軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第174話】レイズ=シュタインの一手15 悪魔の策

僕の指示によって、レイズ様の眠る陣幕に集められた人たちの顔が並ぶ。

グランツ様とグランツ隊のベクラド隊長、ラピリアとラピリア隊のサーグ隊長。

そして、各中隊が自由に動く際は、レイズ様本隊の側近を担うヴィオラ部隊長。

ヴィオラ隊長は第10騎士団誕生から在籍し、グランツ様と同世代のベテラン隊長。レイズ様の信任も厚い人だ。

それに僕の隊からウィックハルトと、レイズ様の死に目に立ち会った軍医ジュドさんと、ルファ。

さらに第四騎士団のユイゼストとメイゼストの双子。

最後に第八騎士団のネルフィアとサザビーを加えて13人。

今回の話、とにかく知る人間は少ない方がいい。だから各中隊共に1人だけ選んで連れてきてもらった。

双子とネルフィア、サザビーは僕が頼みたい事があったから呼んだ。

後者の4人は放っておくと勝手に調べそうな人たちだからという側面もある。それなら最初から伝えておいた方が面倒が少ない。

皆、双子でさえもレイズ様の死に言葉を無くしていた。

比較的冷静なのはウィックハルトかな? レイズ様との付き合いの浅さもあるだろうけれど、ウィックハルトは一度、同じように騎士団長を失っている。第六騎士団時代に。

僕は、みんなの気持ちが落ち着くのを少し待ってから「すみません。気持ちはわかりますが、話を始めてもよろしいですか?」と努めて冷静に切り出した。

やはり第10騎士団の部隊長たちは、グランツ様と同じように、少し怒ったような顔を僕に向けてくる。

気持ちは分かるよ。僕よりもずっと、レイズ様と戦場を駆けてきた人たちだ。思い出は語り尽くせぬほどあるだろう。でも僕は、これから彼らに過酷な話をしなくてはならない。

「、、、、レイズ様に刺客を送り込んだのは、リフレアと、第一騎士団、ルシファル=ベラスです」

僕の言葉に少し訝しげな顔をする。

「リフレアが我らを裏切ったのは分かっている、目の前で見たからな。だが、第一騎士団というのはなぜだ?」

ヴィオラ隊長の言葉はみんなの気持ちを代弁しているのだろう。ほとんどの人がヴィオラ隊長の質問に小さく頷いた。

「今は説明する時間が惜しいので省略しますが、理由は説明できます」

僕はレイズ様に聞いた、ゼウラシア王と第一騎士団の確執をかいつまんで説明する。

「あの、ルシファルが、、、」絶句はするけれど、誰からも強い否定の意見は出ない。第一騎士団と第10騎士団の関係によるところが大きいのかもしれない。

「ルシファルはオークルの砦に入ったはずだな、、、まさか!」

「ベクラド隊長の懸念の通りだと思います。ルシファルはリフレアと通じて、リフレアの兵を引き入れるために砦を占拠したのではないかと思います。いえ、おそらく占拠したのです」

「ではリフレアが攻めてくる、と」

「はい。間違いなく。なので早急に手を打たなくてはなりません。まず第一騎士団とリフレアを牽制して足を鈍らせます、それから王都の防衛を強化し、さらに我々はいち早くルデクに戻らなくてはならない、ただし、相応の戦果をゴルベル内で確保した上で」

「、、、理想的だが、ただの空論ではないか?」グランツ様が首を傾げる。

こういう時に軽口を叩きそうなラピリアはただ黙って、僕の話を聞いている。

「できます。事前に手は打ってあります。そのためにここにネルフィアとサザビーを呼びました。ネルフィア、サザビー、君たちに頼みがある」

「なんでしょうか?」少し離れた場所でおとなしくしていたネルフィアの表情は、暗がりでよくわからない。

「どちらか一人、先行して王都へ帰還してほしい。君たちならできるはずだ。そして第六騎士団をホッケハルンの砦に移動させてほしい」

「、、、、オークルの砦が奪われているのが事実なら、北から来る敵に対してホッケハルンの砦は最大の要衝ですが、第六騎士団を移せば王都が空になるのでは?」

「そのための街道と、伝馬箱さ。王都から伝令を放ち、第三騎士団をゲードランドから王都へ呼び寄せて。同時に第七騎士団と第五騎士団にも伝令を放って状況を伝え、すぐに動ける体制を整えるように、と」

「どちらか一人ということは、もう一人は別の用があるということですか?」サザビーは燃えるような瞳で僕を見ている。

「うん。もう一人には僕が考えた別の策を成す手伝いをしてほしい」

そう言って、考えていた策を話す。

「、、、、、なるほど、、、それは、不謹慎ですが面白い策ですね」

「できる?」

僕の言葉に答えずに、サザビーはネルフィアを見る。

「俺が残っていいですか?」

「そうですね。その方が良いでしょう」

2人の中で答えが出たようだ。

「ところでロア殿は、”そのための”と言いましたが、当初からこれを見込んで?」暗がりの中からネルフィアの視線だけが光る。

「説明する時間が惜しいので、今は、「以前から」とだけ」

「わかりました、、、確かに今、その話をしている場合ではありませんね。伝令の件、確かに承りました」

「そうだ、ネルフィア、それからもう一つ、いや、二つ」

「なんでしょう?」

「瓶詰めの時にゼウラシア王から貰った権利を使いたい。僕が帰還したらすぐに謁見できるようにしてほしい」

「、、、、そんな権利を使わずとも、王から呼び出されると思いますが、承りました。それと、もう一つは?」

「それは後で説明するよ。ちょっと話が長くなるから。まずは他の話を優先したい」

僕はそこでネルフィアとの話を一旦切ると、双子に視線を移す。

「ユイメイはキツァルの砦でボルドラス様への説明を頼みたい。僕らは立ち寄っている暇がないから。そして第四騎士団からは噂を流してもらいたい」

「説明は分かった」

「噂とはなんだ?」

「それはこれから話すよ。さて、ここからはレイズ様の残した最後の策です」

僕が全員を見渡すと、場の真剣さが増す。

「レイズ様の遺体を、ここに埋めます。そして替え玉を馬車に乗せて、先へ進みます」

「なっ!?」

誰かが剣呑な声をあげる。

ここからが正念場だ。レイズ様の死を無駄にしないためにも。