軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第192話】王とロア⑤ 議会は踊る(1)

僕が提案した帝国との同盟。

その答えを出すために、全騎士団長を含めた閣僚を集めて会議を開く事になった。

全員が集合するに当たって一つ懸念がある。第四騎士団のボルドラス様のことだ。単純に一人だけ所在が遠すぎるのだ。

第三騎士団長のザックハート様はすでに王都に滞在中。第五騎士団のベクシュタット様および、第七騎士団のトール様はネルフィアの手配してくれた急報を受けて、いずれも一軍を率いて王都に向かっている最中で、早晩到着することが分かっている。

第六騎士団長フォガードさんに関しては、ヴィオラ隊長が代理の指揮官としてホッケハルンの砦に着陣予定。到着次第入れ替わりにやってくるので、こちらもそれほど時間がかからない。

ボルドラス様だけが距離のある場所にいる。

ルシファルがルデク北東部に居座っている今、できればボルドラス様はそのままキツァルの砦を守ってくれる方がありがたいけれど、ひとりのけ者と言うのも禍根を残しかねない。

グランツ様に指揮権を預けて、こちらへ向かってもらう方向で使者を差し向けているけれど、いずれにせよ時間がかかる。

今は極力時間をかけたくない。時が過ぎれば過ぎるほど、レイズ様の安否に疑問を持つ人間は増えてゆくはずだ。

建前上レイズ様は館で療養中として、実際に王も見舞いに行ったのでしばらくは大丈夫だろうけれど、全く姿が見えないとなれば、各国の密偵はどのように判断するだろうか。

やきもきする問題だったのだけど、僕の想像の斜め上、意外な展開で解決する。

なんとボルドラス様が第10騎士団の新兵やルファを連れて、早々に王都へとやってきたのである。

しかもフォガードさんより早く。

これには流石に双子も驚いたようで

「どうしたんだ?」

「空でも飛んだのか?」

と突っ込んでいる。双子はともかく僕も驚いた。

「一体どうして、、、、」

ボルドラス様はこともなげに

「何、ルファ殿の話を聞いて、グランツ殿とも相談した結果、一度王都に向かった方が良いと判断したまでです。おそらく騎士団長が集められるような出来事が起こるのではないかと。それに戦巫女を新兵や傷兵だけに預けて送り出すわけにもいきませんでしたし」

さらりと言っているが、状況判断が凄まじい。僕は昔、第四騎士団は目立たないなんて思っていたけれどとんでもない。自分の勝手な思い込みが恥ずかしくなる。

けれどこれは助かった。数日もすればフォガードさんもやってくる。想定以上に早く会議を開くことができる。

こうしてフォガードさんも無事に王都へやってきたその翌日、ルデクにとって大きな、大きな転換点が訪れるのである。

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城内でも最も重要な話し合いが行われる間を「宣言の間」と呼ぶ。

窓も飾りもない簡素な部屋の中、ある一角だけが荘厳な雰囲気を醸し出し、如何にも普通の場所でないことがよく分かる。

この部屋で決定したものは、たとえ王であっても覆すことはできないという神聖な場所で、歴代の王も安易にこの場所を使わなかったという。

今代の王、ゼウラシア王がこの場所を使用したのは第10騎士団創設のまさにその時。それだけでも歴史の重みを感じられた。

ゼウラシア王が「宣言の間」を選んだ以上、僕は失敗は許されない。失敗すれば帝国との同盟の機会は二度と訪れない。無論、成功した時の見返りも大きい。

部屋には僕と、ラピリア、ウィックハルトが発案者として参加。

各騎士団長の中にはネルフィアも並んでいる。そんなネルフィアの姿を見て、フォガードさんだけが少しだけ不思議そうな顔をした。

王とゼランド王子以外では、外交官のトップであるサイファ様はもちろん、街道整備でお世話になったオーフックさんの姿もあった。街道の件で出世したらしいという話は耳にしている。他にも文官のトップが一堂に会していた。

さらに貴族院から5名の貴族。

貴族院とは、王の命で貴族を取りまとめる人たちだ。各地の領主、例えばウィックハルトの家も貴族院の傘下にある。

もちろん貴族院が王を無視して勝手に物事を進めることは許されない。されど、元を辿れば王の、トラドの血を引く有力貴族のため、発言権は小さくない。

ただ、貴族院の座る場所は心なしか空気が重い。いずれも沈鬱な顔を隠そうともしていなかった。

最後に、分からないのはボルドラス様の後ろにいる双子。なぜかいる。本当になぜ? このメンツだよ?

そんな僕の疑問は早々に判明するのだけど、その前に。全員が一度立ち上がって王へと一礼。王の開会の宣言だ。

「みな、よく集まってくれた。それぞれがどこまで話を聞いているかは分からぬが、全ての情報を共有し、その上でルデクのためになる決断をすることを、ここにいる全てのものに誓ってもらおう」

ゼウラシア王は重々しく口にしながら、自身の背にある古い鎧と国旗へと振り向くと両の手をかざす。

「始王の御旗、兜に誓う!!!」

「「「「「「「始王の御旗、兜に誓う!!」」」」」

場にいる全ての人間が唱和した。

「盟約は果たされん。では、話し合いを始めたいと思う」

王が着席するのを確認して、僕らも着席。

「さて、では、、、、」

ゼウラシア王が帝国の話し合いを始めようとしたその時。

「本題の前に、一つよろしいですか?」そのように口を挟んだのはボルドラス様だ。

「何かな」少しだけ眉を寄せる王。一方のボルドラス様は穏やかな表情を崩さずに言葉を紡ぐ。

「騎士団の将の編成について、少々提案したいことが、、、」

「聞こう」

「ありがとうございます。では、我が第四騎士団に第10騎士団のグランツ将軍を頂戴したい。代わりに当方の主力であるユイゼスト、メイゼストの双子を提供致します。如何でしょうか?」

ボルドラス様の言葉でようやく腑に落ちた。ああ、だから双子がここにいたのかと。

双子はただ、不敵な笑みで王を見やるのだった。