軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第340話】フェマスの大戦26 第四騎士団の決断

戦いが、終わった。

降伏した兵士以外、立っているリフレア聖騎士団は、この場にいない。

僕の中に、キツァルの砦やホッケハルンの砦での戦いの時にあったような高揚感は、ない。

どんな風に表現したら良いのだろうか。説明のつかない感情が心を占める。あえてその感情に名前を付けるのであれば、一番近いのは”安堵感”だろうか。

成し遂げたという感情も湧かない。ただ、僕の中にようやく終わったという気持ちが満たされてゆく。

多分、多分だけど、ルデクとリフレアの戦いは、ここで決着が付いた。ここからはリフレアがどのような終わり方を選択するのか、そういった戦いになる。

他人事ではない。この戦いを王から任された僕にとっても、同じ命題が課されている。

どのように、決着をつけるのか。

けれど、それは少し後で考える事だ。すでに陽は落ち、宵闇がフェマスを支配する中、僕は後始末を任せると一旦医療班のいる場所まで戻ってきていた。

ヴィオラさんやフレインから「闇夜に紛れて大将首を狙ってくる残党がいるかもしれない」との進言により、前線を追い出されたためだ。

到着して早々に僕はレニーの元へ。陣幕に入ると、そこにはラピリアやルファもいた。

「ロア!」

「2人とも! 勝ったよ! 僕らの勝ちだ!!」

「うん! さっき伝令が届いたわ。やったわね」

そういうラピリアの左腕は、包帯でぐるぐるに固定されている。やっぱりそれなりの怪我だったみたいだ。

「怪我は大丈夫?」

「ええ。手も動くし、、、時間が経てば問題ないわ、、、、少し傷は残っちゃうかもしれないけれど、、、、」

そこでほんの少しだけ眉根を寄せたラピリアに対し、僕は無意識に「そんなの僕は全然気にしないよ」と口にする。

それを聞いたラピリアが顔を赤くし。口にした僕も顔が熱くなった。うん、話題を切り替えよう。僕はルファに視線を移す。

「ルファもお疲れ様」

ルファ達が頑張って治療してくれたことで、たくさんの兵士が第七騎士団の支援に向かったと、戻ってくる道中で聞いた。目立たないかもしれないけれど、彼女達の活躍も計り知れない。

「うん! お兄ちゃん、やったね!」

ルファとはハイタッチをして互いを労う。

そして、レニー。

レニーの顔色はまだ良くなかったけれど、寝台から起き上がって僕らのやり取りを見ていた。僕が声をかけると、寝台から降りようとするので「そのままで」と制する。

「体調はどうだい?」

「はい。皆さんのおかげでだいぶ良くなりました」

「僕のせいで、ごめん」

「謝らないでください! おかげで戦いに勝てたのですから」

レニーがニコリと笑むと、僕の隣にいたウィックハルトがすっとレニーに近づき、ゆっくり肩を叩く。

「レニーの活躍と覚悟は私が誰よりも知っています。こんな役割を背負わせた以上、約束通り、元気になったら一発殴っても良いですよ」

と言えば、レニーは「ウィックハルト様は出発前に言いましたよね? ルデクの命運を握るのは私かもしれないって。十分に役に立てましたか?」と返す。

「ええ、レニーの名前は歴史に残るでしょう。それほどの活躍です」

2人の会話。僕の知らない約束。僕の身代わりになるにあたって、色々話しあったのだろうなと感じる。

こうしてしばし穏やかな時間を過ごしていると、伝令が「ボルドラス様とグランツ様がお見えです」と告げた。

2人とは戦場で簡単には言葉を交わしたけれど、第四騎士団は北の戦場を片付けたのち、第七騎士団の支援にも向かってくれたため、この戦場できちんと会話するのは今回が初めてとなる。

「すぐに通して」

僕の指示ですぐに陣幕へ招かれる2人。

「やあやあ、ロア殿。まずは戦勝、お祝い申し上げる」

そんなボルドラス様の丁寧な挨拶から、会談は始まった。

「ボルドラス様やグランツ様のお陰です。お二人の援軍がなければ、勝負はどうなっていたか分からなかった。本当に、ありがとうございます」

僕も掛け値なしの感謝の意を伝え、それからすぐに「けれど、なぜ?」と疑問を呈する。

僕がグランツ様にお願いしたのは、1000程度の小規模部隊を撹乱のために派遣してほしいというものであった。しかし蓋を開けてみたら、第四騎士団は実に5000もの兵を率いてこの戦場へ躍り出てきたのだ。

「それは、無論、そうした方が良いだろうなという判断の下です」とはボルドラスの言葉。

「でも、5000なんて大軍が動いたら、リフレアも黙っていないはずでは?」

ラピリアの言う通り、兵力のほとんどをこの地に集中させていたとはいえ、リフレアだって馬鹿ではない。

最低限の守備兵は各所に配していただろうし、それら守備兵の目に止まれば、当然知らせが来たはず。けれど、リフレア側の反応を見る限り、第四騎士団の動きは把握できていなかったように思う。

「何、各砦を全て包囲しながら来ただけぞ」

グランツ様がそんな風に言いながら、少し悪戯っぽい表情で僕らを見る。

言っている意味がわからない。包囲しながら? 砦を落としながら来たとすれば時間が掛かりすぎるし、そのような派手な行軍であれば、リフレア側に動きを把握されそうだけど?

「遺跡の向こうにあった砦に2000、それから道中にあった2つの砦に1000ずつ。リフレアの守備兵どもが降伏していなければ、今も囲っているはずだ。ネズミ一匹逃すなと厳命してある」

なるほど、、、、、ん? でもそれだと、、、、

「ちょ、ちょっと待ってください。今この場に5000の兵がいて、3つの砦に4000の兵を使った? え? じゃあ、、、、9000の兵を以て出陣したのですか!? だって第四騎士団は、、、」

総兵力でも10000しかいない。

驚きで思わず声が大きくなってしまう。

そんな僕の反応に満足したようで、グランツ様とボルドラス様は大きく頷き、二人で笑いあってから、グランツ様が口を開く。

「持ち場には1000を残してきた。ボルドラス様と相談してな」

この後僕は、ボルドラスと言う将の凄さを、まだ全然理解していなかったことを思い知るのである。