軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第172話】レイズ=シュタインの一手13 秘密の会話(下)

王が親衛隊である第一騎士団を潰すつもりだった。

驚く僕を前に、レイズ様はその経緯を淡々と話し始める。

ーーー第10騎士団の始まりが、帝国の侵攻に対する臨時の騎士団であることは話をしたな。第一騎士団が動かなかった理由、表向きは”王都の守護者である”という建前からだが、これには裏がある。

第一騎士団は平和な時代、騎士団における到達点として存在していた。

各騎士団で功績を積んだ者たちが、こぞって第一騎士団の席を争ったのだ。

第一騎士団は給金も違えば、汚れ仕事もない。式典で荘厳な装備を身にまとって、人々の羨望の眼差しを一身に受けるのが役割だ。彼らには他の騎士団とは格が違うという自負があった。

必然的に、付き合いは中央にいる貴族や官僚が増えてくる。そうして第一騎士団は徐々に毒されていったのだろう。

帝国が宣戦を布告しルデク存亡の危機が差し迫っているにも関わらず、第一騎士団は帝国の動きを政治の道具にしようとしたのだ。より、自分達の権威を高めるために。

要は王が出撃を請い願ったという事実を望んだ。まさに、増長ここに際まれりといったところだ。

王が、第一騎士団を見限る最初の出来事が、これだ。

この期に及んで自らの地位と権力に拘泥する騎士団など、もはや騎士ではない。失望した王は、自ら第10騎士団を創り出し、帝国から国を守らんとした。

結果はロアも知っての通りだ。

そして帝国に呼応するようにゴルベルが牙を剥き、一時的にキツァルの砦が陥落した時、第一騎士団は手のひらを返すように自らの出撃を主張したのだ。

キツァルの砦の奪還には成功したが、これも王の不興を買った。「自分の作った第10騎士団が活躍したら、慌てて功績を求め王都を離れるのか。王都の守護者ではなかったのか」と。

王はご決断された。権力に胡坐をかいた第一騎士団は解体しようと。無論、突然解散とすれば混乱が起きる。この戦時下においてそのような愚かな真似はできない。故に、ゆっくりと弱体化を目指した。

例えば式典への護衛、理由をつけられる時は第一騎士団を王都にとどめ置き始めた。

例えば精鋭の受け入れ、戦時下を理由に優秀な兵士の受け皿を第10騎士団として、第一騎士団の戦力を削ぎ始めた。

ロア、第10騎士団のお前をゼランド王子の直臣にしたのもその一環だ。王は様々な搦手を使って、第一騎士団という存在を有名無実化しようとしていたのだ。

第一騎士団がお飾りの存在を望むのであれば、その通りにしてやろうと。ーーーーーーー

「おそらくルシファルもそれは感じていたのだろう、そしてそこを、リフレアに付け込まれた。愚かな。親衛隊でありながら、平気で裏切るような者達を、後々リフレアが重用する訳がない」

、、、、、だから第一騎士団は丸ごとリフレアに寝返ったのか。仮にも王の親衛隊が騎士団ごと反旗を翻したのは少し不思議だったんだ。権力に染まり切った第一騎士団の全てが、自分の保身のために祖国を売ったのだ。

なら、ゼウラシア王の考えは正しかったと言える。もはや騎士団として腐っている。彼らがリフレアで使い潰されたことは、心のどこかでかわいそうとも思っていたけれど、この話を聞いた後ではなんの感情も湧いてこない。

「、、、それで、この後はどうするのだ? お前の知る歴史ではどうなる?」

レイズ様の言葉で僕は思考を止める

「はっきり言って歴史は少しずつ変わってきています。僕の知る限り、この遠征でリフレアが旗幟を鮮明にすることはなかったはずです。なら、北部へ移動した第一騎士団もここで反乱の狼煙をあげるかもしれません。急ぎ、ルデクに戻りたいところですが、、」

そこまで言って言葉を止める。レイズ様の体調を考えれば無理はできない。

かといって兵を割るのも下策。

、、、一度退いたとはいえ、リフレアが体制を整えて再度やってくる可能性もあり得る。それに、兵を割ってこちらの数が減った時の第二騎士団の動きも気になる。

いや、待てよ、王都の守りに関しては今からでも対応できるぞ。第六騎士団と、それに作ったばかりの伝馬箱がある。誰かに急ぎ王都まで馬を走らせて、、、それから、、、、

「私の体調のことは考えずとも良い」

レイズ様の言葉に僕は眉を顰める。

「ですが、、、、、」

「私のことを除いて、ロア、お前ならここからどうするかを聞きたい」

僕は、今考えうる最良の選択肢を挙げてみる。

黙って聞いていたレイズ様は、僕が話し終わると「悪くない」と言い、「お前は本当に未来を知るのだな」と、小さく息を吐いた。

それから、「ひとつ、策を授ける」と口にする。

僕に話したその内容は、到底受け入れられる物じゃなかった。絶対に使いたくない策だ。

だけど。

「頼むぞ」という真剣な顔を見れば、断ることはできない。

だから、僕か。この話を聞かせるために、僕だけが呼ばれたのか。

「さあ、話は終わりだ。長く疑問に思っていたことが分かりスッキリした。そろそろグランツやラピリアを呼ばんと、ロアばかり! と怒りそうだ。呼んできてくれ」

「、、、、、、、はい」僕はそれだけ答えるのが精一杯だ。

その夜。

ごく僅かな側近に見送られ、ルデクを支えた希代の名将、レイズ=シュタイン、逝く。

その穏やかな死に顔には、全てやり尽くしたような微かな満足感が漂っていた。