軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

歌と演奏のコラボレーションです

ダンジョンコアが取り込んでいた水を生み出す 海神(わだつみ) の力を秘めた秘宝たる青い宝玉。その宝玉にイレイシアが持つ 海神(わだつみ) の加護の力を注ぐため、即席の演奏会が始まることになった。

イレイシアがミニハープで演奏をし、ニコレットがそれに歌を添える。そして二人は今、どのような曲を演奏するかを相談していた。

彼女達はどちらも人魚(ニコレットは元だが、生まれも育ちもちゃんとした人魚である)だが、ニコレットが住んでいたのはイレイシアの故郷とは別の海らしい。そうなると、知っている歌も異なる。なので、お互いが知っている曲で、演奏が一人に歌が一人の状態でバランスよく奏でることが出来る曲を探しているらしい。

流石は音楽に造詣が深い種族ということだろうか。彼女達には、それなりにこだわりがあるようだった。実に真剣な顔で相談している。

ただあいにくと、観客となる男四人とスライム一匹にはそういった教養は存在しない。大変もったいないことに。

アリーは仕事絡みで演奏会などに顔を出すこともあるようだが、それだって聞く機会があるというだけで、造詣が深いというほどではない。演奏の上手い下手に関しても、素人とプロの違いぐらいなら解るとしても、プロ同士の間での上下などは解らない。感想だって、自分の好みか好みじゃないかぐらいしか出てこないのだという。

それは庶民代表のラジ、クーレッシュ、 悠利(ゆうり) にしても同じことだ。

悠利は現代日本の男子高校生だったこともあり、ラジやクーレッシュに比べれば色々な音楽に触れてきたとも言えるだろう。しかし、触れてきたことがあるからといって、造詣が深いとは限らない。オーケストラの演奏をすごいなぁと思って聞くことは出来ても、何がどう良かったかと聞かれるとちょっと感想に困ってしまう。その程度の庶民である。

「ルーちゃんは音楽好き?」

ニコレットの許可を貰い今いる部屋の掃除をしていたルークスは、突然の質問に何が?と言いたげに悠利を振り返った。このスライム、手持ち無沙汰になると当たり前のように掃除をし始めるのだ。もはや掃除が己のアイデンティティだと思っているのかもしれない。

なおスライムは雑食なので、塵や埃などのゴミを吸収することでエネルギーに変えることは出来る。ただし、大量のゴミでもない限り回収できるエネルギーは微々たるものだ。それでもルークスが嬉々として掃除に励むのは、そうやって周囲を綺麗にすると悠利が褒めてくれるからだ。

というか、悠利だけではない。仲間達も、ルークスがアジトの掃除を頑張っていると、「いつもありがとう」と声をかけてくれる。ルークスは人の話が解るぐらい知能が高いので、自分を褒めてくれているのを理解している。そしてそれが嬉しいということで、掃除を張り切るのだ。

まあ、誰も迷惑はしていないので問題はないだろう。ある意味で、適材適所を証明している。

「そういや俺、人魚の歌って聞くの初めてかも」

「クーレ、イレイスも人魚だよ」

「あー、ごめん。言い換える。音痴じゃない人魚の歌って初めて聞くなーって話」

「まあ、人魚自体、ドラヘルンの周辺じゃそうそう見かけないからな」

「基本、水の近くにいるもんな人魚って」

そんな会話をするクーレッシュとラジに、悠利は確かにと思った。

イレイシアは楽器の腕は人魚らしく見事だが、歌に関してはちょっぴり音痴なお嬢さんだ。声が綺麗なのに、なぜか歌うと音程が外れてしまう。大変珍しい、音痴な人魚なのだ。

ただし、それは彼女が悪いわけではない。イレイシアは、一族全体に降りかかった声を奪う呪いを一身に引き受けていて、その影響なのだ。一族随一の 海神(わだつみ) の加護を持つ彼女は、一族全体に及んで声を奪う呪いをその身に受けても、ちょっと音痴になる程度で済んでしまっている。加護のパワーが大変エグい。

