軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

149話 逃げ出しました!?

「待ちなさい! 何の権限で、こんなことをしているの!?」

イーリスは地下水道に降りるなり、そう答えた。

船のほうを見ると、武器を構えた船上のフェンデル勢と、歩道で紫色のサーコートを着た近衛騎士たちが睨み合いとなっていた。

イリアが刀の柄に手をかけるが、俺は手を伸ばしそれを止めた。ここは、イーリスに任せてみる。

近衛騎士の一人がイーリスに向かって言う。

「待ちに待った船です! これを使い、王には外国へ逃げていただく!」

「それは、彼らの船だわ!」

「亜人に船など過ぎた物! 我らが使うべきです!」

「話にならない! それに、彼らは神殿を奪還するために来てくれたのよ! もう数日だけ待てば王都は解放されるかもしれないのに!」

「馬鹿な! あの数のスケルトンに、とても勝つことなんて無理だ! あの不死の軍団はやがて大陸中を覆うでしょう!」

「なら、なおさらどこに逃げるって言うの!? こんな状況で、国民のいない王なんて考えられる!?」

双方一歩も退かない雰囲気だ。

確かにあの数のアンデッドを見て、勝てるとは到底思えない。

俺は折衷案を出すことにした。

「まあ、待て。船が欲しいんだな? それなら、資材さえくれれば俺が作るよ」

「な、なんだと?」

「王が乗る船なんだろ? もっと大きなものをつくる」

「何を馬鹿な! 船を造るのにどれだけ時間が」

「俺は生産魔法師だ。すぐに作れる。資材の場所へ案内してくれ」

「生産魔法師……」

近衛兵たちは俺の提案を考えるように、ひそひそと話し始める。

「ど、どれぐらいでできる!?」

「お前たちが引っ越し準備に必要な数時間の内には必ず」

「……来い!」

近衛兵たちはそうして、俺たちの船から離れ、宮殿に向かう階段を上がっていく。

俺は船にいるメッテたちに手を振って、近衛兵についていった。

隣を歩くイーリスが言う。

「い、いいの? ヨシュア?」

「もちろん。民衆の信頼を失っても、俺には直せないが……イーリスはどうするんだ?」

「私は何と言おうと、ここに残る。ヨシュアたちの作戦にももちろん参加する」

「そうか。なら、心配ないな」

「何がだ?」

「別に」

その場に一人でも指導者がいれば問題はない。

近衛兵が進む先は、宮殿の内側だった。

こんな状況でもよく手入れされた庭園。避難民は一人も入ってはいけないようで、だだっ広い空間が広がっている。

奥では、優雅にお茶を飲む王冠の男と、複数のドレスの女性がいた。

あれがトレア王……こんな時に、何をやっているんだ。

俺は憤りを感じながらも、近衛兵に案内された場所に行くと資材を回収した。

皆、一瞬にして資材が消えたことに驚いていたが、すぐに荷造りに向かった。

そうして地下水道から川岸へ向かいそれなりの帆船を作ってあげた。ご丁寧に、船尾と帆柱の頂点に大きな旗をつけて。

「できたぞ。後は自由にすればいい」

「お、おお。早く乗り込め! 陛下とご家族、後は近衛兵で乗り込む!」

近衛兵たちは一斉に船に荷物を運び込んだ。

そんな中、イーリスが王冠を被った男に声をかける。いかにも国王といった風貌の男に。

「あ、兄上! まさか、その格好で堂々とこられたのですか!?」

「な、何がいかん!? 一刻も早く、ここから脱出するのじゃ!」

「兄上が金ぴかな恰好で出ていくところを見れば、民衆は失望します! なぜ、そんな気持ちも分からないのですか?」

「うるさい! どのみちここにいる者は皆死ぬのじゃ、そんなことはどうでもいい! お前も乗せて欲しいなら乗せてやるぞ?」

「……っ! お断りします」

「ああ、そうか! なら、先にあの世に行って待っているがよい!」

そういってトレア王は、船に駆け込んでいった。

兵士と民衆は、城壁の上からそれを見送る。俺たちを見捨てていくのかと怒声を上げたりする者もいれば、冷めた視線を送る者もいた。

それから王と近衛兵を乗せた船は、川を北に進んでいった。