軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第103話】ひと時の休息

ゴルベルの王都に「撤退」の一報が届いたのは、キツァルの砦の決着から2日後のことだった。

「なんだと!! 話が違うではないか! おい! すぐに軍師を呼べ!!」

激昂するゴルベル王に、伝令は非常に話しにくそうな顔をする。

「何をぼうっとしている! 軍師を呼べと言っているのだ!!」

「王よ、、、、それが、サクリ様の姿がございません」

「いない? いないとはどう言うことだ?」

「は、王がお呼びになられると思い、別の者を向かわせたのですが、部屋はもぬけの殻だと」

「もぬけの殻というのはどういうことか? それではまるで逃げる準備を調えていなくなったようではないか!?」

「、、、はっ」

「はっ、ではない! すぐに追っ手を手配せよ!! 四肢を切り落としてでも連れてこい!!」

謁見の間にゴルベル王の怒声が響き渡った。

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「ムナールよ、そろそろ気づいた頃かの?」

「そうですな。よほどの阿呆でなければ」

サクリとムナールは王都から遠く離れた場所で、馬の速度を落としていた。2人はゼッタ平原での戦いが始まった頃には、すでに最前線のヒースの砦の近くの街に滞在していた。

4日目にゼーガベインの軍が崩壊したのを確認すると、そのまま街を出て王都とは逆の方へ向かっている。

「しかし、普通にやれば勝てる戦を、どうしたらあのように無様に負けることができるのか」サクリは吐き捨てる。

「やはり、今回も第10騎士団絡みでしたな」

「全く、忌々しい男だ”レイズ=シュタイン”め! だがまぁ、ちょっとした”置き土産”もしておいたからのう。喜んでくれると良いが」

クツクツと暗い笑いをしながら迷いなく進むサクリ。

「あのお方にはどのようにお話しされますか?」

「頃合いであった、としか言いようがなかろうな。もう少し時間を稼げるかと思ったが、ああも間抜けが揃っておったのでは、、、あの国も長くはあるまい」

2人の進む目と鼻の先には、リフレア神聖国の国境が見えていた。

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ゼッタ平原の戦いから帰還した僕は、とにかくただただ、グデッとしていた。今回は流石に頭も体も疲れ切ってしまった。

戻ってきて早々に「せっかくだから復習も兼ねて、ニーズホック様の用兵をフレイン隊にも伝えたい」というリュゼルの言葉を聞いて、武官と文官の大きな隔たりを感じたものだ。

今回の戦い、僕の知っている未来ほどではないけれど、第10騎士団にも相応の被害が出た。砦の規模が小さかった南部の戦いでは何度か野戦になったらしい。

今回の第10騎士団の被害は負傷者を含めて2000人ほど。死者はその一割。第四騎士団は8000のうち、エレンの砦を守備した兵も含めて、5000近い被害が出ているので、それに比べるとかなりマシな状況ではあった。

第四騎士団の状況を考えれば、早急に代わりの騎士団と配置を入れ替えたいところだけど、西側にいる騎士団では、第六騎士団は再建中、第七騎士団は第六騎士団の代わりにハクシャ方面を請け負っているので、すぐに動ける騎士団がない。

結局、ゴルベルも相当な被害を出しての撤退であるので、早々に攻めてくることはないと判断し、当面は第二騎士団が砦に入って第四騎士団との連合で凌ぐことになった。

さらに第四騎士団、第六騎士団、第10騎士団の欠員補充のために、緊急募兵が行われることも決まっている。

僕の知る限りは、ここからしばらくゴルベルと大きな戦いはないはずだ。第四騎士団にはじっくりと回復してほしいものだ。

大仕事を終えたばかりの第10騎士団も、よほどの事がなければ年内の出陣はないと通達されているため、少しのんびりとした空気が漂っている。

今回の功績を踏まえ、僕にはロア隊として部屋があてがわれることになった。

現在僕の部屋ではルファとゼランド王子と、ザックハート様と、そしてユイメイの双子が大騒ぎしており、混沌としている。知らぬ人が入ってきたら、多分、逃げ出すと思う。

ザックハート様はルファを心配して、加えてルファの活躍を聞いていても立ってもいられなくなり、馬を飛ばしてやってきた。年末に合わせてちゃんと休みを取って来たらしい。

ゼランド王子はもう本当に、当たり前のように毎日遊びに来ている。こちらもちゃんと勉強の時間を終えてゼウラシア王の許可を得ているので、放っておいている。

そして双子だけど、こちらは第四騎士団を代表して王都に報告にやってきたのである。そのまま帰らずにこの部屋に入り浸っているのは意味が分からないけれど。

「第四騎士団が大変な時に帰らなくていいの?」と聞いたら。

「ゆっくりしてこいと言われたから」

「全く問題がない」

とのことだ。双子もかなり頑張ったから、ボルドラス様からのご褒美なのだろう。と思っていたら、ウィックハルト曰く「あの二人はすぐ悪戯に興じるので…」とのことで、むしろ再建の邪魔にならないように遠ざけられた説が強まった。

大変なのはルファだ。

ザックハート様がやってきた2日前から、ザックハート様とゼランド王子と、さらにユイメイの間でルファの争奪戦が始まった。

立場で言えばゼランド王子、ザックハート様、ユイメイの順だけど、王をも怒鳴るザックハート様と、基本的に我が道をゆく双子である、相手の格など一切忖度しない。

ウィックハルトがいればお互いを宥めつつ折衷案を出してくれそうだけど、今日はディックとネルフィアと共に食糧庫の在庫管理をお願いしている。

なお、先ほど顔を出したサザビーは、この空間を一瞥した瞬間に逃げた。あいつめ。

「わしの娘だと言っておろうが! わしはわざわざ忙しい中やって来たのだ! 譲らんか!」

「私たちは頑張った」

「私たちにこそ癒しが必要、譲るべき」

「あのう、、、僕もルファのことはとても心配していたので、、、、」

「やるか!」

「上等だ!」

「モーニングスターのサビにしてやる!」

「あの! 暴力は、、、!」

いよいよ煮詰まってきたので、流石に止めないとなぁとぼんやり見つめていると、ルファがキレた。

「いい加減にしなさい! なんで喧嘩するの!? ちょっとみんな、そこに正座!」

「じゃが、、、」

「正座!!!」

「「「「はい」」」」

この国の王子と、騎士団の重鎮と、第四騎士団の懐刀が少女の前で揃って正座をするのを見ながら、僕は「ふわぁ」と一つ、あくびをするのだった。