ただし、その事実を知っている者は片手で足りるらしく、イレイシア本人も知らない。だから彼女は、史上初の音痴な人魚という、何とも珍妙な生き物という扱いなのだ。

もっとも、イレイシアが音痴であっても仲間達がそのことで彼女をバカにすることはなかったらしい。歌が上手に歌えないことを差し引いても、彼女は見事な楽器の腕前を持ち、人格的にも優れている。その欠点すら彼女の個性として受け入れられているのだという。実に優しい世界だ。

話を戻そう。

そんなわけで、《 真紅の山猫(スカーレット・リンクス) 》の者達は、イレイシアの歌に馴染みはあるが、音痴ではない人魚の歌を知らないのだ。

人魚というのは音楽に優れた種族だ。それは楽器の演奏だけでなく歌にも及び、彼ら彼女らの歌声はもはや一つの楽器だと言わんばかりの美しさだという。実際、イレイシアも音程を外してしまうことを除けば美しい歌声の持ち主だ。

ちなみに、加護が呪いをじわじわ浄化しているので、以前はトンチンカンな音の外れ方であったが、今は綺麗に三音外れたぐらいになっている。早い話が、ハモリとして歌うのならば、見事なぐらいの旋律を維持している。

そう考えると、イレイシアがハープを演奏し、ニコレットが歌い、更にイレイシアがコーラスやハモリとして参加すると完璧な調和になるのではないか、と悠利は思った。それも楽しそうだよねーと一人でにこにこする悠利だった。今から本番が楽しみで仕方ないのだ。

そんな風に外野である悠利達が雑談をしていると、打ち合わせが終わったらしい二人がこちらを振り返った。

「それでは今から演奏させていただきますわ」

「俺達は関与できんからな。精一杯やれ」

「はい」

アリーの言葉に、イレイシアは真剣な顔でうなずいた。

これは、彼女にとって今までにない大仕事である。普段、彼らの神である 海神(わだつみ) 様の加護について特に意識していないイレイシアであるが、今は自分の身に宿るその加護こそがこのダンジョンを救う手段だと真剣に考えている。もともと真面目なイレイシアなので、大役を任されたと少し緊張しているようにも見えた。

なので、そんなイレイシアの緊張をほぐすために悠利が声をかけようと思ったのだが、それより早く動いたものがいた。ルークスである。

ぴょんと飛び跳ねてイレイシアの前まで移動すると、すりすりと彼女の足にすり寄る。

「まあ、どうしましたのルークス?」

「キュピキュピ」

ニコニコと笑ったままイレイシアを見上げるルークス。あいにくとイレイシアにはルークスの言葉は解らないが、その表情や仕草からルークスがイレイシアを励ましているという風に受け取ることは可能だった。ありがとうございますと微笑んでいる。

なおこの場には一人、ルークスの言葉を理解できる者がいた。

「ありがとうございます。応援してくれるのですね」

そう言って、ニコレットはしゃがみ込みルークスと視線を合わせる。ニコレットと目が合ったルークスは、満面の笑みを浮かべたままぽよんと跳ねた。

「キュピ、キュピ」

「心配いりません。素敵な演奏をしてみせますよ」

ニコレットとルークスの間で会話が成立している。その事実に気づいた悠利達はハッとした。そう、目の前のお姉さんはダンジョンマスターなのである。

ダンジョンマスターとは、大雑把な括りで言うならば魔物の一種になる。なので、同じ魔物の言葉が解るらしい。魔物達にも使う言語に種類があって相互理解の出来ない種族同士もいるらしいが、ダンジョンマスターはほぼ全ての魔物と会話が出来るようだった。

まあ、ダンジョンに魔物を生み出す特性上、言葉が通じないと困るというのがあるかもしれないが。そんなわけでニコレットは、ルークスが自分達を応援していることを理解して、その応援に感謝を述べている。

ニコレットとルークスのやりとりからそれを理解したイレイシアも、ルークスの無邪気な姿に肩の力が抜けたのか、先ほどまでのわずかに緊張した表情から、いつもの柔らかな表情へと変わっていた。本番前にしっかりとイレイシアのガス抜きをしているルークス。とても偉い。

