作品タイトル不明
【第257話】招かれざる使者
「この度は両国にとって災難でございました」
ベローペと名乗ったリフレアの使者は、開口一番そう述べた。
「災難?」
ゼウラシア王が眉根を寄せる。
「ええ。あのルシファルという男、悪意の塊のような者でしたな。我らリフレアも、そしてルデクも、完全に騙されておったのでございます」
「、、、、、」ゼウラシア王は無言。ベローペは気にせず続けた。
「全く、あの男、我々には「ルデクで虐げられている民のために力を貸してほしい」などと嘯き、我らの正義の心を好き勝手に利用して、ルデクへ兵を向けさせたのでございます。まぁ、我らとしてもゼウラシア王に問い合わせたかったのですが、それもルシファルが「下手に刺激すれば王が逆上して民に被害が及ぶかも」と言われては、無理もできず、、、、」
「、、、、、」王は無言。
「無論、両国間には不幸な犠牲もございました、しかし、元を正せば我々は同盟国であったのです。どうでしょうか、ここは、我々も貴国の平和のために尽力させていただく、それを以て新たな友好の礎とさせていただくというのは?」
「我が国の平和」王が口にすると、ベローペはしたり、と手を打つ。
「今、貴国は帝国とゴルベルに攻められて大変でしょう。我が国が、リフレアがその間に立ち、各国と休戦に導いてご覧にいれる。如何か?」
自信満々に言い切ったベローペと、僕らの温度差がありすぎる。けれど、会心の提案であろうと胸をはるベローペは気づいていない。
、、、、確かに、三国同盟は公表されていない。それにしても、これでは自ら帝国と交流していたと明かすようなものだ。それが分かっているのかな?
いや、これがもし、帝国ともゴルベルとも同盟が成立していなければ、僕らの国は泣く泣く条件を飲むしかない。それ以外に選択肢がなかった。事情を知らなければ、上手い一手だ。
事情を、知らなければ。
つくづく、卑怯な国だな、と思う。
謁見の場には白けた空気が漂っている。
「如何かな」なおも自信満々に、条件を飲むように迫るベローペ。
「貴国に逃げた第一騎士団と第九騎士団はどうなる?」王は問うた。
「ああ、そのお話がまだでしたな。彼らに罪はありません。また、彼らもルシファルという凶星の被害者。ただ、その罪を悔やみ、リフレアの信じる神の御許で此度、犠牲になった者達を弔いたいと」
ベローペから反吐の出る言い訳が続く。
「ほお、では、我が伯父の遺体はどうされた?」王が矛先を変えた。
「伯父上、、、ヒューメット様の件ですかな。さて、、、」
言い淀むベローペをみて、僕はこの瞬間に、ヒューメットが生きていることを確信した。
単に知らないのなら、知らないと言えばいい。逆に顛末を知っていても同様だ。ヒューメットのことで言い淀む必要などどこにもない。
「遺骸はどうされたのかと聞いておる。どこに埋葬されたにせよ、王墓へ連れ帰ってやりたいからな。さて、どうされたのだ?」
「さ、、、、さあ、、、、私は聞き及んでおりませんが、すでにどこかに埋葬されたのでは、、、」
「それがどこかと聞いている。まさか、我が伯父をその辺りに適当に埋めたというわけではあるまい? それから、伯父上を殺した犯人はどうされた?」
「そ、、、、そんなことは決してありませんとも、我が国もすぐに対応したはずです。いやしかし、これは一度本国に確認してからお答えさせていただきたい。。。。」
語るに落ちたなぁ。ヒューメットの件、本当に殺されているのなら、第一騎士団と第九騎士団が犯人だ。そこから”すぐ”にリフレアが対応などできるはずもない。
仮に本当にリフレアがヒューメットの件を聞いて直ぐに対応したのであれば、ある程度大事になっていたと考えて良い。当然、この場にいる使者が知らないはずがないし、もし、その程度のことも把握していない人物を送り込んできたのであれば、リフレアはルデクを舐めてかかっているということだ。
どちらに転んでも、碌なものではない。
「貴国の言い分はわかった、返答を伝えよう」
「おお、流石は聡明なゼウラシア王、では、今後とも、、、」
「宣戦を布告する」
ベローペが変な顔で固まる。
「は? 今、なんと?」
「ルデクはリフレアに宣戦を布告すると言ったのだ。聞こえなかったか?」
「ご冗談でしょう。ここで我が国と戦争となれば、貴国は周辺すべての国と永遠に戦い続けることとなる。行き先には絶望しか、、、、」
「貴殿の心配はありがたく受け取っておこう。良いか、リフレアの教皇とその取り巻きにしかと伝えよ。「四つ目獅子の尾を踏んだ」とな。さ、早々に帰って防衛の準備でも始めた方が良いのではないか? 我が国には敵国の使者を泊める場所は牢しかないのでな」
「、、、、、本気で?」
「これ以上止まれば、斬ろう」
「後悔なさいますな! 帝国と、ゴルベルと我らを敵に回して無事でいられるとは思わぬことだ!」
捨て台詞を吐いて退出するベローペ。
足音が消えるまで、ベローペの出ていった扉を睨んでいたゼウラシア王。
「ロア」
「はい」
「準備せよ。徹底的にやる」
「はい」
こうしてルデクとリフレアは正式に袂を分かったのである。