作品タイトル不明
155話 死霊術師でした!?
紫色の光が見えたのと同時に、仮面の男ヨモツには、二本の矢が迫っていた。
イリアとメッテはすでに矢を放っていたのだ。
ヨモツはその矢にもう片方の手を向け、防いだ。
「ふむ……キュウビが手を付けなかったのは頷けるな」
奴も俺と同じように、マジックシールドを使うようだ。魔法が使えると見て間違いない。
「こちらも全力でかからなければなるまい──出でよ……骸龍!」
紫色の光が弾けると、突如周囲のスケルトンの骨が空へと舞い上がる。
それは竜巻のように集まっていき、やがては一塊となった。
「あれは……スケルトンドラゴンか!?」
空に現れたのは、骨のドラゴンだった。
竜が白骨化したのではなく、骨が集まってあの形になっている。そのため、スケルトンドラゴンと言えるかは不明だ。
ヨモツもまた、首を横に振った。
「スケルトンドラゴンではない。骸装竜だ」
「 骸装(がいそう) 竜?」
「これは、我が骸装術で生み出された竜。驚くのはまだ早いぞ……骸装!!」
そう言うと、周囲の骨がまた一か所に集まり始まる。向かっていったのは、屋根上のヨモツの方向だった。
ヨモツの周囲に骨が集まると、やがてそれは巨大な鎧のような形となる。鎧だけでなく、剣も骨のようだ。
また、周囲の骨は、再びスケルトンとして蘇っていった。たちまち、数百のスケルトンに俺たちは囲まれてしまう。
人の背丈の倍の高さの鎧を着るヨモツに俺は、
「見たことも聞いたこともない死霊術だな」
「人の使う死霊術とは同じにしてもらいたくないな。これは魔王様が直々に考案された、骸術だ。骸装は、より多くの魔力を纏うことができる」
ヨモツはそういって、屋根の上から地上へ飛び降りた。
同時に、骸装竜も下りてきた。
未知の相手に、未知の魔法。
不死者を召喚するというよりは、不死者を作るのに特化した魔法なのかもしれない。
となれば、粉砕してもその場所が骨で埋められる可能性がある。ゴーレムが岩で負傷した場所を修復するように。その上、ヨモツの話では魔力が増加するらしい。
スケルトンも、通常の死霊術で作られたわけではないか。となれば、ヨモツを殺すのは少し考えたほうがいいか。殺しても、スケルトンたちは動きを止めない可能性は高い。
ともかく俺は、皆に作戦を出す。
「メッテ。あの竜の相手をできるか?」
「任せとけ。私の金棒で、あんなのは一発だ」
「心強いな。でも、まずは敵の戦い方を探ってくれ。イリアはヨモツのほうを頼む。できれば、生け捕りにしたい」
「かしこまりました」
イリアは刀を抜いて言った。
「後の皆は、周囲のスケルトンを倒しながら二人の支援をするぞ。まずは防衛だ」
「出方を窺う?」
メルクの声に俺は「その通りだ」と答えた。
「ふむ。ならば、こちらから仕掛けさせてもらうぞ!」
ヨモツがそう言うと、骸装竜が地響きを立てながら、こちらに突っ込んでくる。
「私も人のことを言えないが、猪武者だな!」
メッテも金棒を振りかぶり、一気に骸装竜に走った。
骸装竜は、その巨大な腕を振り上げる。
メッテは脇から金棒を振りかぶった。
「うぉおおおおお!!」
まるでメッテの叫びで砕かれたように、骸装竜は一撃で粉砕された。
骨粉が、神殿へと吹き飛ばされていく。粉はまた竜の形に戻るが、メッテによって再び粉砕された。しかし、また竜の形に戻って……を繰り返す。
「……ちっ! 全く倒せないぞ!」
メッテは声を上げる。
一方のヨモツは声を震わせていた。
「なんと……あの大きさの個体が一方的に──ぬっ!」
ヨモツはすぐに後方を振り返る。
そこにはすでに刀を振り上げていた。イリアが。
「──っ!?」
すぐにヨモツはその場を離れた。
しかし、ヨモツを覆っていた骨のほとんどが、剥がれ落ちてしまっている。目にも留まらぬ速さでイリアに斬られたようだ。
ヨモツは再び骨を纏わせるが、休む間もなくすぐにその場を動く。イリアがすぐに迫り、骨を断ってくるからだ。
「く! 本当に油断ならんな! 我が骸装さえもこうも簡単に斬られてしまうとは!?」
「ヨシュア様の作ってくださった刀に斬れないものはありません!」
ヨモツは、イリアの斬撃を骨の剣で防ぐが、全く修復が追い付いていない。新しい骨の剣を作り、駄目になったらそれに持ち変えている感じだ。
また、なんとか骸装竜のほうも修復させるが、こちらもメッテに倒されるたびに小さな竜になっていく
加えて、俺たちも周囲のスケルトンを倒していった。
ほとんどはアスハが風魔法で寄せ付けないといった感じで、取り零した者をイーリスが剣で、メルクは魔法で倒している感じだ。
しかし、ヨモツはそのスケルトンをすぐに復活させる。
「くっ、また復活した」
イーリスは盾を構えながら言った。顔も髪もすでに汗まみれだ。
「このまま堂々巡り……というわけにはいかないな、俺たちは奴らと違って疲労を感じる」
「どうする? やっぱりあのヨモツを倒すしかないと思うけど……」
イーリスの言う通り、ヨモツをなんとかするしかない。
だが、誰もヨモツと戦うイリアを助ける余裕がないというのが現状だ。
しかももっと悪いことに、広場のほうからもスケルトンの増援がやってきている。
「ざっと千体はいるか。さすがにあの数が来ると……いや、あれがあった」
俺は魔法工房に持ち込んだ物を思い出す。ユミルたちドワーフが作った爆弾だ。
「アスハ! これに火を点けて、スケルトンに!」
「かしこまりました!!」
アスハは俺から爆弾を受取ると、それを少し離れたスケルトンの密集する場所に投げ入れた。
ドカンという音が響きスケルトンが吹き飛んでいく。
減っていくスケルトンの数に対し、ヨモツがスケルトンを復活させる数は追いついていない。
やがて、メッテが骸装竜を完全に粉砕すると、イリアの救援に向かった。
「イリア様!」
「任せました!」
イリアとメッテは、ヨモツの前後から一斉に走る。
そしてヨモツの右をイリアが、左をメッテが通り過ぎた。
刹那、ヨモツの骸装が完全に崩れ落ちる。
メッテが棍棒で粉砕したのだ。
一方、イリアの手には縄が握られていた。その縄は、ヨモツの胴体をぐるりと巻き付けている。
「くっ!」
「確保!」
すぐにメッテが、ヨモツを押し倒した。
そのままイリアの縄を使い、手足を縛りあげる。
スケルトンが何とかヨモツを救援しようとするが、俺たちがそれを食い止めた。スケルトンはヨモツが動けないからか、復活できないようだ。
「スケルトンも全滅させたな……」
こうして俺たちはヨモツを捕らえる事ができた。