軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

142話 お揃いでした!

「なかなか格好いい」

メルクは自身の羽織るサーコートを見て言った。

フード付きのマントには、白地にいくつかの星が連なる紋章が描かれている。

これはフェンデル騎士団の制服だ。

道中、亜人と思われ余計なトラブルを生まないよう、俺はこういった体のほとんどを覆える装備を作った。耳や尾を隠せれば、基本的には人間と変わらなくなる。

実際に街道では幾度となく避難民と思しき者たちとすれ違ってきたが、怪しまれることはなかった。

「皆も今日もお揃い。なんだか面白い」

メルクは、馬車の荷台に乗るメッテたちを見て言った。

今回の遠征に参加した者たちは、総勢百人。

主だった者としては、イリア、メッテ、メルク、エクレシア、ユミル、アスハ、セレス、モニカ、エナがいる。

この場にいない種族は、ベルドスらミノタウロスたちだけだ。

ベルドスは自分たちの見た目では人間を怖がらせるだろうと、フェンデルに残ってくれることになった。

確かに亜人は亜人でも、ミノタウロスはあまり人間に知られていない。巨躯なので魔物に間違えられる可能性もあった。

もっとも、避難民には他人を気にしているような余裕はない。

皆が行く当てもなく、俯きながら道を辿っていくだけだ。

俺たちはそんな道行く人々に、ヴァースブルグのことを伝えた。ヴァースブルグなら、受け入れてくれると。

もちろん、ヴァースブルグも承知している。

というよりは、彼から頼まれたことだ。

フェンデルを去った後、俺はソルムにトレアに向かうことを告げた。

ソルムはどこかホッとしたような顔で俺に頭を下げると、避難民がいればヴァースブルグの存在を教えて伝えてほしいと言った。

ヴァースブルグに避難民を迎え入れたいと。

俺たちも当然、ソルムたちを支援する。

フェンデル同盟からは、海の魚を中心に食料をヴァースブルグに供給することになっている。

避難民たちは、藁にもすがる思いで南へと向かっていった。

他には、避難民でも怪我をした人は癒したり、飢えている人には食料を提供したりして北方はトレアに進んだ。

そんなこんなで二週間、ようやく俺たちはトレアの国土に足を踏み入れた。

まずは小高い山に上がり、そこからトレアを眺めてみる。

自然と人里とが調和する風光明媚な光景が広がっている……しかし、至る場所から煙が立ち上っていた。

「これは……」

街や村が燃えている。

各所で人間が手荷物だけで四方に向かっていた。

隣のイリアはそれを見て、顔を暗くする。

「とても荒れ果てていますね……でも、あそこの街は」

イリアが指す先には、火の立っていない城壁に囲まれた街があった。

しかし、城門には豆のように見えるたくさんの人間が溢れており、街の外には掘っ立て小屋がテントが立っていた。

「あそこはまだ安全なんだろう……一度、あそこに立ち寄って情報を手に入れてくるか」

「では、皆をあの近くに待機させます」

「ああ、頼む」

こうして俺たちは、まだ襲撃されてない街へと向かった。

騎士団に街の近くで野営の準備をさせると、俺はイリアとメルクと共に街の城門へと歩いていく。

案の定、城門では出る人と入る人とで大渋滞が起きていた。

せいぜい、三千人ぐらいの町なのに、その周囲には一万人以上の人間がいるのだから仕方ない。

「これじゃあ、入れそうもないな」

「城壁を上がる?」

メルクはそう言うが、城壁をよじ登るのもいらぬ誤解を生む。

「いや、時間をかけてもいいから、正面から行こう……うん?」

列に並んで順番に入ろうとしたが、俺は列にむけて声をかける者に気が付く。

「皆の者、落ち着け! 中には何があるわけでもない!」

「あれは……ヴィンスさんか」

ヴァースブルグに信者を伴いやってきていた南方神殿の神官長だ。

洗脳されていて南方に何とか向かおうとしているところを、俺たちが正気を取り戻させた。

ヴィンスは俺に気が付くと、あわてて歩み寄ってくる。

「あなたは、ヨシュア殿! 何故、ここに?」

「ソルムから手紙のことを聞いたんです。私たちにも何かお力になれないかなと」

「そ、そうだったか。大変ありがたいが、あなた方三人ではとてもこの状況は……」

「数万人が避難民となっている……いずれは食料すらも不足する、そうですね」

「ああ……全て、我らのせいだ」

後悔するようにヴィンスは言う。

「我らが南方へ向かっている隙に、手薄となった王都の神殿の墓地に何かがあったようなのだ」

「つまり、王都の神殿からアンデッドが湧き出ていると?」

「そういうことだ。あそこには、数十万という遺体が眠っていた。それがどういうわけか、アンデッドとして蘇ったようだ」

「なるほど……では、そこを何とかすれば、アンデッドはひとまず出てこなくなる」

「ああ。だが王都の騎士や兵士が向かっても、どうにもできなかった。今や王都は地獄だ……」

「……ともかく、私たちもできることはやります。早速、家を造らせてください。武器も必要なら作ります」

「本当か? それはありがたい……食料はないが、資材ならいくらでもある。どうかそれを使ってくれ」

ヴィンスはそう言うと、再び民衆をなだめに戻った。

イリアが呟く。

「とても後悔されているようでしたね」

「ああ。それに、もうどうにもならないと諦めているようにも見えた……王都はそれほどまでに厳しい状況なのかもしれないな」

俺はイリアとメルクに向かって言う。

「早速王都に向かいたいが、まずはこの街でできることやろう。俺が避難民のために家や道具を作る。イリアたちは、近くから物資を集めてきてくれるか」

二人は首を縦に振ってくれた。

その後、俺は街の周辺で家を造ったり、武器を作る事にした。