軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第267話】ゴルベル使節団⑦ 行方

「ご迷惑をおかけし、申し訳ございません」

ゴルベル王のシーベルトが僕らに謝罪しているのは、実父にして前ゴルベル王、ガルドレンのことだ。

ガルドレンはルデクに戦いを仕掛けた張本人であり、ルデクに従属したゴルベルからすれば処刑を要求されても文句の言えない人物である。

ただ、ルデクとしても不要な軋轢は避けたいため、両国間が落ち着くまでは幽閉というシーベルトの処分を尊重した形になっていた。

当人のガルドレンはそう簡単に助け出せない塔の上階に投獄されていたが、競い馬で皆の注目が街の郊外に向く中、牢を守る兵士を殺して逃げ出したのである。

発覚したのは競い馬が無事に大盛況に終わり、僕らも城に戻った直後のこと。

まだ余韻を楽しんでいる民に余計な不安を与えぬように、密かにガルドレンの行方を探していたけれど、今のところ捕らえたという朗報は上がってきていない。

「逃したのは、ジャグスの一味のようです」ファイス将軍が厳しい顔で分かった事を報告にやってくる。

「やはり、ジャグス一味は早いうちに対処しておいた方が良かった、、、!」

「いや、しかし、なんの咎もなき者を一方的に処分しては、ガルドレン様と同じになってしまう、、、」

クオーターとモンスールの会話から察するに、多分、ジャグスというのは前王の派閥なのだろう。しかも、口ぶりからすれば、できれば処分しておきたかったような人物。

けれど確かに、新王に代わったばかりでそんな無茶をすれば、後に大きな暗い影を落とすことは想像に難くない。難しい判断だな。

そのジャグスの一味が兵を連れて塔を襲撃、瞬く間にガルドレンを連れて逃げたのではなかろうかという見立て。情報があやふやなのは、とにかく目撃者が少なく、状況が分からないのである。

分かっていることは、塔の兵がみな殺されていたこと、ガルドレンが塔にいなかったこと。そしてジャグスの行方がわかっていないこと。たったこれだけだ。

、、、、ってことは、、、、

「多分、最初からこの日を狙って入念に計画していた、、、?」僕と同じ結論に行き着いたラピリアが呟く。

「そうだね。僕もそう思う。シーベルト王。今回の件、競い馬がなくても広場での演説は既定路線でしたので、多分、そちらに視線が集まるのを見越したのではないでしょうか?」

「、、、そう、ですね」

そうなれば、だ。

「シーベルト王、差し出がましいかもしれませんが、お父上はもう王都ヴァジェッタにはいないのではないですか?」

ここまできちんと計画していた奴らが、まだ王都内を右往左往しているとは思えない。

彼らにとっては幸いなことに、競い馬の開催によって街と郊外の出入りは非常に多かった。簡単な変装でも通り抜けるのは容易かったと思う。

「ロア殿のおっしゃる通りですな。そうすると逃げた先は、、、、」クオーターの視線が自然と北を向いた。今視線の先にあるのは壁だけど、そのずっと向こうにはあの国がある、リフレア神聖国が。

「しかし、リフレアを頼るには北の、、、ルデク領を抜ける必要があるが、、、」ファイス将軍が少し言い淀んでから、ルデク領と言った場所。かつてのゴルベル北部であり、今はグランツ様達が睨みを利かせている地域だ。

まあ、選択肢としてはリフレアだろうな、と思う。以前にシーベルトに聞いた話では、前王は妙にリフレアを信用していたらしいし、逆にルブラルへの支援依頼は食指を動かさなかったと聞いている。

恐らくではあるけれど、帝国同様にリフレアとガルドレンの間には、何か密約があったのだろう。そうでないと、盲目的にリフレアを信用しているのは不自然だ。

しかし、グランツ様がガルドレン一行を捕えるのは、、、難しいかもしれない。

「今、ルデクの注意は北に向いています。ゴルベルからやってくる人間に、そこまで強い警戒をしないと思います」僕が伝えると、シーベルトも険しい顔のまま頷く。

「取り敢えず急ぎ警戒するように早馬を出しましょう。僕らもこの後北を回ってルデクトラドに戻りますので、直接様子も聞いてお知らせします」

「ご迷惑をおかけします」

「いえ。。。。見つかると良いですね」当たり障りのない返事にとどまる僕。

こうして一抹の不安を残しつつ、僕らのゴルベル来訪は一通りの予定を消化する。

ガルドレンの件さえ除けば、今回の来訪は大成功と言っていい。

やってきた時はどこか沈んだ空気がまとわりついていた大通りも、僕らの出立を見送る市民の、明るい笑顔でひしめいている。

いずれも好意的な声が上がっており、僕らも手を振って応じながらヴァジェッタを後にしたのだ。

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ヒースの砦ではグランツ様がわざわざ砦を出て出迎えてくれた。

「グランツ様!」

「おお! ロア! ラピリア! 久しいな! 活躍は全て聞いている、、、、よくやってくれた!」

「グランツ様がこの場に残ってくれたからこそ、うまくいったんです」

「いや、ロア、いや今はロア=シュタイン公か。お前の力よ。レイズ様もお喜びであろう」

そんな風に出迎えてくれたグランツ様、ラピリアが一歩前に立ち、「ルシファル=ベラスは確かにこの手で討ち取りました」と報告すると、感極まったように「ああ、ああ」と言いながら、ラピリアの両肩を掴んで下を向く。

グランツ様の立つ地面に、ぽつり、ぽつりと水滴が落ちたが、きっと空からの恵みであろう。

こうして互いの現状などの情報を交換しつつ、ヒースの砦に3日ほど滞在したけれど、結局、ガルドレンの行方はようとして知れなかったのである。