軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

211話 一飛びでした!?

「こんなでっかいのが浮かぶなんて……」

メッテは甲板から遠くなるフェンデルを見て言った。

今俺は、飛行艇の上にいる。

俺たちは魔王軍がやってこない一か月の間、二重の甲板、三本の船柱、四枚の翼を備えた巨大な飛行艇を作っていた。

下甲板は倉庫や船室となっていて、百人が寝泊まりできる。海上で使う船なら、一か月以上は航海できる大きさはある。

こんな大きな船が空を飛ぶなんて……俺自身も言葉がでないほど驚いている。

「本当に飛ぶんだな……さすが、ドワーフ」

「何を言っておるのじゃ! 船体にしろ翼にしろ、ヨシュアがすべて作ったのじゃから飛べるに決まっておるじゃろう!」

ユミルは舵を操りながら言った。

「そういう問題じゃない。部品作るだけならできるけど、仕組みは……そもそも、アスハやノワ族や、風魔法を使えるやつがいないとな」

船体の組み立てや艤装の段階では、ゴーレムや鬼人たちの腕力で助けられた。高い所の作業はやはり天狗の独擅場だったし、他の種族たちも力を貸してくれた。

イリアが言う。

「王都で見た、あの風を送る道具。あれが役に立ちそうな気もしますね」

「魔導具か。俺も紫鉄と魔石で試したが」

とても紫鉄に宿った魔力だけでは、船を浮かばせる風は作れなかった。

メルクが訊ねてくる。

「もっと魔力を集められない?」

「素材にもよるけど、さすがにアスハやメルクが集められる魔力には敵わない……魔導具に関しては、魔王領のほうが技術が進んでいるから、まだまだ試行錯誤できると思うけど」

あるいは魔王領から魔導具の技術を教えてもらえれば分からないが……

しかしメルクはこう答える。

「メルクたちがいれば、大丈夫。人間や魔物がこれを作ったら悪用する」

「メルクさん、ヨシュア様の前で失礼ですよ」

アスハはそう言うが、確かにこんなものを人間や魔物がポンポンと作れば、戦争の在り方は今ともっと変わるだろう。

「これは、あくまで俺たちだけの乗り物にしておこう……」

俺の言葉に、イリアは何かに気が付いたのか訊ねてくる。

「そういえば……王都にこの船で乗り込んでも大丈夫なのでしょうか?」

「さすがに王国の貴族も警戒するだろう。だから、少し離れた森で下りるんだ。まあ、どの道、人里が近くなったらハイドをかけていく感じになるかな」

この飛行艇は普通の帆船にもなるが、風車や翼を見せたまま王都の河港には入れない。

あくまでも、飛行艇は俺たち……そして甲板から唖然とした顔で地上を見ているソルムだけの秘密だ。

「よ、ヨシュア殿、これは……ああ、もう、ヴァースブルグを通り過ぎてしまいましたぞ!?」

まだフェンデルを経って十分も経ってない。

いや、それ以上にソルムはこんな巨大な船が浮かぶなんてと驚いているのだろう。

ソルムがここまで驚愕するのは俺も始めて見た。まあ、普通の人間が見ればこうなる。

「だから言っただろう? 数日なら、ヴァースブルグを空けても大丈夫だって……いや、この分なら明日には着くかもしれないな」

以前は、陸路で一か月かけて王都へ行ったが……

空からなら森など地形によって迂回する必要がないので、まっすぐに進める。飛行艇自体の速度が馬以上というのも、速さの原因だろう。

ソルムは額から汗を流して呟く。

「先ほどの会話は聞いてましたが、本当にこれは秘密にしたほうがよろしいですね……もちろん、私も誰にも口外しません。ですが、イーリスには」

「どうやってこんなに早く着いたのかって聞かれるだろうからな……そこは正直に話すつもりだ」

「イーリスなら内緒にしてくれるでしょう。それに、ヨシュア殿の心配事にも耳を傾けてくれるはずです」

「イーリスも思うところがあって、俺やソルムに伝えてくれたんだろうからな」

きっとそうでしょうとソルムは頷く。

杞憂かもしれない……だが、皇帝が突如南方へ兵を出すようになったのには、何かしら理由があるはずだ。

状況にもよるが……この飛行艇なら、帝都までも数日かからないはずだ。直接、帝都へ行くのもいいかもしれない。

「とりあえずは、イーリスと話すとしよう」

俺たちは飛行艇で王都を目指すのだった。