軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第301話】或る、冒険。

アレックスの旅路は、決して楽なものではなかった。

人目を忍ぶようにしてツァナデフォルへ入国を果たすと、一番最初に目についた船に転がり込む。

船は専制16国のザボン港行きのものだった。アレックスは祖国を出てから初めて、肩の力を抜いた。

しかし、目的地はここではない。むしろここからが本番である。決して潤沢とはいえない路銀を握りしめて、ひたすらに南を目指す。

野宿も何度もした。それは、アレックスにとって初めての経験であったが、金のことを考えれば無理矢理にでも慣れるしかなかった。

時に、怪しげな男が接して来たこともあったが、アレックスの職業と、金がないことを知ると、興味を失ったように去ってゆく。

道を間違ってシューレットの国境に着いてしまった時は絶望的な気持ちになった。それでも気持ちを奮い起こして、足を進める。

ルブラルに到着した時は感動したものだ。人間とは、両の足でこんなところまで来ることができるのか、と。自分のことながら、人間の可能性をしみじみと感じた。

しかしルブラルでは困ったことが起きた。ルデクへの入国が厳しくなっており、アレックスも簡単に通ることができなかったのだ。しかしここで諦めるわけにはいかない。路銀を出しあってくれた仲間達のためにも。

ルブラルの国境で同じく足止めを喰らっていた旅一座に話を聞くと、ゴルベルの方はまだマシだという。幸運なことに、その旅一座がゴルベルに向かうというので、同行させてもらうことができた。

結局アレックスはリフレアを出発して、ツァナデフォル、専制16国、シューレット、ルブラル、ゴルベルと、大陸の大半の国を巡ったことになる。

そしてついに、彼は目的の地、ルデクにたどり着いた。

目的の国に到着できたことで、張り詰めていたものが途切れてしまったのであろう。アレックスは大きな牧場の片隅で行き倒れたのである。

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鋭見のリヴォーテは、後方で戦況を冷静に確認しながら、適材適所で細かく部隊に命令を出す。

いずれの指示も正確で、時に堅実に、時に大胆に兵士が動く。まるで蜘蛛が手足を動かすような戦いかたであった。

第10騎士団で例えると、戦場では槍の鋒のように先頭に立って突撃するリュゼルや、兵の中心で自在に動かしながら戦場を舞うラピリアよりも、本人は後方にあって、手堅く指示を出すフレインの戦い方に似ている。

フレインには悪いけれど、同じ戦い方でもリヴォーテの方が少し巧みかな?

今日は新兵相手の模擬戦。

先日ゲードランドに行く時に話していた、「慣れの出てきた新兵をとことん叩いて、鼻っ柱をへし折ってやろうの会」だ。

紆余曲折あり、結局僕は戦いには出ずに、代わりにリヴォーテと新兵の戦いとなった。

訓練に参加する新兵は第10騎士団に加えて、第六騎士団預かりの中から、任務に従事していない者も集められた。その数およそ3000。

指揮官はロズヴェルである。

ロズヴェルは訓練も真面目にやっていたし、大口を叩くだけあって才も感じる。指揮官として学ばせてみようと思わせるものを持っていた。

どちらかといえばリュゼルのように、自ら先頭に立って兵士を鼓舞する戦いかたが向いているみたいだ。

今回も「帝国の将軍を俺が負かせてしまっても大丈夫ですか?」などと大きなことを言っていたが、唇の端が震えていた。

ロズヴェルにとって、同じ新兵とはいえ3000もの兵士を指揮するのは当然初めてのことだ。

対するリヴォーテは、第10騎士団から貸し出した1000人の兵士で迎え撃つ。

結果はまあ、分かっていた事だけど、リヴォーテの圧勝だった。手も足も出ないとはまさにこのこと。数的優位も全く活かすことができなかった。ロズヴェルは悔しかっただろう。

模擬戦が終了すると、リュゼルから新兵に訓示の時間。

「身をもって分かったと思うが、これが本当の戦いだったら、お前ら全員死んでいたぞ! 死にたくなければ決して調子に乗らんことだ! 熟練の兵士ほど、戦いの際は身を引き締めるものだ! 心に刻んでおけ!」

厳しいかもしれないけれど、死んだら終わりだからね。

リュゼルの話を聞いていると、リヴォーテが戻ってきた。

「ありがとうございます」

僕はリヴォーテに礼をする。本来であれば敵に手の内を見せるようなものだ。厳密には敵ではないけれど、リヴォーテが他国の新兵を訓練してやる必要など微塵もない。

「ふん、俺もしばらく体を動かしていなかったからな、ちょうど良い運動になった」

そんな風に言うリヴォーテに、後からルファが駆け寄ってきて飲み物を手渡す。

「リヴォーテ、お疲れ様ー。美味しい果実水持ってきたよ!」

「お。気が利くな。頂こう」

「リヴォーテ凄かったねー。ロアみたいだった!」

「ふふん。そうだろう、そうだろう。だが俺はロアより凄い」

すっかり仲良しさんなルファとリヴォーテ。

「おい、大人しく見ていたぞ、次は私らがやる」

「私たちと戦いたい奴はいるか!」

個の力で蹴散らされては意味がないので、模擬戦に参加させなかった双子が、いよいよ我慢できなくなったみたいだ。

ここまでは織り込み済みなので、この後は第10騎士団全体の訓練として、模擬戦を何度か行う予定。

「シャリス、グリーズ、やろうぜ!」

「軽く遊んでやる!」

「良いですよ。では、最初は我々が戦いましょうか?」

「まあ、たまには双子も負けを知っておいた方がいいだろう」

4人の会話を聞くともなしに聞いていると、ウィックハルトが「少し良いですか?」とやってきた。先ほど城から呼び出されていたけれど、何かあったのだろうか?

「、、、、教皇のことで嘆願があると訴えている神官が、うちの実家の領地で”保護”されたそうです。その件で王がロア殿に相談したいと」

ん? ホグベック領で? 保護? どう言うこと?

状況が全く分からないけれど、僕とウィックハルトはとりあえず王の元へと向かうのだった。