軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第353話】終わりの話③ 皇帝の息子たち

めちゃくちゃ楽しそうに出てきた皇帝ドラクを前に、僕はちょっと睨みながら抗議する。

「サピア様は陛下に促されたと言っていましたからね。にも関わらず陛下は一緒ではなかった。こういう面白そうな所に同行しない理由を考えれば、どこかで僕が驚いているのを覗いているのではないかと」

そんな僕の言葉に、皇帝はフンと鼻を鳴らす。

「公務で同行できなかった可能性もあんだろ?」

「まあ、その時は僕が少し恥ずかしいだけです」

突然部屋で皇帝を呼ぶという奇行。少しというか結構恥ずかしい。けど、多分いるんじゃないかなと思ったら案の定だ。

「お前は相変わらず可愛げがねえな。まあ、ロアの驚いた顔は見られたから良いか。おい、もういいぞ! 入ってこい」

皇帝の呼びかけに応じて、隠し扉からは出てくるわ出てくるわ。まずは「ルファ! 帝国へようこそ!」と言いながらルルリアが登場。次に少し申し訳なさそうなツェツィー。さらに初めて見る若い男性が入ってきて、最後にリヴォーテ。

とりあえずツェツィーと簡単に再会の挨拶を交わし、それから視線は初顔の男性へ。

精悍な顔つきに丁寧に切り揃えられたヒゲ。体格もがっしりとしている。ま、この状況で一緒に出てきたということは、おおよそ予測は付くけれど、、、

「おお、そういえばロアがこいつと会うのは初めてだったな。ビッテガルド、俺の長子だ」

やっぱりか。ツァナデフォルとの戦いの最前線にいた、次期皇帝。

「初めまして。ルデク第10騎士団、副団長のロア=シュタインです。お会いできて光栄です」

「こちらこそ。ビッテガルド=デラッサだ。会えて嬉しく思う。尤も、貴殿のことは父上や兄弟から散々聞かされていたからな。初対面という気がしないがな」

なるほど、ツェツィーともロカビルとも違った雰囲気の人物だな。本当にここの兄弟は似てないなぁ。

「あれ? 陛下、そういえばロカビル皇子は?」

「あいつは仕事しているぞ。俺はロアを驚かすので忙しかったからな、あいつに押し付けてきた」

ロカビル皇子、、、不憫すぎる。僕の中のロカビル皇子の評価が一つ上がったよ。同時に皇帝の評価を一つ下げておこう。

「ところでロア、お前から見たツァナデフォルの女王はどうだった?」

不意に話題を変えてくる皇帝。

「サピア様ですか? そうですね。少し話しただけですが、先見の明のある方ですね。それに動きも早い」

トゥトゥの生産はまだ始まったばかりだ。ツァナデフォル国内にも普及しきっているとはいえない状況で、すでに輸出について検討を始め、早々に帝国にやってきたところを見れば、なかなかのやり手と言えそうだ。

「そうか、やっぱそう思うか。ルデクはどうすんだ?」

「陛下が隠れて聞いていたとおり、帰ったらツァナデフォルとのトゥトゥの取引は王に推奨するつもりですよ」

「よし。なら俺もその方向で考えてみるか」

あれ、これもしかして、単に僕を驚かそうとしたというよりも、僕の反応をサピア様の評価の材料にしようとしたのか。本当に一筋縄ではいかない相手だな。

「じゃあ、ロアの顔も見れたし、俺は仕事に戻る。歓迎会は夜。話し合いは明日からだ。今日はのんびりしておけ。ツェツェドラ、ルルリア、歓待役を任せた」

皇帝はそれだけ言うと、さっさと隠し扉から戻って行く。普通に出入り口から帰ればいいのに。

ビッテガルドとリヴォーテも付き従って扉に消え、部屋には僕らとツェツィー、ルルリアが残った。

「ね、ルルリアお姉ちゃん、あの先どうなっているの?」

ルファも気になったみたいで、良い質問をしてくれる。

「普通に部屋があるわよ? この部屋がよく見えるように、さまざまなところに覗き穴が隠されているくらいで、あとは普通の部屋ね」

うん。それは普通の部屋ではないね。

「あれが、、、、皇帝ドラクか、、、、、」

ボソリと呟いたのはザックハート様。そうか、ザックハート様とルファは、皇帝を見るのは初めてだった。

「公の場では、もう少しちゃんとしてますよ?」

僕はなんとなく皇帝を擁護しておく。

「父がすみません」

ツェツィーも申し訳なさそうに謝罪する。

「ああ、いや、失礼。別に陛下を蔑むつもりはない。相当な雰囲気を持った御仁であったと感心していただけである。ロアは、あの御仁と同盟交渉をしていたのか、、、、」

ザックハート様がなにやら感心する中、

「そう言えば、ロアもそうだけど、あの時の皆さんは御義父様にも堂々としてたわね。初対面だと普通は結構気圧される方が多いのだけど」

と、ルルリアが口にする。

まあ、色々必死だったし、敵地の真っ只中に数人で行くような面々だからなぁ。

「ちなみにだけど、ルルリアが皇帝と初めて会った時はどうだったの?」

僕の問いに答えたのはツェツィー。

「実の娘が帰省してきたのではないかと思ったほどに、堂々としたものでした」

やっぱりね。

そんな僕らの会話を、ザックハート様が少し呆れながら見ていたのだった。