軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第227話】皇帝とロア29 皇帝の褒美

帝都を出立した僕ら。

同行するのはラピリア、ウィックハルト、ネルフィア、サザビーにユイメイの双子。それに当面ルデクに駐屯することになるリヴォーテとエンダランド翁を含む外交使節団。加えてツェツィーやルルリアの一行だ。

ツェツィー達は「帰路のついでですから」と言いながら、わざわざ遠回りをして、僕らをヨーロース回廊まで送ってくれるという。

こちらとしてもリヴォーテやエンダランド翁もいるだけに、大変助かる。

何せ先ほどから、リヴォーテは皇帝のもとを離れることにずっと不満を漏らしている。

そしてそれを面白がった双子とエンダランド翁が、リヴォーテを揶揄いまくっているのである。

双子だけなら僕が止めるか、帝国の外交官から咎められるだろう。けれど、エンダランド翁が加わっているとなれば話は別だ。

一度引退したとはいえ、外交使節団の中でリヴォーテよりも格上のエンダランド翁。その人がノリノリでは誰にも止めようがない。

幸いなことにリヴォーテはそれどころではないようで、虚な目で何か呟いているだけ。3人のことを気にもとめていないけれど、これはこれで大丈夫なのかな?

ツェツィー曰く「良くああなります。数日もすれば元に戻るので大丈夫ですよ」とのこと。僕の中の”鋭見のリヴォーテ像”が悲しいくらいに死んでゆく。

ちなみに、ゾディアとは帝都で別れた。

「せっかく帝都まで来たので、しばらくはこちらに滞在します。ルデクの状況を見ながら、必ず後日伺います」と。

ここから先、ルデクはどこで戦闘が起こるかわからない。ゾディア達の安全を考えれば、こちらとしてもしばらくは帝国にいてもらった方が良い。

僕ら一行の後ろには、幌つきの馬車が一つ、ついてきている。エンダランド翁が疲れたら乗り込めるように工夫はされているけれど、基本は荷物入れ。中には多数の木箱などが詰め込まれている。

これはウィックハルトが十弓対決で得た報酬だ。

当初皇帝は「何か特別な弓でも作らせるか」と言っていたけれど、流石に余興の賞品を待つために滞在を延ばすのは遠慮したい。

皇帝もその辺りは心得ているので、代わりに提案されたのが「馬車に乗るだけの物を 無料(タダ) でくれてやる。今から店を回ってお前らが欲しいもんを積めや。土産代わりにちょうどいいだろ」というもの。

馬車いっぱいに宝石を積めば一生遊べる財産が築けるだろうけど、流石に僕らもそんなことはしない。せっかく同盟までこぎつけたのに、皇帝の不興を買うのは御免だ。

かといって無駄に遠慮すれば、それはそれで皇帝の顔を潰すだろうから、個々にそれなりの物を求めることにした。

というわけでそれぞれ木箱に入るだけ、好きなものを選ぶことに。

僕はここぞとばかりに帝国の書物を買い求めた。もちろん、戦いに関する書物ばかりを。帝都の軍事系の本は一時期品薄になるだろうというくらい、片っ端から木箱に詰め込んだ。

ラピリアは帝国産の紅茶を求めたようだ。僕には良くわからないけれど、北の大陸でも有数の茶葉が帝国にあるという。

「こういうのをもっと外に売らないと」と、ルルリアが一人憤っていた。本当に商魂逞しい。

ユイゼスト、メイゼストは武器だ、ヒャッハーしながら嬉々として馬車に危険物を投げ込んでいた。

ネルフィアは洋服。ただし、男女問わず。若者向けから年配向けまで、さまざまな種類の服を求めた。

明らかに個人で使用する以外の用途。つまりお仕事用であるけれど、まあ見なかったことにしよう。

サザビーは酒。「ま、王都で待ってる奴らに少しくらい土産があってもいいでしょう」と。なんだろう、サザビーが一番ちゃんとしているのは少し釈然としない。

そして肝心のウィックハルトだけど、一番悩みに悩んで、結局皇帝から「欲しいもんがねえなら馬でも持っていけ」と言って、良馬を2頭も贈られることに。現在馬車を引いている一際立派な馬体が、ウィックハルトが賜った馬である。

僕らが帝都を出立してから丸一日。

流石に帝国の要人の一団だけあって、宿泊も宿場町ではない。都度、その街の領主館に滞在しながらヨーロース回廊を目指す。

ちなみにツェツィーの館から帝都に向かった時は、「挨拶と説明が面倒」という理由で普通に宿屋に泊まりながら帝都へ向かった。個人的には行きのように宿屋の方が落ち着くなぁ。

あくる日の太陽が中天にかかった頃、前の方を進んでいた双子が全員に止まれと合図を出す。

「どうしたの?」

僕の問いに、双子は鼻をヒクヒクさせて、ニヤリと笑う。

「くせえな」

「な。悪党の匂いがする」

「悪党?」見渡してみても、それらしい奴らは見えない。僕がキョロキョロしていると、ガフォル将軍もやってきた。

双子の話を聞いて少し首を傾げる。

「この辺りで盗賊の話はあまり聞かぬが、、、、」

「違うな」

「盗賊じゃない。もっと、手慣れた奴らだ」

「手慣れた?」

「「人を殺すことに」」

僕の脳裏にボルドラス様の言葉が過ぎる。

ーーーー双子の勘は信用できるーーーー

「ガフォル将軍。双子が言うなら、敵がいます。ツェツィーや外交使節団の警護はガフォル将軍達にお任せしても?」

「何? ここはグリードル領だ。動くなら我らの方であろう?」

「いえ、僕らの方は戦闘慣れしている者ばかりです。人数の少ない僕らの方が動きやすい。なんなら他の人を連れて先ほどの街まで戻ってもらった方が、、、」

「待て、何を話している」話に加わってきたのは残念メガネ、じゃなくてリヴォーテ。

事情を説明すると「ほう」と鋭い視線を遠くへ走らせる。

「確かにエンダランド様達が狙われれば困るな。なら、私とガフォルが先行して蹴散らしてくるか」

リヴォーテの表情が、数多くの戦場を駆け抜けた名将のそれに変わる。

「待てリヴォ太郎」

「お前らは後だ」

「リヴォ太郎!? わ、私のことか!?」

フレインも変なあだ名つけられていたなぁ。元気だろうか。

「私たちが見つけた獲物だぞ」

「私たちに譲るのが筋だろう」

動揺するリヴォーテの返事も聞かず、双子は楽しそうに互いの手を叩く。

「私たちは幸運だな」

「ああ。手に入れた武器がもう試せる」

心底楽しそうな2人を見ながら僕は、双子と相対する奴らは不幸だなぁと、ぼんやりと思った。