まあルークスはイレイシアのガス抜きをしたなんて考えていないだろうが。これから演奏するんだよね?楽しみにしてるよ!頑張ってね!ぐらいのノリだったはずだ。

しかしその無邪気な行動がイレイシアから緊張を消し飛ばしたのだから、実に見事なファインプレイである。

イレイシアの緊張も解けたところで、イレイシアとニコレットの二人は演奏の準備を始めた。椅子に座ったイレイシアがハープを構え、その傍らに立ったニコレットがスーッと息を吸い込む。彼女達の前には青い宝玉が置かれ、二人はその宝玉に向けてゆっくりと音を奏で始めた。

イレイシアの奏でるハープの音色は優しく柔らかく、春の木漏れ日のような温かさと、夏の水辺の爽やかさを合わせ持つような、心に優しく染み渡るような音色だった。ハープのもともと持つ音色が柔らかいというのもあるが、それを奏でるイレイシアの腕もあるのだろう。音楽的なことはさっぱり解らない悠利達でも、その音がきれいで優しい音だということはよく解った。

やがて、前奏が終わったのか、ニコレットが演奏に合わせて歌い出す。高く澄んだ美しい歌声は、まるでそれが一つの楽器であるかのようだった。声がこれほどまでに美しいのかと、悠利達はそんな風に思う。

高く、低く、音程を行き来しながらも乱れはなく、通りの良い声はその場を満たす。壁に反響して戻る声すらも演奏の技術の一部となっているのか、エコーのように響くそれを含めて、音楽が調和している。

そんな中、演奏に耳を傾けていた悠利は、ふと何かに誘われるように青い宝玉へ視線を向ける。その傍らで、アリーはずっと宝玉を見つめていた。二人の演奏が宝玉にどんな影響を及ぼすのかを確認しているようだった。

そして悠利の目にというか、【神の瞳】さんのおかげで、何か不思議な光が青い宝玉に向けて注がれているように見えるのだ。薄もやのような、柔らかなスモークのようなその光は、イレイシアとニコレットから放たれている。しかし、目を焼くような強いものではなく、じんわりとした温かさだ。

それが物理的に目に見える光ではないことを悠利は理解した。【神の瞳】が見せる光と、現実で見る光が違うことには慣れている。何せ、赤色で危険を知らせてきたり、青色で必要なものを知らせてきたりするのがデフォルトなのだ。もういい加減、慣れたとも言える。

そして、その柔らかな光が注がれる度に、青い宝玉の色が少しずつ濃くなっていく。もともと美しい宝玉だったが、色あせて見えていた部分にゆっくりゆっくりと色が増えていく。

「なるほど……。歌を通して加護が注がれるというのは、こういうことか……」

悠利の傍らでアリーがそんな風につぶやいた。アリーの発言から、目の前で起きている現象は二人の演奏を通して加護が宝玉に注がれていることなのだと、悠利も理解する。【神の瞳】のおかげで視覚的には見えているが、それが何を意味するのか解らなかったのだ。

もっとも、悠利が「これなんだろう?知りたいな?」とでも強く思っていれば、【神の瞳】は説明文を出してくれただろうが。出来る 技能(スキル) は、持ち主が困っていたら的確に対処してくれるので。

……え?普通の 技能(スキル) はそんなんじゃないと思う?大変今更なことですので、あきらめていただきたい。そもそも【神の瞳】は伝説の 技能(スキル) なので、その段階で普通は通用しないのだ。その上、持ち主の悠利に合わせてアップデートを繰り返しているのだから。

とにかく、歌で加護を注ぐという試みは成功している。それが解れば十分だ。後は、目の前の二人の素敵な演奏を堪能するだけである。細かいことを考えるのは悠利の仕事ではない。

悠利の足下で、ルークスは楽しそうに身体を揺らしていた。音楽の善し悪しなどスライムのルークスには解らないが、目の前の二人が奏でる音楽を気に入っているようだ。リズムに乗るように身体を揺らす姿は、実に愛らしい。

