軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第94話】ゼッタの大戦⑨ 初日の夜

「リュゼル、お疲れさま! 無事でよかった」

陽が沈んでから砦に戻ってきたリュゼルを迎えた僕ら。

「ああ。こちらの被害はほとんどない。流石ニーズホック様の指揮だ。貴重な体験をした」

そのように言うリュゼルは、疲労の色が見えつつも満足げな表情をしていた。

直後に「あら、まだ初日よ。これからもこき使ってあげるから覚悟しておきなさい」とのホックさんの言葉に背筋を伸ばす。

「ホックさんもお疲れ様でした。ありがとうございます」

「まぁ、今日はこんなものよね、砦の方の被害は?」

「全くないとは言えませんが、想定内に抑えられたと言えそうです」

負傷者を含めて初日の戦闘不能者は200人程度。かなり少ないと思う。

「ふうん。でも気を抜いちゃダメよ、ちょっと気になることがあるもの」

「ローデライトですね?」

僕の答えに満足げに頷くホックさん。

初日の被害が少なかった大きな理由が、ローデライトにあった。5000の兵を率いて東の城門へと回り込んだローデライトの動きは、なぜか鈍かった。言い換えればやる気がないようにみえた。

一応無理にでも理由をつけるとすれば、ルデク側の城門に回ったローデライトは、あくまでルデクからの援軍に対応するための兵とも考えられる。

ただ、”あの”ローデライトである。戦場で誰よりも目立ちたがる男が、そのような地味な任務を大人しく任されるものだろうか。むしろそんな任務であれば、命令を無視して嬉々として裏から攻めてきそうなものだ。

それだけに静かなローデライトというのは不気味だ。それはローデライトとの対戦経験の多い第四騎士団や、第二騎士団の騎士団長であれば余計に感じられるのだろう。

ボルドラス様もホックさんが戻ってきたらローデライトの件に関して、軍議を開きたいと言っていた。

「軍議ね、じゃあさっそく始めましょうか?」

「え? 少しは休んでからの方が、、、、」

「この程度で疲れたなんて言っていたら、第二騎士団にはいられないわよ? 懸念は早めに潰しておいた方が良いわ。始めましょう」と、さっさと中央棟へ歩みを進めるのだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「夜襲ですな」

「夜襲ね」

軍議のために主だった将官が集まると、ボルドラス様とホックさんは開口一番そう言った。

「夜襲ですか? 兵力差があって士気も高い初日の昼のうちは動かずに? わざわざ?」ウィックハルトが首を傾げる。

「語弊のある言い方をすれば、ローデライトという将は自分が目立てばなんでも良いのです。あの男が大人しくしていたというのは、おそらく兵力を温存したのでしょう。夜、動くために」

「アタシも同意見ね。何をしようとしているのか分からないけれど、今晩、ローデライトが何か仕掛けてくる可能性は高いわ」

「問題は、何を仕掛けてくるか、ですが。守備側が寝静まってから強攻、それとも早朝、払暁を待つか、今この直後か」

「まず、払暁はないわね。あの男にそんな辛抱強さはないわ」

「そうですな。やはり危険なのはそろそろかと」

ローデライト、まあまあの言われようである。一応あれでもゴルベルで最も有名な将のはずなのだけど。

「夜襲が来ると分かっていて、時間も読めているのなら、そこまで深刻でないのでは?」再び問うウィックハルトにその場にいる第四騎士団の将官全てが首を振る。

「それでも厄介なのがローデライトなの。三流なのか一流なのか分からないから怖いのよ。戦場でいつも良いところにいて、目立つのに、最後でやらかすのよねぇ」

「ともかく、皆にはすまんがもう一仕事だ。ローデライトも一度攻め寄せれば流石に今日は大人しくするだろう。交代で休憩を入れつつ、警戒してもらう」

そんな風に話がまとまった矢先である。僕らの集まっている部屋に兵士が駆け込んできた。

「所属不明の一軍がこちらに攻め寄せてきております!」

あ、知ってます。それ、ローデライト軍です。

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攻め寄せたローデライトは昼間の5000を連れての襲来であった。

ローデライトは暗闇で兵数を確認し難いのを良いことに、城門のない南北にも仕掛けてくる。長梯子がかかったり、火矢が打ち込まれたりするたびに城壁の兵たちは振り回されるが、攻め口に向かってみても誰もいない。

その頃には城門や別の場所で攻撃が始まる。

周辺の攻撃はハッタリと見做し、城門の守りに注力した直後に、北側の城壁から敵兵が駆け上がってくる。慌てて兵士を追い落とそうとすると、暗闇から強力な矢が襲いかかってくるので、精神的な疲労も大きくなる。

この緩急の動かし方が恐ろしくうまい。これがローデライトの戦い方か。なるほど、これは厄介だ。

いや、感心している場合ではない。さらに厄介なのは戦闘時間の長さ。守勢一辺倒のこちらはローデライト軍に大きな打撃を与えづらいだけに、長時間の攻めに耐えなければならなかった。

いっそこちらは騎馬隊で対抗を、と考えても、なかなか日中のようにはいかない。東の城門を開けたところで敵が殺到してくる可能性がある。敵兵の動きが夜の帳の中に隠され、思い切った手が打てない。

それでも時間が深夜を過ぎた頃、ローデライト軍はようやく退いていった。

日中の防衛戦の、倍の被害を僕らに残して。