軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第176話】レイズ=シュタインの一手17 決別(上)

陣を引き払った。

先頭は僕ら、ロア隊だ。フランクルトの姿もある。

フランクルトは未だ青い顔をしていたけれど、本人の強い意志で僕らの部隊の中にいる、峠は越えた。毒の矢尻を早い段階で抉ったのが功を奏したのだ。

中団はグランツ様と本隊。ジュドさんとルファだけが乗る急拵えの馬車の周辺をグランツ隊が固め、その外をヴィオラ隊長らの兵が囲んでいる。

殿はラピリア隊。ラピリアは、レイズ様の眠る場所にどんな思いを残して出発しただろうか。

急ぐ道程ではあるけれど、建前上は絶対安静のレイズ様の馬車があるだけに、第10騎士団は粛々と進む。

本格的に速度を上げるのはゴルベルの領地を抜けてからだ。

全軍が斜面を降り終えた頃、僕らの視線の先に砂塵が見えた。相手が誰かは分かっている。第二騎士団だ。こちらは第二騎士団が来るのも見越して、ゆっくりと行軍していたのだ。

本来の予定では第10騎士団がゴルベル軍を追撃し、その間に第二騎士団は周辺の砦を荒らして回る役割だった。第10騎士団が動かなければ、当然、何事かと戻ってくるだろうことは容易に予想できる。

グランツ様やラピリアには、ホックさんの対応は僕に任せてほしいと伝えておいた。

「ロアちゃん!」

第二騎士団の先頭を走るホックさんの呼ぶ声に、僕は軽く手を上げた。そうしてホックさんがすぐそこまで来ると、両隊ともに足を止める。

「何かあった、そう考えて良いのかしら?」

「はい。レイズ様が襲われました。幸い命に別状はないのですが、刃には毒が。そのせいでレイズ様は意識を失う時間が多くなってます」

「まさか、レイズが、、、、とにかくレイズに会いたいわ。案内してちょうだい」

心の底から心配そうなホックさんに、僕は小さく首を振る。

「レイズ様を襲ったのは、第10騎士団で伝令兵をしていた男です。申し訳ありませんが、いくらホックさん、、、ニーズホック騎士団長でも、今は会わせることはできません」

「、、、、アタシを疑っているのかしら?」

僕はその質問には答えない。代わりに、

「レイズ様が起きていた時間に、今後の流れについて言付かっています。代理ですみませんが、僕と打ち合わせの時間をいただいてもいいですか?」と伝えた。

ホックさんは少し間を置いて

「分かったわ。何処で?」

「レイズ様の策は極秘事項です、相応に人気のない場所で」

「立ち会うのは貴方だけ?」

「ウィックハルトと、双子が同席します。ホックさんも同じ人数までにしていただけると助かります」

「、、、それも了解よ。じゃあ、早速、陣幕を用意してもらえるかしら?」

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ロア隊の用意した陣幕の中、入ってきたホックさんは少し驚いた顔をする。

「、、、本当にウィックハルトちゃんと、ユイメイだけなのね、、、、」

「そういうホックさんは、レゾールさんだけですか?」

僕は3人までは同行して構わないと伝えたつもりだけど、一緒に来たのは側近のレゾールさんだけだった。

「どの道ここで私を討つつもりなら、何人連れてきても一緒だもの。前置きは良いわ。ロアちゃんは何処まで把握しているのかしら?」

豪胆だな。そして僕がホックさんを疑っていることも分かった上で、その質問をするのか。話が早くて助かるけれど。

「ルシファルがリフレアと組んで企んだ計画は、概ねレイズ様が暴いています。失礼ながら、ホックさんがルシファル側であることも疑っている」

レイズ様が健在と言う前提だ。かなりのハッタリは含まれるけれど、ホックさんが隠すつもりがないならこのまま行こう。

「、、、、流石、レイズ=シュタインと言ったところかしら? それで、わたしたちをどうするつもり?」

「一つ聞いても良いですか?」

「何かしら?」

「なぜ、ルシファルに?」

ここが本当に分からない。第一騎士団と違い、第二騎士団やホックさんがルデクを裏切る理由が見つからない。

「、、、、答える代わりに、ひとつ約束してもらっても良い?」

「内容によります」

「無茶な提案はしない。だから約束して」

ホックさんも譲らない。口を挟んだのは双子だ。

「ロア、こういう時の師匠は無理は言わない」

「聞くだけでも聞いてやれ」

双子を同席させたのは、ホックさんと師弟関係にあったからだ。双子がホックさんの手先という可能性も考えたけど、この2人に関しては、ないなと思った。その双子が言うなら、本当に無茶は言わないのかもしれない。

「じゃあ、聞くだけなら、、、」

「ありがと。ロアちゃんのそう言う柔軟なところ、好きよ。じゃあ条件を伝えるわね」

そこで一度言葉を切ったホックさんは、レゾールさんにちらりと視線を走らせる。

「もし、この先第二騎士団が貴方たちに負けることがあれば、、、、いえ、私が死ぬことがあれば、ロアちゃん、貴方が第二騎士団を引き受けてくれないかしら?」

それは中々に、無茶なお願いだった。