軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第57話】入団式模擬戦⑥ レイズ=シュタインの一手

「さて、まずはご苦労だった。座ってくつろいでくれ」

東軍の本陣だった陣幕内で、レイズ様に労われた僕。

「はい。お疲れ様でした」僕が座るや否や、レイズ様から早速質問が飛んでくる。

「さて、いくつか聞きたいことがあって来てもらったのだが、まずはあのササールだな。あれは、なんだ」

僕としても当然、ササールについては聞かれると思っていた。

「あれは 長柄槍(ながえやり) という武器で、本来であれば普通の槍の柄を伸ばした物です。今回は作っている時間がなかったので、伸びたササールで代用したんです」

ササールの先には落とした枝や葉っぱなどを布で固めて、穂先がわりに重量を持たせたけれど、後で見たらほとんどが取れて飛び散っていたので、あれは失敗だった。

「長柄槍、、、、どこの国の武器だ」

「南の大陸よりも遠方の国の戦い方の一つです。その国では民も当たり前のように戦闘に駆り出されるそうです」

「民間兵か、、、」

「はい。そのためなるべく遠方から攻撃をして恐怖心を和らげるためと、全く武器を使ったことのない兵士でも単純作業で絶大な効果を得るために生み出されたそうですよ」

「なるほど。理にかなっているな。そうなるとやはり、普段使いには難しいか、、、、」

「そうですねぇ。今回は代用品だったのでなんとも言えませんが、上から叩きつけるだけでもそれなりに体力を消費するようです。それに、そもそも邪魔でかさばります。第10騎士団のように各地を転戦する部隊には向いていないかもしれませんね」

「そうだな、、、、だが、砦などに配備しておけばどうだ? 何かに使える可能性はないか?」

「面白いかもしれませんが、使えるかどうかはなんとも、、、、」

「試しにドリューに話してみるか。何か面白い考えを思いつくかもしれん」

レイズ様は貪欲に長柄槍の実用を考えている。こうしてドリューの発明品も使いこなしてきたのだろう。この姿勢は見習わないと。

少しの間考えに集中していたレイズ様だったけれど、すぐに切り替える。

「長柄槍という武器については分かった。では、用兵について聞きたい。ロアは中央に道ができることを分かっているようだったが、あれはどうやった?」

「ああ、それはーーーー」

僕はグランツ様の癖について話す。別に隠すようなことではない。僕の言葉を聞いたグランツ様は「これは参ったな」と苦笑い。

「癖と言っていいか、結局グランツ様が上手く立ち回ることでラピリア様が自由に動けるようになるので、そこまで悪い話ではないのですが、、、」と僕が補足すると、「、、、、しかし参考になりましたな。心に留めておきましょう」とグランツ様から礼を言われる。

レイズ様は「なるほど、なるほど、、、」と思案気味で、ラピリア様は「あんた、そんな所までよく知っているわね」と呆れ顔だ。

そこまで細かく知っているのは、第10騎士団だからという部分はある。

とにかく目立つ第10騎士団の活躍は一般市民にも人気だ。単なる記録としての書類以外にも、物語として沢山の書物や口伝が出回っている。可能な限り全部見聞きすれば、自然と第10騎士団の動きも見えてくる。

ラピリア様にそのように説明すると余計に呆れられた。

「なるほど、よく分かった。これは私も気をつけよう。そして最後に聞きたいことがある」

「なんでしょうか?」

「なぜ、本陣にある兵を全て投入した?」

「、、、、なぜ、、、ですか? 必ずラピリア様かグランツ様が妨害に入ると思ったので、少しでも有利になればと、、、、」

「考えは分かるが、そうであっても最低限の守備兵は残すべきだった。違うかな?」

普通に考えれば、そうだ。でも、、、、、

「どうせ本陣にいるのは、仮初の大将である自分だから問題ない。とでも考えたか」

「うっ」図星だ。本陣を叩かれたとて、やられるのは僕だ。守備兵はいらないと考えた。

「ロア、ハクシャの時の無茶を聞いた時も思ったが、お前の大きな弱点は、自己評価が非常に低いことだ。ハクシャの出陣も、勝機と勇気のみで出陣したのなら賞賛しよう。だが、お前の場合、そこに”捨て身”の気持ちも多分にあったのではないか?」

「、、、、ありました」

「お前が思っているほど、お前の命は軽くない。お前に期待している者も少なからずいる。今後兵を率いるときは、自分の価値を客観的に見ながら動くようにせよ」

「、、、、、はい。分かりました、、、、レイズ様、僕からも質問して良いですか?」

「何かな?」

「レイズ様はどこまで、僕の作戦を読んでいたんですか? やっぱり全て予想通りだったのでしょうか?」

僕の疑問に一瞬だけキョトンとするレイズ様。それから少し苦笑すると「私は神ではないぞ、ロア」と言って、ラピリア様を見る。代わりに話せ、ということだろう。

「ロアは必ずリュゼルとフレインを切り札にしてくる。2隊の動きに気をつけろ。それだけよ」レイズ様の意図を受けたラピリアの言葉に、僕は「え?」と思わず聞き返してしまう。たったそれだけ?

「そうよ。だから2隊を程よく削ってから、泳がせた。2隊が動くのを見て、私もロアの本陣狙いに切り替えたわ」

「どうして僕が2人を切り札にすると?」

「率いたことのない第六騎士団に、気心の知れた2部隊を付ければ、当然頼りにするだろう。実力もよく分かっているからな」今度はレイズ様が答えてくれる。

「、、、、ってことは、2人を僕の方へ送ってきたのが、そもそも罠?」

「ああ。最初からお前は私の毒を飲んでから戦い始めたというわけだ。尤も、2人は何も知らないが。あとはロアがどんな策を用いようと、あの2隊の動きを中心に考えれば良い。そのようにグランツとラピリアに伝えておいた」

、、、、参った。戦う前から勝敗は決まっていたのか、、、、

「、、、でも、僕が2人を守備として頼りにしたらどうするつもりだったんですか?」

「ハクシャの戦いを見る限り、お前は動くことを好む将だと判断した。強力な手札を持って、手元に抱える可能性はないと思ったまでだ」

「、、、、参りました。完敗です。さすがレイズ様」

「いや、それでもかなり面白いものを見せてもらった。見事だったと言わせてもらおう」

「ありがとうございます、、、、」

いい感じに話がまとまったのに「レイズ様に勝つなんて百年早いのよ!」とラピリア様が混ぜっ返す。

とりあえず無視したら、わざわざ椅子から立ち上がってきて僕の足を蹴る。痛い!

「ひどいですよ! ラピリア様!」

「うるさいわね!」

僕とラピリア様のやりとりを笑いながら見ていたレイズ様と、グランツ様。ラピリア様が自分の席に戻ったところで、レイズ様が表情を改める。

「さて、ここからが本題だ」

「本題?」ここからとはどういう意味だ?

「ロア、お前の部隊を作ろうと思うのだが、どうだ?」

、、、、、はい?