軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第332話】フェマスの大戦18 埒外

「崩れるな! 押し返せ! 厳しくなった者はすぐに入れ替われ!!」

ラピリアの鋭い喝が戦場を走る。

ラピリア達は東側の壁を背に戦うことを選択し、斜面を駆け上ってゆく。当然敵も指を咥えて見ている訳がない。

ルデクの兵士を蹴落とそうと、高所という優位さを活かして槍を突き出し、矢を射かける。多少ラピリア達が押し込んでも、すぐに新しい兵士が補充されて、斜面へと押し戻される。

唯一幸いなのは包み込まれての包囲線になっていないことだ。相手が優位であるからこそ、弓矢による同士討ちを避けたいのだろう。

リフレア側には無理をする必要のない状況だ。ルデク側の兵士は、徐々に、確実に数を減らしていっている。このまま攻められ続ければ全滅は免れない。

それでも、、、

「傾斜を活かして、敵兵の足を狙え! 倒れたところから活路を開け!!」

ラピリアは諦めない。

兵を何度も入れ替えては、すり鉢の中からの脱出を試みる。

「ぬうっ」

「サーグ!」長くラピリア隊を支えてきたサーグの顔から鮮血が飛ぶ。しかし心配するラピリアに対して「耳を切っただけです! 問題ありません!」と言いながら、再び槍を突き出した。

既に指揮官クラスであっても関係なく、総力戦で敵に当たっている。だが、リフレア兵の厚い壁はこじ開けられるような雰囲気はない。

しかし、ここから下がるわけにはいかない。仮にすり鉢の底で体勢を立て直そうとすれば、その時こそ傘にかかって攻めてくる。ラピリアなら必ずそうする。

また一人、仲間が倒れ、力なく斜面を転がっていった。もう何人目か分からない。それでも、後ろを振り返る余裕はない。

せめて、平地であれば、、、戦場を舞うと揶揄されるように、ラピリア隊の本領はラピリアを中心に自在に動き回る用兵にあるのだ。この状況下では羽をもがれたも同然であった。

もはや、ルデクの兵士で無傷なものはほとんどいない。

そしてついに、ラピリアの身にも。

「くっ!」

敵兵が倒れて転がってくるのを避けた際、左肩に鈍い衝撃が走る。矢ではない。近くの地面に槍が刺さっていた。誰かが上から投げ入れたのだ。

「ラピリア様!?」

すぐに近くの兵が悲鳴のような声を上げるも、ラピリアはなるべく平静を装いながら「大丈夫だ! かすっただけだ!」と答える。

しかし肩の傷は思ったよりも深そうだ。手は動くが、左腕にうまく力が入らない。

「誰か! ラピリア様の止血を!」

ジュノがラピリアを強引に後ろへ引き寄せると、自身も傷だらけの兵士が止血を急ぐ。

「大丈夫だと言っている!」

ラピリアは抗議するが、ジュノは怒ったようにラピリアを睨む。

「今、ラピリア様が倒れればここは全滅です! 御自覚なされ!」

言い合いのような会話の横を、また新たに味方が転がり落ちてゆく。いよいよ部隊は陣形の維持が難しくなるところまで来ていた。

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籠の中の虫となったルデク兵を遠巻きに見ていたショルツは、「もうそろそろ頃合いだ」と部下に伝える。

あと僅かでも敵兵が減ったら、その時弓兵は下げて、包囲を狭めて擂り潰す。もはやこちらに大きな被害が出ることはないだろう。

軍師の言う通りわずかな餌を残して、あとは殺す。それでこの戦場は決着だ。寡兵にしてはよく粘ったが、これ以上は無理だ。

「全軍であの者らを討ち取る準備をせよ」

ショルツが指示を飛ばし、自身も気合いを入れるように腕を回したその時、ショルツも、そしてサクリでさえも予期しないことが起こった。

「火だ!! 火が!!」

「?」

何事かとショルツが声の方を向けば、ショルツ達の背後では、大量の黒煙を上げつつ、大地が業火に包まれていたのである。

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時は少し、遡る。

中央砦の瓦礫が崩れた直後、西側の戦場では予断を許さぬ状況が続いていた。

サザビーもまた、この戦場で戦っていた。

サザビーがいるのは山中だ。短剣とネルフィア仕込みの暗器を使い、敵兵を屠っては移動して木の上に身を隠す。効率は悪いが、周辺の兵士は確実にサザビーの手によって倒れてゆく。

「よっと」

また一人片付け、次の場所へ移動しようとしたサザビーは、

「やっと見つけたぞ」

と言う声に、後ろから肩を叩かれた。

「、、、、ユイゼ、、、、いや、メイゼストですか? 一人とは珍しい」

サザビーの肩を叩いたのは双子の片割れ。

「おい、サザビー、お前今日も”あれ”持ってんのか?」

「あれ?」

メイゼストの説明を聞いて、サザビーは「ああ、持ってますよ」と答えると、メイゼストは「よし、じゃあついて来い」と強引にサザビーを引っ張り始める。

「ちょ、どこに行くんです?」

サザビーの言葉に、メイゼストは悪戯を仕掛ける時と同じ顔で笑いながら、

「楽しいところだ」とだけ言った。

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「メイ! 遅いぞ!」

「すまん! サザビーがおかしなところにいるのが悪い!」

メイゼストに連れられて山中をまっすぐに北上して来てみれば、たどり着いたのはまさかの西砦。しかも、砦の中は既にユイゼストが制圧済みであった。

「どうやって、、、、」サザビーが唖然としていると、

「塁壁の兵士が減ってきたからな。多分手薄になったと思った」

「それに瓦礫、向こうでなんかあったろ」

それにしたって、単騎でやってくるようなところではない。

「向こうもそう思ってるだろうな」

「だから奇襲してやった」

こともなげに言う双子。

「、、、、いや、滅茶苦茶ですよ、、、、」

だが、西砦が制圧されたのも事実。

「そんなことはどうでもいい」

「すぐ上に行くぞ」

サザビーが状況を飲み込めないまま塁壁の上へ。

「お、やっぱりあった」

「だよな! 予想通りだ!」

楽しそうに言う双子の視線の先には、多数の樽が積み上げられている。

「まさか、、、燃える水?」

「当然だ。予備を残していると思ったんだ」

「おい、サザビー、ぼんやりするな、始めるぞ」

「始めるって、、何を?」

「向こう側、燃やすんだよ。あいつらびっくりするぞ! 同じ目に遭わせてやろう!」

「私たちが投石機で樽を投げる、お前はその辺にある矢と”それ”で火矢を作って撃ちまくれ!」

双子は、サザビーが握っている圧気発火具を指差しながら、足取り軽やかに樽へと向かっていった。