軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第180話】レイズ=シュタインの一手21 第九の凋落(上)

時は暫し、遡る。

「ノーグロート殿!」

ノーグロートを出迎えるのは屈託のない笑顔を讃えたシャリス。

シャリスは経験を積むために、第一騎士団から第九騎士団に出向しており、ノーグロートと会うのは久しぶりであった。

「シャリス、息災だったか?」

「はい! 皆さんに良くしてもらっています。ルシファル様もお変わりなく?」

左右に振られる尻尾が幻視できるほどのシャリス。その眩しさにノーグロートは目を細める。

「シャリスよ、今日の夜は空けておけよ? ゆっくりと語り明かそうではないか」

「もちろんです! ところでノーグロート様はどのような用件でこちらへ?」

「、、、、、まぁ、ちょっとした任務だ」

「そうですか。では、ヒューメット様のところまで私がご案内いたします!」

元気に先導を請け負うシャリスだったが、ノーグロートはやんわりと拒否。

「いや、それには及ばぬ。まずは用件を先に済ませてからご挨拶に向かう。お前も自分のすべきことを優先するといい」

「、、、わかりました。では夜に」

「ああ、夜に」

ノーグロートは去りゆくシャリスの背中を見つめながら、後数日で永遠の別れとなる若者に、ほんの少しだけ哀れみの視線を投げた。

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シャリスがノーグロートと旧交を温めた翌朝、シャリスはいつもの様に早朝に支度を始める。

昨晩多少はワインを飲んだが、その程度で惰眠を貪るシャリスではない。若くして第一騎士団に配属された自分は、他の者よりもより自分を律するべきだと考えていた。

シャリスは縁故によって第一騎士団に配属されたことに負い目を感じている。

本来であれば、どこかの騎士団で経験を積むのが本人の希望だったのだ。ただ、シャリスの家と親しく、祖父の盟友とも言える方が第一騎士団を引退するにあたって、空いた席にシャリスを強く推薦したため、断るわけにもいかなかったのである。

それでもシャリスは驕ることなく努力した。

若くしてルシファルの側近に取り立てられたのは、決して家柄による物ではない。

最近の第一騎士団はどこか鬱屈した物が漂っている。

シャリスは何とかして栄光ある第一騎士団の輝きを取り戻そうと日々奮闘していたが、そんな様子を見たルシファルが「一度視野を広げてみてはどうか」と提案してきた。

そして、他の騎士団のやりようを学ぶために、第九騎士団への出向を命じられたのである。

シャリスにとって初めての他の騎士団であったが、貴族の子息が多い第九騎士団ではシャリスは好意的に迎えられ、特に不自由なく日々を努めていた。

しかしこの日、そんな生活は終わりを告げる。

「なにやら本部が騒がしいな?」

いつもの様に第九騎士団の本部に出仕すると、入り口がノーグロートの部隊によって固められていた。

「何かあったのか?」

シャリスが聞いても「任務中ですので申し上げられません」とにべもない。

押し通ろうとするも、兵士はシャリスを簡単には通させない。暫しの押し問答の末、シャリスは「私が誰か知っての発言か?」と権力によって無理やり道を開けさせる。あまりやりたくはないが、こうでもしないと埒が明かなかったのだ。

邸内は思いの外静かだった。シャリスは騎士団長であるヒューメットの私邸を兼ねた最上階へと急ぐ。

挨拶もそこそこに入室した部屋にはヒューメットの姿はなく、代わりにノーグロートとその兵士、それから数人の第九騎士団の部隊長が立っていた。

「シャリスか? はて、何人も通すなと命じておいたはずだが?」ノーグロートが不快そうに表情を歪める。

「そんなことよりも一体なにがあったのですが!? ヒューメット様はどちらに!?」

ノーグロートは静かに首を振りながら答える。

「ヒューメット様は亡くなられたよ、昨晩、な」

「ヒューメット様が!? そんな馬鹿な! 昨日もお元気であらせられた! とても信じられません!」

「それはそうであろうな」ノーグロートは動じることなく続ける。「ヒューメット様はご自害されたか、或いは誰かに弑されたのよ」

「なんと!? 誰が、一体何の目的で!?」

そこでノーグロートは両手を広げてわざとらしく大きく首を振った。

「ヒューメット様、、、、いや、ヒューメット=トラドには国家叛逆の恐れあり、そのような訴えがあったので私が確認に来た。その直後にこれでは、な」

「ヒューメット様に限って、そんな、、、、」

「いや、これは国を揺るがす危機だ。王族が保身のために帝国に国を売ろうとしている」

「なにを言っているのです!? それではまるで王も、、、」

「言葉の通りだ」ノーグロートは眉ひとつ動かさずに淡々と述べる。

「何かの間違いでしょう!? いや、その前にヒューメット様がどのように亡くなられたのか、確認させていただきたい。何かわかるかも知れません」

「それには及ばん」

「ノーグロート殿!」

ノーグロートに詰めようとするシャリスは、周りにいた兵士に拘束される。

「無礼な! なにをする!」

振り払おうとするシャリスにノーグロートの方から近づいてきた。

「残念だがシャリス、お前にヒューメット殺害の疑いもかかっている。そんな人間を近づけるわけにはいかんな」

ノーグロートの言葉が一瞬理解できず、シャリスは両腕を掴まれたまま固まるのだった。