軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第276話】始まりは既に。

ダーシャ公と今後の流れなどを相談していたら、あっという間に日が暮れる。

ダーシャ公からは息子のシャッハ様を王都へ預けるという提案もあったけれど、これは丁重にお断りした。敵に警戒されるような動きは避けたほうがいい。

「つまり、ヒューメットに近い貴族も泳がせる、と」サザビーの確認に僕は頷く。

「と言っても、一人も叩かないのは却って不自然かもしれない。その辺りの匙加減は第八騎士団に任せたいのだけど、、、」

「そうですね。警戒対象が特定されているのであれば、多分なんとかなるかと、、、ネルフィアに相談してみます」

「うん。頼むよ」

「さてさて、打ち合わせは終わったかの?」

僕らの話が終わるのを待っていたエンダランド翁が、パンと手を叩いてみんなの視線を集めた。

「そうですね。今決められることはこんなところでしょうね。あとは王やネルフィアと詰めないと、、、」

僕が代表して答えると、最後まで言いきらないうちに「よし、では、そろそろ飲みに行くか!」と高らかに宣言。

「酒か!」

「よしっ、難しい話を聞いていた甲斐があったな!」

エンダランド翁の言葉に即座に反応したのはもちろん双子だ。。。。さっきちょっと船をこいでいたので、揃ってよだれのあとがついてるよ?

「それならば、我が邸でもてなしを、、、、」と提案しかけるダーシャ公に、「貴殿は全く分かっていない。こうして知らぬ街の酒場で飲む酒の旨さを」と諭すように語り、「いっそ、ダーシャ公も一緒にどうか?」と誘う。

「いや、せっかくの申し出だが、遠慮しておこう。今日出歩くには少々疲れた、、、シャッハよ、案内を任せても良いか?」

「分かりました。では、街でも評判の酒場にご案内します」

「いえっふー!」

「ヒャホーい!」

俄然元気になった双子を先頭に、僕らはタークドムの街へと繰り出したのだった。

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、、、、、なんだか、視線を感じる。

勧められた酒場は、料理も酒も美味しかった。さすが領主の息子さんの一推しである。けれど、なんだか据わりが悪い。

隣にいるラピリアにこっそりと「なんか妙に視線を感じない?」と聞くと、ラピリアは不思議そうにしてから「ああ」と一人で納得して、「それ、早く慣れたほうがいいわよ?」と言う。

僕はなんのことか分からず首を傾げると、「ね、ウィックハルト」とウィックハルトに振った。

ウィックハルトも「あ、そう言うことですか」と言い、少し微笑んだ。

「2人だけ分かってないで、僕にも教えてくれないかな?」少し拗ねるとラピリアが笑う。

「この間の凱旋式、この街から見に来た人もいたでしょうね。第10騎士団の新しい副団長を」

「え、、、じゃあ、、、」

「もう噂になってるはずよ。街に第10騎士団の副団長様が来ていることは」

あー、、、、そう言うことか。ラピリアやウィックハルトはこういう視線に慣れきっているってことね。慣れるかなぁ、、、慣れる気がしない。まあ、なるべく気にしないようにしよう。

僕は気持ちを切り替えて話題も変える。

「ところで、エンダランド翁、一つ聞いてもいいですか?」

既に赤ら顔のエンダランド翁は、ニコニコしながら「何かの?」とこちらを向く。見るからにご機嫌である。

「今回の件、どうして手伝ってくれたんですか? “これ”はルデクの問題で、帝国には関係がない。翁が動く必要はなかったと思うのですが」

「ふむ。答えは簡単じゃよ。リヴォーテはルデクと貴殿を大層警戒しているようじゃが、儂は違う。ルデクが拡大してくれたほうが都合が良いと考えたのよ」

「拡大して都合が良い、ですか?」

「時にロア殿、リフレアは獲るのだろう?」

宣戦布告をしたことは周知の事実。ただ、滅亡まで考えているのは一部の人間しか知らない。さて、隠したほうが良いか、、、いや、長耳の異名を持つこの人には無駄かな。

「はい」僕は正直に答える。

「すると、ルデクは領土と経済力を考えれば、大陸でも帝国に次ぐ規模の大国になる。ところが、場所が悪い」

「場所、、、、」

「うむ。ルデクが欲をかき、さらに兵を西に向ければ、儂らは貴国の背後をつける。それも、今までと違い旧リフレア領からなら攻め込みやすい。逆に帝国に矛先を向けるようなら、今度は背後が疎かになる。その時、危険な大国の背中を見たルブラルや他の国がどう動くかのう、、、」

「ですが、必要以上に戦線を拡大しなければ問題ないのでは?」

「そうじゃ。ルデクが必要以上に欲を出さねば、大陸全体が安定することになる。グリードルと友好を保持すれば両国の経済は栄え、同時に他国への抑止にもなる。そして我らグリードルは、長きにわたり懸案であった国内経営に力を入れることができる。ゆえに、儂としてはルデクに頑張ってもらいたいのよ。尤も、グリードルもまだ北に問題があるがのう、、、」

なら問題ない。僕らは大陸に覇を唱えるために兵を挙げたわけではない。素直にそのように伝えると、翁は「そうじゃろうな」と答え、さらに続ける。

「今の者達はそう考えておっても、次の世代はどうか。次代のものに、理を説くのは先人の務め。例えば、若き王子などにな」と。

ゼランド王子にお前がちゃんと言い含めるのだ、そのように言われているような気がする。

「それにな、リフレア、あれはダメじゃ。他国で遊びが過ぎるわ。残しておいても良いことはない」

さすが、引退していたとはいえ帝国の重鎮。視野が広い。

その日はエンダランド翁の貴重な話に、夜遅くまで耳を傾けた。

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ロア達がタークドムに滞在していた、その頃。

王都にいたある貴族に、一通の密書がもたらされた。

その貴族は内乱が起きて以降、実質的な軟禁状態であった。だが第一騎士団に勝利したことで、当面の危機が無くなってようやく、締め付けが緩んできたところだった。

密書は北からのものだ。そして、彼に直接届くのは、ヒューメットの筋ではない。

ヒューメット以外に、彼には別のつながりがある。

「サクリ、か、、、、、」

貴族院の一人、キンズリー=インブベイは、蝋燭の灯の元で慎重に密書を紐解くのだった。