軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第260話】三国同盟

「同盟? なんのことだ?」

豪奢な私室で寛いでいたのはルブラル国の王、サージェバンスだ。

彼は夜半にも関わらず舞い込んだ知らせに、少し眉をひそめる。

側近が私室にまで駆け込んで来たのだ、相応の出来事なのだろうが、夕餉の後のわずかな安息の時間を邪魔されるというのは、あまり気分の良いものではない。

共にゆっくりしていた妻を離席させて、飲みかけの酒が入った杯を手にすると、改めて側近の顔を見た。

「ゴルベルがルデクに降った話に、何か変化があったのか?」

すぐに思い当たったのは、ゴルベルとルデクの件だ。既にルデクから内々に話が来ている。ルブラルと敵対するつもりはないが、今後、ゴルベルはルデクが保護する、と。

ルデクの使者の言葉を思い出して、サージェバンスは苦虫を噛み潰す。少々、欲を掻きすぎたことに。

サージェバンスの読みでは、ゴルベルはもうルブラルに泣きつくしかないと思っていた。リフレアが何かとちょっかいを掛けていたようだが、あの国は土壇場で裏切る。それはルデクとの同盟を見てもよく分かった。

ゴルベルに帝国という選択肢はない。両国間にルデクがある以上、その従属には意味をなさない。

つまり生き残る道は、 うち(ルブラル) だけ。実際にゴルベルの王子からも打診が来ていたが、サージェバンスはあえて首を縦に振らなかった。

ルブラルにとって最大限に利益を確保して、ゴルベルを取り込む。理想は、ゴルベル王のそばにルブラルの息のかかった人間を送り込むことだ。

こちらに打診してきた王子を王に据え、傀儡にしても良い。荒唐無稽な話ではない、時間をかければ必ずそうなると見ていた。

まさか、最も険悪であると考えられたルデクに従属を申し込むとは、、、しかも、あの王子が造反して。完全にサージェバンスの読み違えであり、それだけに思い出すと自分に腹が立つ。

しかしまあ、過ぎてしまった物は仕方がない。考えようによっては、帝国との防波堤が手厚くなったと考えれば良い。ルデクは敵対するつもりはないと言っているし、うちはゴルベルと戦を始めたわけではない。

ルデクの話を聞いた時、いっときだけ情勢不安定な旧ゴルベル北部領に攻め込むことも考えた。リフレアとルデクがやり合うのなら、攻略は容易いかと思ったのだ。

だがかの地を守っているのが、グランツ=サーヴェイと聞いて気持ちが揺らいだ。

グランツほどの名将が率いるルデク兵に加えて、当然ゴルベルの兵も援軍に出るだろう。こちらが手を出すにせよ、もう少し様子を見てからの方が良いと判じたのである。

しかし今更ゴルベルとルデクの話など、ここまで息せき切ってやってくるような話ではあるまい。

「ゴルベルとルデクでは有りません! 帝国です!」使者は声を大きくする。

「帝国?」

「帝国と、ルデクが、、、、! いえ、帝国、ルデク、ゴルベルの三国同盟です!」

その言葉に、サージェバンスは思わず杯を取り落としそうになった。

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ようやく大地に温もりが戻り始めたツァナデフォル。

ツァナデフォルの君主サピア=ヴォリヴィアノは、まだ山頂辺りに白く化粧をしている山々を眺めていた。

「今日は良い獲物が見つかりませんな」

側近にして一番の友人であるジュベルノが、同じく山を見上げながら話しかけてきた。

ジュベルノは年も近く、子供の頃から常に共に育ってきている。獲物がいないのではなく、サピアの気分が乗らないことを察して、適当なところで切り上げようとしているのだろう。

ツァナデフォルから雪が消える季節は短い。自由に動けるうちに獣を獲り、少しでも冬に残せる食料にゆとりを持たせたい。

狩猟が上手いというのは、ツァナデフォルにおいて重要な技術である。

「、、、、気分が乗らんな。何か、嫌な予感がする」

「そうですか。では、切り上げましょう。こんな日もあります。それに、他の者が何頭か仕留めたようです」

「それは重畳だな。よし、今日は帰るぞ」

「はっ」

こうしていつもより早く帰城したサピアを待っていたのは、三国同盟の知らせであった。

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ネロはこつ、こつ、こつと指で机を叩きながら「どういうことだ?」とベローペに問う。

ルデク、帝国、ゴルベルの同盟。しかも、ゴルベルはルデクの傘下に入る実質的な従属であるという知らせは、ベローペの帰還とほぼ時を同じくしてもたらされた。

ルデクへのリフレアの提案が、間抜け極まりないものとなっていたのは明白。とんだ茶番である。

それだけではない、正式にルデクから宣戦も布告された。これでは窮地に陥っているのはどちらの国か分かったものではない。

「わ、、、私には、、、、ゼウラシア王は何も言っておりませんでしたが、、、、」完全に腰の引けたベローペを睨んだところで、状況が好転するわけもない。

「しかし、貴殿はただ一方的に言われて帰ってきたということではないか?」

「い、いえ! お待ちください! そういえばゼウラシア王はヒューメット公のことを言っていました!」

苦し紛れなのか、突然そんなことを言い出すベローペ。

「ヒューメット公のことを、なんと?」

「死体を引き渡せ、どこにある、と。それから犯人はどうした、と。まるでリフレアを疑っているような口ぶりでした」

「、、、、つまり、暗に生きているのではないかと聞いてきたのか?」

「わ、私にはそのように聞こえました、、、、」

レイズ=シュタインのいないルデクにも、少しは知恵の回るものが残っているか、、、

知恵の回る、、、、、

ネロは小さく息をつく。それを自分への失望と感じたベローペは慌てて、「お、お待ちください! 同盟の情報は虚報かもしれません! もう一度ルデクにいって参ります!」などという。

今更に 小者(ベローペ) が行ってなんになるというのか。ネロは鼻白むと、天井を仰ぐ。

仕方がない。”あれ”を使うしかないか。。。。

いよいよ不快そうなネロに、みるみる顔を青くするベローペ。

「ベローペ殿」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「使って申し訳ないが、サクリを呼んで来てもらえるかな」

ネロの口から彼の名前が出るのは、非常に珍しいことであった。