軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第12話】改革! 食料事情!③

瓶詰めを仕込んでから10日後のこと。

「あれ? ディック、また来てるの?」

毎日のようにというか、欠かさず毎日食料庫に通い詰めるディックとは気のおけない関係だ。

「いや〜、瓶詰めが気になってなぁ。今日で10日だろ? そろそろ開けるのか?」

「そうだね。いくつかは試しに開けてみるつもり。ルファ、折角だから料理して食べよう。厨房を借りてきてくれる?」

「うん。分かった」と駆けて行くルファ。ルファとも大分打ち解けることができた。

「それじゃあディック、運ぶの手伝ってよ」

「いいぞ〜、その代わりにサボってたんじゃなくて、ロアの手伝いをしていたってことにしてくれよ〜」

やっぱりサボってたか。まあいいや。

そうしてくだらない話をしながらいくつかの瓶を持って食堂に行くと、なんだか空気に緊張感がある。

昼下がりの午後、どうしたんだろうと思ったけれど、原因はすぐに判明した。レイズ様が鎮座していたのである。グランツ様とラピリア様も一緒だ。レイズ様はともかく、2人の表情は真剣だ。

「やあ、ロア。私の知らないところで随分と変わった事をしているようだが、、、?」

「え?」

確か、保存食の管理にいちいち報告はいらないってグランツ様から聞いたけれど、、、そう思ってグランツ様を見れば、グランツ様はスッと視線を逸らす。ずるい!

「あー、、、、すみません。。。。まだ実験段階だったので、成功したら報告するつもりでした」嘘はついていない。これはあくまで試験段階の品々だ。報告には早いと思っていた。

「なるほどな。で、今日は10日間寝かせたものを味見すると言うわけか」

なぜそれを知っているのか、その答えは一つしかない。僕はラピリア様に視線を走らせる。

顔をスッと逸らされた。くっ!

「、、、そうですが、結論を出すにはまだこれからあと5日は保存するつもりですし、本当の意味でちゃんとした答えが出るのはもう少し先ですよ?」

そういう僕に、レイズ様は毅然と言葉を発する。

「構わん。試みとしてはかなり面白い。もし、この実験が成功するようであれば、騎士団の遠征はもとより船乗りの栄養状態にも大きな影響を及ぼすはずだ。輸出にも使えるかも知れぬ。そうなれば我が国の得る利益は計り知れない」

レイズ様の言葉を聞いて、僕は息を呑んだ。

流石、と言うべきだろう。

今から30年後、瓶詰めが誕生するきっかけは、帝国の外交事情にある。自領内の港からより遠くの国との交易を望み、携帯食に力を入れた結果が瓶詰めだ。

結果的に、船乗りのみならず、作物の育たない冬場でも野菜を摂ることができる手頃な方法として市民に広まってゆく。兵士の遠征用というのはどちらかと言えばおまけみたいなもの。

ラピリア様には最低限の説明しかしていない。にもかかわらず、レイズ様は瓶詰めの価値に気付いたのだ。恐ろしい。

「、、、そうかもしれません」僕はそのように言うにとどまった。

「ディックが持っているのが瓶詰めだな、ジャムはラピリアから見せてもらったから良い、ジャム以外のものを見せよ」

「はっ!」絶賛サボり中のディックは殊更腹から声を出して、レイズ様に幾つかの瓶詰めを差し出した。手にした瓶詰めを試すように眺めるレイズ様。

「これはいくつ作ったのだ?」と僕に聞いてくる。

「それぞれ5個ずつ作りました。でも、いくつかは失敗しました」

空気の抜きかたが甘かったのか、10本近い瓶詰めが今日に至るまでにダメになった。ダメになった瓶詰めはすぐに分かった。中の水が濁ってきたのだ。蓋を開けてみると明らかに腐臭がしたので、これらは全て廃棄した。

「なるほど」

「あ、でも、ここにあるものも成功しているとは限らないです。味見だけで腹を壊すかもしれません」

「構わん。全て開封して皿に載せて持ってこい。これはこのまま食うものか?」

「そのままでも食べられますが、調理してみようかと思っていたのですが、、、」

「では、そのままと調理したもの、両方持ってくるがよい」

「、、、、まさかとは思いますが、食べるんですか? レイズ様が?」

「当然だろう。そのためにここに来たのだ。ラピリアの話を聞いて、試すのであれば本日だろうと予測したからな」

、、、、、ラピリア様、、、、再び僕の視線を避けて、あらぬ方向を見つめるラピリア様。

「あ、そういえばラピリア様が持って行ったジャムは3日、5日、7日と試すと言ってましたっけ? どうでしたか?」

僕の質問に答えたのはラピリア様でなく、レイズ様だ。

「その結果を受けて、私がここにいる」

、、、、つまり成功したと言うことか。これはいよいよ諦めるしかない。

「わかりました。ご用意しますけど、お腹が痛くなっても知りませんよ」

レイズ様は僕の言葉に、ほんの一瞬、悪戯っぽい笑みを見せた。