クーレッシュとラジは、音楽の善し悪しは解らないながらも、初めて聞く人魚の歌を楽しんでいた。素人でも上手いのだと解る。というか、音楽的な教養など必要なかった。目の前の二人の演奏が綺麗で心地よいと感じる心があれば、それで十分なのだ。

しばらくして、二人の演奏は終わった。青い宝玉は美しく輝いていた。力が満ちたことを示すように、見事な青一色である。どこにも色あせた部分は見あたらない。

「これで、どうでしょうか……?」

心配そうにイレイシアが悠利達に問いかける。出来ることはやってみたが、彼女には宝玉に加護が移ったのかどうかが解らないのだ。そんなイレイシアに向けて、悠利は満面の笑みを浮かべた。

「バッチリだよ、イレイス。ほら見て、宝玉がすごく綺麗な青色になったよ」

「……あ、本当ですわ。先ほどまでよりもずっと青が深くて、……まるで、海のようです」

みてみてと宝玉を示されて、イレイシアは感動したようにつぶやいた。海に縁のある人魚らしく、青を見て連想するのは海らしい。だが、その言葉が正しいと思えるほどに、目の前の宝玉の青は海の青だった。

ニコレットも異論はないらしく、満足そうな笑みを浮かべて宝玉を見ている。そして、イレイシアに向かって深々とお辞儀をした。

「え、あの、コレットさん……?」

「ありがとうございます、イレイス。貴方のおかげで、私達は救われました」

「そんな、大げさですわ……!」

ニコレットの行動に、イレイシアは慌てたように頭を振った。確かに手助けはしたのだろうが、出来ることをしただけであり、こんな風に大仰に感謝されるようなことではないと言いたげだった。元々イレイシアは控えめな性格をしているので、こんな風に扱われると困ってしまうのだろう。

けれど、実際問題イレイシアはそれだけのことを成したのだ。宝玉の力が失われるということは、湖を維持するのが難しくなるということだ。そうなれば、この湖から流れる川を水源とする周辺の者達が困ることになる。水は大切だ。

ニコレットもそう思っているからこそ、イレイシア相手に一歩も引かない。美女と美少女の間で押し問答がされているのを眺めながら、悠利は隣のアリーに向けて口を開いた。

「アリーさん、あれ、程々のところで止めないとずっとやってるんじゃないですか……?」

「……そうだな」

「でもとりあえず、これで今回の困りごとは解決したってことですよね」

「ひとまずはな」

悠利の言葉に、アリーは若干歯切れの悪い様子だった。無事に解決したのに何で?と言いたげな悠利。その悠利の疑問に答えたのは、クーレッシュだった。

「今回はイレイスが手伝ったから何とかなったけど、また同じことが起きたときにどうするかって話だよ」

「え?」

「どういう周期で宝玉の力がなくなるのかは知らないけどさ。次もイレイスがいるとは限らないだろ」

もしかしたらもの凄く先の話かもしれないし、とクーレッシュが続けた言葉に、悠利はハッとした。言われてみればそうだった。前回はニコレットをダンジョンマスターとして召喚することで事なきを得たようだし、今回はイレイシアの助力で何とかなったが、この次がどうなるかが解らない。そもそも、前回が何年前かも悠利達は聞いていないのだ。

人魚の寿命は、人間とそれほど変わらない。つまりは、順当に考えて次に供給が必要なときにイレイシアはいない。そして、ここは内陸であり、人魚とは縁遠い地域だ。吟遊詩人達はいるかもしれないが、彼らは流れるものである。定住はしない。

そう考えると、まだまだ問題が山積みに思えた。何せ、ここは近隣の水源になっているのだ。維持を目指すのは彼ら側にも利点がある。

そこでアリーは、いつまでもイレイシアと同じ問答を繰り返しているニコレットに声をかけた。

「ニコレット、一つ提案がある」

「……なんでしょうか?」

「今回の件の詳細を冒険者ギルドに報告し、国にも情報を上げても良いだろうか」

「……何故、そのようなことを?」

「次のためだ」

ダンジョンマスターであるニコレットは、警戒するような表情を見せた。今回は同族であるイレイシアを頼って助力を求めたが、そもそもダンジョンと冒険者ギルドは相入れない。基本的には。

