軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第16話】2人の文官①

王様とお茶会というか会談というか、尋問というかが終わった翌々日。

レイズ様に呼び出された僕を待っていたのは、王様が用意した2人の文官だった。

「ネルフィアと申します」

「サザビーです」

え、顔で選んだの? ってくらい美男美女の2人。特にネルフィアと名乗った女性の方は見覚えがある。お茶会の時に部屋の隅に立っていた側仕えの人だ。

「あの、ネルフィアさんは王の側仕えの方では?」念のため確認した僕に

「私は書記官としてあの場におりました。側仕えではないのですよ」とふふふと笑う。

なんで王の書記官が、と思ったけれど、すぐに、ああ。と思い当たる。瓶詰めは当面極秘の計画だ。信頼出来る者を送ると言っていた。王の書記官を務めるほどの人なら適任だろう。

「あの、それから今後はロア様が私たちの上官になりますので、ネルフィア、サザビーと呼び捨てでお願いいたします」

「えっ? 王様の書記官なら貴方の方が上では? 呼び捨ては、、、それに様付けも、、」万年平文官の僕は、様付けをするのには慣れていても、呼び捨てや様付けされるのはどうにも慣れない。

視線でレイズ様に助けを求めるも「私の補助をするのであれば、遅かれ早かれ慣れるしかない」とあっさりしたものだ。

結局僕は押し切られるままに、ネルフィアとサザビーを部下に迎えることとなった。

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「ここが瓶詰めの実験室ですか?」

「あ、いえ。実験室というか、第10騎士団の食料保管庫です」

「それじゃあ、厳重な鍵がかかるようになっているということですね」

「いえ? 鍵自体見かけたことないです」

「、、、、、軍事機密ですよ?」

少し呆れたサザビーの言葉に、ぐうの音も出ない。

「レイズ様にお願いして、部屋を用意した方がいいのでしょうか、、、」言われた僕はどうするべきかと頭を捻る。けれど

「いえ、むしろ当面はこのままでも良いと思いますよ?」と言うのはネルフィアだ。

「でも、サザビーの言う通り隠したほうがいいんじゃ、、、」

「隠そうとすればするほど、どこかから漏れるものです。「何かこそこそやっているけれど、あれはなんだろう」と。人は興味を惹かれた物にはあれこれと想像します。良い場所が見つかるまでは、このままこの場所の隅で作業していれば、誰も気に留めないでしょう」

「はー、そういうものですか」と感心する僕。

「ええ。堂々としていればいいのです」

ネルフィアのなんだか妙に説得力のある言葉に、サザビーも折れる。

「、、、、一理ありますね。では、やはりこのままで。私の思慮が足りませんでした」

「ああ、いえ。僕はそういう事にあまり気が回らないので、気になったことがあったら言ってください」

「畏まりました」

うーん。なんだかやっぱり落ち着かないなぁ。

そう思っているのは僕だけではないみたいだ。ルファやディックも所在なさげに状況を見守っていた。嫌がっているというよりも、どうしていいか分からない感じだ。

ルファはともかく、なぜディックまで。どちらかといえば、文官は兵士よりも立場が下なのが一般的だけど?

けれどこのままギクシャクするのは良くないなぁ。何か考えないと、、、、そうだ!

「あのさ、みんな。今日の夜空いてる?」

「突然どうされたんです?」

「今後この5人で仕事していくんだからさ、顔合わせも兼ねて街に夕食を食べに行かない?」

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交易の利益によって、この大陸の中でも有数の繁華街を抱えるルデクトラド。その街の夕食時はとても賑やかだ。

様々な食堂が声を張り上げて客を呼び込んでいて、なんだか楽しい気分になってくる。

「ルファはあまり外食はしないのかな?」

興味深そうにキョロキョロと街並みを眺めるルファ。

「夜の外出は禁止されているから」と言う。あれ、もしかして連れ出したら不味かったのかな?

僕の不安にフルフルと首を振る。

「夜の街は危ないからって」なるほど、普通の理由だった。

食べたいものを募集した結果、サザビーが「色々出せるし味もお勧めの店がある」と言うので、サザビーの案内で街を進む。

「あ、ここですよ」と指差したのは小さいけれど小綺麗な宿だ。一階は食堂になっていて、宿泊客でなくても利用できるそうだ。すでに食堂は賑やかな声が聞こえており、美味しそうな香りも漂ってきている。

看板を見ると「トランザの宿」とあった。

「こんばんは」慣れた風に入って行くサザビーの顔を見た給仕の女の娘の表情が輝いた。イケメンは強い。

「サザビーさん! いらっしゃいませ! あれ、今日は団体さんですね」

「うん。スールちゃん、席あるかな?」僕らに話すよりも随分と砕けた感じで話しかけるサザビー。僕らもそのくらいの方が楽なんだけど。

「大丈夫ですよ! 向こうの奥にあるテーブルへどうぞ!」

勧められたテーブルに着くと、すぐに花の香りのするお茶が供された。鼻腔を通り抜ける香りが、一日の疲れを癒してくれる。

「さて、飲み物はどうしますか?」スールと呼ばれた給仕の女性に聞かれて

「僕は最初だけお酒をもらおうかな、あんまり強くないやつ」と僕。

「俺は普通に飲みます」というサザビーは、実際結構飲みそうだ。

「俺は果実水でいいやぁ。食べる方に集中したいなぁ」ディックらしい理由。

「私も一杯だけいただきます」とネルフィアが言って

「ルファは果実水でいいよね?」と僕が聞くと、ルファはこくりと頷いた。

「スールちゃん、料理も適当に持ってきて。金額は気にしなくていいからさ!」

そう、機密に関わる仕事なので、一応レイズ様に親睦会をしたいと報告した。するとなんと、本日の費用を持ってくれたのだ。「当然だが、外で瓶詰めの話はしないように」と釘を刺されたけれど、大変ありがたい。

こうして僕らは届いたグラスを高々に掲げて、乾杯をしたのだった。