軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第126話】帝国騒動13 絶品のポージュ

フランクルトを連れ帰った僕ら。僕はこのままザックハート様に引き渡して終わりだと思っていたのだけど、ザックハート様の答えは少々意外なものだった。

「フランクルトはロアたちが連れてゆき、ルデクトラドまで同行させるのが良いだろう」

「しかし、亡命希望とはいえ、我が国が受けいれる前に連れ回すのはどうかと、、、」ウィックハルトが疑問を呈する。僕もそう思う。

ウィックハルトの問いに、ザックハート様は3つの理由をあげた。

1つ、まだルデクが受け入れを宣言していないフランクルトを安易に王都へ連れてゆくことはできない。また、万が一敵の策略だった場合、ルデクにとって最重要都市の一つであるゲードランドに留め置くことは、たとえ海上待機であろうと、この街を守る者として許可できない。かといって半端な砦に置いておくくらいなら、第10騎士団の監視下にあった方が良い。

2つ、そもそも王都に連れて行ったところで、連れ帰ってきた第10騎士団、具体的には僕やラピリア様など主だった者たちの事情聴取が行われるまでは話は進まない。なれば、僕らが王都に帰る時に一緒に連れて行ったほうが効率が良い。

3つ。ゲードランドに 愛娘(ルファ) がいるのに、怪しい男を置いておくつもりはない。

、、、、、3つ目で突然残念な感じになった。

「ザックお義父様、私、帝国までルルリアを見送りに行くつもりだよ?」

「なんと!? よし、分かった、フランクルトの身柄はワシが預かる!」

ダメだこの人。

「、、、、分かりました。フランクルトはとりあえず連れてゆくことにします。」

「ならばワシも同行する!」と言い張るザックハート様だったけれど、右腕であるべイリューズさんに「この間怒られたばかりじゃないですか」と突っ込まれて「ぐぬぬ」と呻いて、ノースヴェル様に呆れられていた。

ともあれ。

「それじゃあな、今度こそ次に会う時はお前の乗った船を沈める時だ」

「ご安心ください。そちらの船の皆様が溺れないように、浮き輪はたくさん用意してから参りますね」

と、もはや一周回って仲良しなノースヴェル様とルルリアの別れの挨拶を眺め終えると、僕らはゲードランドから出発する。

「もう数日はゆっくりしても良いのではないか」というザックハート様であったけれど、こちらはフィレマスという罪人を連れているのである。なるべく早く帝国に引き渡したい。

とりあえずフランクルトの件の伝令はザックハート様に任せ、僕らは一路、東へ。

「それにしても、私としても、もう数日くらいはゲードランドに滞在したいところだったわ」

そんな風に言うのはルルリアだ。

「なんで? 色々なお店のポージュを楽しみたかったとか?」僕の軽口に対して

「それもあるけれど、前に言ったでしょ、グリードル帝国にゲードランドに負けない港を造るって。それにはやっぱり実際に一番の港を見るのが勉強になるもの」

、、、、あれ、冗談じゃなかったのか。

「僕の妻は素晴らしいでしょう」と、ふふんと胸を張るツェツィー。いや、すごいけれどさ、もし皇帝が実力主義で後継を選ぶなら、実子を差し置いてルルリアが選ばれるような可能性もあるんじゃないの? 君の立場大丈夫?

今回のフィレマスの一件によって、ルルリアは帝国内で大いに存在感を示したと聞いている。皇帝の覚えも良いようだ。或いはルルリアの実力も測るために、今回の同行を許した? ガフォル将軍も口を出さなかったことを考えれば、あり得なくもない。

「それにしてもまたお別れになるのは寂しいね」

ルファがそんなことを口にして「ああもう、ルファは可愛いんだから」と馬上から抱きつく真似をするルルリアと、馬から落っこちないかハラハラしながら「危ないよ!」というツェツィー。

平和である。

ルルリアがゼウラシア王に喧嘩を売ってみたり、フランクルトという珍客を連れることになったりしたけれど、行きも帰りも大きな問題はなくヨーロース回廊最寄りの砦へと辿り着く。

その夜は、ささやかな別れの祝宴だ。

ツェツィーにしろルルリアにしろ、流石に今後そう何度も顔を合わせることはないだろう。場合によっては今生の別れとなる人もいるかもしれない。

「本当に色々、、、手紙の事から、お世話になりました」

ツェツィーが改めて僕に御礼を伝えてくる。

「いや、手紙の件に関してはたまたま知った情報だから。それに敵国の僕の言葉を信用した君たちが凄いのであって、僕は何もしていないよ」

実際のところ、僕は単にフィレマスの騒動に関わらなければそれで良しと考えていた。騒動の中心に躍り出るというのは完全に予想外だ。それも夫婦揃って。

なので僕の言葉は掛け値なしの本音なのだ。それに比べれば僕のやった事など、ほんの僅かな手助けにすぎない。

「この借りはいずれ必ず」

そんな風に気負われても困る。本当に大したことはしていない。そんなツェツィーに対してルルリアが笑う。

「あら、ツェツィー、大丈夫よ。ちゃんとロアへのお礼は私が考えているから」

「へえ、どんなのだい?」

ツェツィーの返答に、ルルリアは胸を張る、ルルリアが何を言うのか僕も少し気になった。

「今度、私が作った絶品のポージュをご馳走してあげる! これで借りにお釣りがくるわ!」

その言葉を聞いて僕らはみんなで笑ってしまった。

それは確かに、考えうる中で最上のお返しだ。

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帝国には既に連絡が行っており、迎えに上がった時と同様に、ガフォル将軍率いる帝国軍が待ち構えていた。

「ガフォル将軍、お約束通り、ツェツェドラ皇子、ルルリア姫の無事の帰還および、罪人、フィレマスの身柄を引き渡しいたします」

「確かに。感謝いたす」

そのようにいうガフォル将軍の目元はクマが目立つ。心配であまり眠れなかったかもしれない。

「ロア殿、お世話になりました。また、いずれ」

「約束通り最高のポージュをご馳走するから楽しみにしていてね! ルファも、またね! ラピリアさんも!」

「ロア隊、ラピリア隊に、敬礼!!」

ガフォル将軍の号令で一斉に敬礼をする帝国軍に見送られ、僕らは無事に任務を終えたのだった。