キュウ……としょんぼりしている。そんなルークスを見ていた悠利は席を立ち、小さめのフォークを手に戻ってくる。

「ルーちゃん、コレ使ってみる?」

「キュ?キュイ……?」

「使っても大丈夫だよ。あ、でも、溶かさないでね」

「キュ!」

それは大丈夫と言いたげに元気よく鳴くと、ルークスは悠利からフォークを受け取って、器用にそれを伸ばした身体の一部で握った。そして、悠利がしていたようにくるくるとパスタと具材を巻いていく。慣れないのでちょっと不格好だが、それでも何とか巻くことが出来たので顔に向けて運んで食べる。

フォークごと体内に入り込み、具材だけを残してフォークは外に出す。そしてそのまま、分解吸収を始める。当人は、悠利と同じような動きが出来てご満悦だった。

そして悠利はと言えば……。

「うちのルーちゃんもの凄く可愛い……ッ!」

可愛い可愛い従魔のあまりにも可愛すぎる姿に、悶絶していた。従魔バカここに極まれり。ペットの可愛さに悶絶する親バカ飼い主みたいになっている。が、まぁ、割と通常運転である。

そのまま、ルークスが食べ終わるまでその姿を観察して、にこにこしている悠利だった。うちのルーちゃん本当に可愛いなぁと、口に出さずとも顔も気配も物語っている悠利なのでした。

なお、ルークスがフォークで食事をしたと聞いた仲間達が驚愕し、次いで「見たい!」と言い出したので披露した結果、ルークスは凄い凄いと皆に褒められてちょっと嬉しそうなのでした。可愛いは正義です。