軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第85話】隊旗を考えよう。

「はぁ〜、どうしよう、、、、」

王の元から解放された僕は、第10騎士団の詰所の近くの広場の隅にいた。

僕がため息をついているのはロア隊の隊旗のことだ。今日中に決めてネルフィアに伝えないとならない。正直ウラル王子との演習よりもよほど難題だ。

最初は部屋で白い紙と睨めっこしていたけれど、全く何も思いつかなかったので外に出てきたというわけ。

僕の横ではルファがその辺に転がっていた棒で、地面にさまざまな絵を描いている。地面にお絵描きして喜ぶ年ではないと思うけれど、何かのスイッチが入ってしまったようで、一心不乱にさまざまな絵を描きまくっている。

ここまでは良い。僕もルファの絵は大変参考になる。何かのきっかけになるかもしれない。

そう、ここまでは良いのだ。

「ゼランド王子、、、、何してるんですか?」

僕らが訓練場の隅でうんうんと唸っていると、どこから嗅ぎつけたのか、ゼランド王子がやってきた。

そしてルファ画伯が地面に次々に描く絵を、興味深そうに眺めているのである。

「父上にはちゃんと許可を取ってきました! 本日はもう自由時間で良いそうです!」

そう。よかったね。じゃあ他にもっと楽しいことがあると思うけれど、、、、とは流石に言えない。

ルファはルファでゼランド王子の相手をすることもなく、黙々と地面に絵を描き続ける。どういう状況だ、これ?

いや、ゼランド王子にかまけている場合ではない。隊旗を考えないといけないのだ。

ルファの絵の中には、三つ星に牡牛の絵もある。ルファが養子となった、ザックハート様のローデル家の紋章だ。ザックハート様はこの紋章から1つ星を減らしたデザインを隊旗としている。

家の紋章がある場合は、それを少し変えるパターンが多いらしい。あとは自分が好む武器をあしらったり、好きな動物と植物の組み合わせが定番。

「ロア殿、四つ目の獅子を使ってはどうですか?」

ゼランド王子が無邪気に提案してくれるけれど、それ、絶対に使っちゃダメなやつだからね? 王族の紋章のやつ。怒られるだけじゃ済まされないよ?

「そうですか、、、しかし、隊旗には動物がいた方がかっこいいです」

「動物か、、、確かに、僕は得意な武器があるわけじゃないし、紋章がある家柄でもないから、それが無難だと思うけれど、、、、」

では、どんな動物が良いか。ここが悩ましい。

身近な動物、、、、今なら間違いなく馬だ。アロウもいるし、そもそも僕らロア隊は騎馬隊。一番適当な気がする。と、同時に一番揉める気がする。

なにぶん当中隊には馬への愛が深い部隊長が2人いる。馬を隊旗にするのはすぐに賛成してくれるだろうけれど、そこからは間違いなく口を出してくるし、結論が出ないのは目に見えていた。隊旗が決まる前にルデクが滅びそうだ。

では生まれ故郷の身近な動物、、、、魚ならたくさんいたなぁ。それと鴎か。鴎は内陸だと見ないからなぁ。なんかちょっと違う気がする。

ルファの落書きの中には、猫やウサギ、子豚などもある。ウサギはラピリア様と被るから無し。猫かぁ、悪くないけれど、可愛すぎる気がする。

「これは、何?」落書きの中の見慣れぬ動物にゼランド王子が興味を示した。

「モグラ」ルファは落書きに夢中でまぁまぁの塩対応。それでもゼランド王子は「モグラとはどんな生き物でしょう」と嬉しそうにルファに話しかけている。

、、、、んん? ルファ、随分とゼランド王子に気に入られたみたいだな。

まぁいいや。それよりも隊旗だ。

と、そこまでずっと動いていたルファの手が不意に止まると、こちらを向いて「ロア、ロア隊は鳥がいいと思う」と口にする。

ルファの足元に鳥はひとつも描かれていない。急にどうしたの?

聞いて返ってきた答は「なんとなく」だ。そうか。なんとなく、か。

「なるほど、鳥ですか? それは良いですね!」とゼランド王子が賛成の声をあげるけれど、君、多分ルファが選んだやつならなんでもいいでしょ?

「鳥、、、鳥ね、、、今の季節だと白鳥とか? 鴨?」

「ロア殿、ムクドリなども見かけますね」

僕とゼランド王子が冬に見かける鳥の名前をあげていると、ルファが不思議そうな顔をする。

「冬の鳥っていえば、つばめじゃないの?」

「つばめ? あれは、もっと暖かい頃の鳥じゃないの? ほら、夏頃によく子育てしてるでしょ?」

僕の言葉にルファがまた首を傾げた。

話が噛み合わないので擦り合わせてみると、どうもつばめは冬は南の大陸に、夏は北の大陸にいる鳥らしい。確かに冬は見かけたことがない。

つばめ、、、つばめか。そういえば、つばめが巣を作る家は縁起がいいって迷信がなかったっけ? なんか、安全な場所だから巣を作るとか?

うん。悪くない気がする。

「、、、、つばめにしようか?」僕は口に出してみる。

「いいと思う!」ルファが気に入れば、もうゼランド王子の意見はいらないな。

「つばめだけでは少し寂しい気がしますね。せっかくですから、何か植物を足してはいかがですか? 例えば智慧の象徴であるオリーブとかどうですか?」

ゼランド王子の言葉も一理あるけど、智慧の象徴は気恥ずかしい。

「悪くないけれど、、、、」

「、、、、月は?」ルファが三つ星に牡牛の絵を指差した。

月、、、、月とつばめ。関係のなさそうな組み合わせだけど、面白いかもしれない。

「満月ですか? 三日月ですか?」ゼランド王子がルファに聞く。

「どっちがいいと思う?」逆に聞き返されたゼランド王子は少し考えてから

「、、、、三日月ですかね? 三日月の中をつばめが飛んでいる、みたいな?」

ゼランド王子、それ、採用。

ざっくりとしたデザインが決まれば、あとはネルフィアの方で何とかしてくれるだろう。

こうしてロア隊の隊旗は、『三日月につばめ』に決まったのである。