彼女の中の常識もそうなのだろう。自分達の敵に回る可能性がある現実をどこかで考えているのかもしれない。

しかし、アリーの認識は違う。悠利達の認識も違う。何せ、この国には前例がある。二つも。

「冒険者ギルドの上層部と国に話を通しておくことで、定期的に巡回を頼むことが出来る。そして、そのときに宝玉に異変があるならば、伝手で人魚を呼ぶことも可能だろう」

「……そんなことが可能なのですか?」

「ここが人間に友好的なダンジョンであり続けるなら、可能だ」

まだ少しばかりいぶかしげなニコレットに、アリーは苦虫を噛み潰したような顔でこう告げた。

「既に前例が二つある。収穫の箱庭のダンジョンマスターは『色んな人がたくさん来てくれると嬉しい』という理由でダンジョンを農園のようにして、近隣の住民が普通に来訪している。数多の歓待場のダンジョンマスターは客を呼ぶためにダンジョン内に宿屋を作り、日夜もてなしの方法を考えている」

「……ぇ、は、……え?」

「言いたいことは解る。だが、今重要なのは、この国には既にそういうダンジョンが二つあるということだ。友好的を通り越して普通に協力関係にある」

「…………ぇ?」

アリーの説明を聞いて、ニコレットは困惑したまま固まっていた。きっと衝撃が強すぎたのだろう。無理もない、とイレイシア達は思った。ダンジョンマスターの言動としては思いっきりアレすぎるのだから。

しかし、悠利とルークスは違った。どちらのダンジョンマスターともお友達な一人と一匹は、仲良しってよいことだよねーぐらいのノリだった。まぁ、彼らの一般常識が欠如しているのは今更である。

とりあえず、アリーは根気よくニコレットに説明を繰り返していた。このダンジョンは水源として周囲の役に立っているので、理由を説明すれば王国と協力体制が取れる。それならば、自分達も心配せずに立ち去れる、と。

イレイシアも横から、そういうダンジョンがあることに太鼓判を押し、ニコレットの背中を押していた。この少しの間でアリーもイレイシアも真面目な性格で、決して冗談でこんなことを言うわけはないと理解していたニコレットは、徐々に二人の話を受け入れているようだった。

その姿を見ながら、ラジとクーレッシュはひょいっと肩をすくめた。

「まぁ、そういう反応になるよな」

「そりゃなぁ……。冷静に考えて、収穫の箱庭と数多の歓待場が規格外なんだけどさ」

「……規格外というか、……例外中の例外……?」

「そんな感じだよな」

あのレベルで変なダンジョンは他にはないだろ、と二人がつぶやくのを聞いて、悠利はそっと目をそらした。お友達が作っている楽しい楽しいダンジョンだが、普通のダンジョンとは違うというのは悠利にも解っていた。なので、ここでフォローは出来ない。

ただ、あのレベルまではいかずとも、付かず離れずで協力関係が結べれば良いなと悠利は思った。お互いのためである。

話し合いの結果、ニコレットはアリーの提案を受け入れた。このダンジョンを無理なく維持していくのが、ダンジョンマスターである彼女の役目だ。ダンジョンコアも異論はなかったらしく、冒険者ギルドの上層部と王国に今回の件も含めて話が通されることになったのだった。

「良かったですね、コレットさん」

「えぇ、そうですね。これで、未来の心配もなくなりましたし」

こんな方法があるとは思いませんでしたが、とニコレットが続けた言葉に、悠利はあははと笑った。世の中には色々な解決方法があるのだ。誰も困らないのだから、問題はない。

そんなわけで無事にダンジョンの困りごとも解決し、未来の心配事も華麗に回避するのでありました。仲良しは良いことです。