軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第37話】漂流船騒動③ 星回り

僕が占ってもらう事をお断りした結果、ゾディアもさして固執することなく話題は変わる。

それからしばらくして、領主が「すみませんが私はそろそろ休息させていただきます。明日も祭りの手配で忙しいので」と言って中座。気がつけばすでに、翌日を迎えようかという時間だった。

領主に歓待の礼と明日朝には出立する旨を伝え、簡単に別れの挨拶を交わす。領主の退出を潮に「私もそろそろ寝る」と言ってルファも席を立った。

僕はどうしようかなと迷っていると、「もし、宜しければもう少しお付き合いいただけませんか? これからは少し、”お仕事”の話でもいかがです?」と、ゾディアがグラスを傾ける。

踏み込んだ情報交換をしよう、そういう意味だ。

僕はウィックハルトをチラリと見る。それから、「君の話をしても、いいかな?」とウィックハルトに聞くと、ウィックハルトは小さく頷いた。

ウィックハルトの了解を得て、ゾディアに向き直る。

「じゃあ。こちらからお話ししましょう。対価はゴルベルの話、知っているのならある人物の話を聞かせてください」僕が伝えると、ゾディアは少し驚いた顔を見せた。

「構いませんが、、、あの、その前に、ロア様は旅一座との交渉のルールをご存知なのですね? 失礼ですが、、、それは、どこで?」

未来でとある旅一座と同行していたので、とは言えないので、「その情報は高いですよ?」と誤魔化すと、ゾディアはクスリと笑う。

「確かに、対価の必要なお話でしたね。私としたことが、失礼しました」

ゾディアが引いたところで本題へ。

僕は過日のハクシャの戦いの顛末を話した。

「、、、、なるほど。そして、ウィックハルト様はロア様に心酔して忠誠を誓った、と。まるでおとぎ話のようですが、ウィックハルト様の顔を見れば、どうやら本当のようですね。これは面白い話を伺いました。さて、ロア様に対価を払えるような情報があるかどうか、、、」

口では自信のなさそうなことを言っているけれど、表情は全くそんなことを思っていない。

「それじゃあ、サクリという人物のことを聞いたことがありますか? 知っていたらなんでもいいので教えて欲しいのですが」

僕が伝えると、ゾディアは表情を変えぬまま固まった。

「、、、、本当に、貴方様は、何者ですか?」

先ほどよりも余裕のない問いに、僕はなるべく笑顔で答える。

「言ったとおり、その質問は高くつきますよ?」と。

笑顔の睨み合い。

先に音を上げたのはゾディア。

「正直に申し上げて、こちらの国でそのお名前を聞くことがあるとは思っておりませんでした」

「ってことは、何か知っているんですね?」

「、、、ただ、申し訳ありませんが、ロア様から聞いたお話では、こちらの情報の対価として少し不足しているようです」

それもそうか。敵国が隠している軍師だ。実在していることが確認できただけでも十分といえるけれど、ゾディアは何か知っている。それなら聞けるだけの情報は聞き出したい。

ただ、こちらに払えるだけの情報がない、流石に瓶詰めの話をするわけにはいかないし、今回の漂流した船の話もできない。

僕がどうしたものかと思い巡らせていると、ゾディアが口を開く。

「一つ、お願いがございます。それを聞き入れていただけるのであれば、こちらもお話しいたします」

「なんです?」

「ロア様を占わせてはいただけませんか? 貴方様ほどの星回りの方は、そうそう出会うことはございません。いかがですか?」

ゾディア、諦めたと思ったけれど、全然諦めてなかった!

さっきは何となく恐怖を感じて断ったけれど、僕の星回りを見たところで、大したものがあるとは思えない。精々、人よりも多少運がいい程度だろう。燃えさかる王宮から逃げ出せる程度には。

「、、、、分かりました。良いですよ」僕が了解すると、ゾディアは魅力的な笑顔で微笑む。多分、最初からこのつもりだったな。

交渉ごとはゾディアの方が何枚も上手だ。

「では、失礼して」といそいそと準備するのは、八角形に削られた水晶。それが鎖に繋がれてゆらゆらと揺れている。

「ロア様はそのまま。あるがままにいてください」

あるがままとか言われると、逆になんだか緊張してぎこちなくなるのだけど。

僕の気持ちはゾディアに伝わることはなかった。ゾディアは真剣そのもので水晶を見つめている。

「、、、、こんなことが、、、、」

ゾディアの呟きが、静まった室内に妙に響いた。

何だか少し不安になってきた。

「あの、、、」

「あ、すみません。決して悪い意味ではないのです。あまりに珍しかったもので、つい」

そんな風に言われると、嫌だったとは言え興味が湧いている。

「何が見えたのですか?」

「、、、、何と言って良いのでしょうか、、、逆なのです」

「逆、とは?」ウィックハルトも気になっていたんだろう、口を挟んできた。

「、、、通常の方の星は、ゆっくりと左に回っています。その途中にある光や、揺れによって私は吉凶を読み解いたりするのですが、、、、ロア様は、、、」

右に回っている。

「正確には、逆回転していたものが、減速して元に戻ろうとしている、というか、、、、ごめんなさい。初めて見たものなので、説明する言葉が見つかりません」

ゾディアの言葉に、ちょっとだけ納得できる気がする。

過去に戻ってきた僕の星回り。

しばらく睨むように水晶を見つめていたゾディアは、ふー、と大きく息を吐いてから

「ありがとうございました。貴重な体験を致しました。では、今度は私がお支払いする番です」と言った。