作品タイトル不明
23 卵はきっと手に入れますわ!(1)
アセリアとハルムは、村へ向かった。
鶏を育てているというオエグさんと会うためだ。
手には、昨日畑で手に入れた、ルッコラとチャイブを少し持ってきた。
これで卵と交換してもらえれば今日は卵が食べられる。
村はもうすっかり目覚めていた。
川のせせらぎ、鳥の声。女性達の笑い声。
川で洗濯をする音。それに、どこかから麦を挽く石臼の音がする。
家々からは食事を作っているのか、細い煙が立ち昇っている。
二人は、村の向こうにある農場へ向かうため、村の広場を横切って行く。
「この先ですよ、お嬢様」
「ええ」
ハルムに言われ、そちらの方を見るけれど、特に何があるわけでもない。
小さな村のことで、村はずれだといってもあっという間に着いてしまう。
「ここですの?」
「そのようですね」
目の前にはやはり何もない。
いや、よく見れば、腰までの木の柵が張り巡らされてはいるようだ。中は広いが、ただ広い草原にしか見えない。
「ここが、唯一の農場ですの?」
「そうですね」
牛や馬の姿は見えない。
以前、視察で農場に行ったときは、馬に乗せてもらったものだった。
ここでは、遠く、鶏がコケコケと歩いているようだけれど、それだけだ。
二人、柵に沿って歩いていく。
農場の中には、時々鶏が見えた。
けれど、一向に牛や馬の姿は見えない。
そして、牛や馬の姿は見えないまま、門に着いてしまった。
門の向こうにあるのは、普通の民家。それに、大きな鶏小屋。
その向こうに、ンモ〜〜〜〜〜〜と声が聞こえる建物があるので、どうやら牛はいるようだ。
「ごきげんよう」
門を潜りながら、声を張り上げる。
「どなたかいらっしゃいません?」
すると鶏小屋の裏手から、一人の女性が出てきた。
「見ない顔だけど、誰だい?」
力の強そうなおばさまだ。
エプロンに藁が付いているところを見ると、餌でもやっていたのだろうか。
「わたくしは、昨日からこの村にお世話になっているアセリアといいますの」
「私は、ハルムといいます」
「オエグさん、ですわね」
「確かに私はオエグだが。何か用かい」
「卵を交換していただけると伺いましたの」
「そうだね。上品なお嬢さん。卵と牛乳はうちだね」
オエグさんはふいっと空を見上げた。
「私の好きなものと交換なら、卵も牛乳もあげてもいいよ。もし雛が孵れば、雛をやることもある」
確かに、村には鶏を飼う家が所々あるようだった。
家で飼えれば卵を産むだろうか。
「好きなもの、ですの?ルッコラやチャイブではどうですの」
「もっと甘いものが好きだね」
「甘いもの」
アセリアは少し首を傾げた。
甘いものは思いつかない。そもそもこの村に来て食べたものといえば、野菜のスープにパンくらいのものだ。
「甘いものがありますの?ハルムはわかる?」
「いえ、私も甘いものがあるとは知りませんでしたね」
「それってなんですの?」
素直にオエグさんにそう尋ねるけれど、オエグさんは、
「なぁんだったかねぇ」
なんてとぼけている。
当ててごらんなさいということですわね。わたくしが……、試されている……!
卵を手に入れるためには、それを持ってきた方が良さそうだ。
「探しましょう、お嬢様」
ハルムもなんだかやる気ですわね。
「ええ。じゃあ、一旦、広場の方へ戻りましょうか」