軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第37話 知ってる食材でした

「またたくさん持って帰ってきたなぁ」

僕は大量の魔石を眺めながら呟く。

その中にはかなり大きなものも幾つか交じっている。

しばらく冒険に出ずっぱりだったので、その成果だ。

ありがたく使わせてもらうとしよう。

―――――――――――

ジオの家庭菜園

レベル25 49/125

菜園面積:1000/840000000

スキル:塀生成 防壁生成 ガーディアン生成 メガガーディアン生成 菜園隠蔽 菜園間転移 菜園移動

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〈レベルが上がりました〉

〈スキル:菜園移動を習得しました〉

〈新たな作物の栽培が可能になりました〉

レベルが25まで上がったようだ。

「菜園移動? 似てるけど菜園間転移と何が違うんだ?」

そもそも菜園間転移はどういうわけか使おうとしても使うことができなかった。

菜園移動はどうなんだろう。

菜園移動というからには、菜園そのものを移動させることができるということだろうか?

……うん、ちょっと意味が分からない。

さすがにこれが移動するなんて――

〈移動モードに移行しますか?〉

い、移動モード?

よく分からないけど、はい。

試しに頷いてみた次の瞬間、突然、身体が三十センチほど浮き上がったような気がした。

「ニャッ!?」

ミルクが驚いて僕に抱き着いてくる。

「え? 何が起こったの?」

菜園を覗いてみるけれど、特に変化は見当たらない。

いや……隣の家の屋根、ちょっとだけ低くなってないか?

僕は嫌な予感がして家の外に飛び出す。

そして目撃してしまった。

我が家の土地が丸ごと三十センチほど隆起しているのを。

「……は?」

〈菜園を移動させますか?〉

「……ほんの少し、手前に」

恐る恐る呟いてみると、その通りに数センチほど我が家が僕の方に迫ってきた。

「も、元に戻して!」

すると元の位置に戻っていく。

「……うん、すごいけどこれも使えないや」

とんでもない機能だったけれど、まさか我が家をどこか別の場所に移動させるわけにもいかない。

目撃されたら騒ぎになるだろうし。

僕はこのスキルを封印することに決めたのだった。

◇ ◇ ◇

「うむ、よく来たのう! 歓迎するぞ!」

緊張しながら城内を案内されたシーファ一行。

通された豪華な部屋で彼女たちを待っていたのは、十歳ぐらいのやたら偉そうな幼女だった。

「子供? 領主様は?」

シーファが訊くと、深々と椅子に腰を下ろしたその幼女は「あっはっは!」と笑い出した。

「お主らの前におるではないか!」

「え? でも……子供にしか見えない」

「これでも還暦を過ぎておるんだがの」

「「「えええっ?」」」

一行が揃って驚くと、幼女はどこか満足そうな顔をして、

「驚くのも無理はない。ちなみにポピット族というオチでもないぞ? 我はごく普通の人間じゃ」

「じゃあ、何で……?」

「詳しくは言えぬが、ちょっと事情があっての。こんな姿になっておるのだ」

彼女の名はエリザベート=アーセル。

子爵位を有する正真正銘のこの街の領主だった。

元々は兄が領主を務めていたのだが、早くに死去した後、子がいなかったため妹の彼女が領主に就くことになった。

それが四十年以上前のことである。

「まぁまぁ、我のことはよいだろう。それよりお主らを招待したのは他でもない。ダンジョン攻略において多大なる成果を上げ、我が領地の発展に大いに貢献してくれた。その礼がしたかったのだ」

無駄な前置きを嫌う性格なのか、エリザベートはさっさと本題を口にする。

「しかも、聞けばつい先日また新たなポーションを使い、水中エリアを攻略したというではないか。あっぱれあっぱれじゃ」

それからエリザベートは椅子から立ち上がると、パンパンと手を叩きながら、

「詳しい武勇伝は食事を取りながら伺おうではないか。おい、準備を頼む」

「畏まりました」

「美味しそう! じゅるり」

ずらりと並ぶ豪勢な料理の数々に、セナが我慢できずに涎を垂らした。

「ちょっ、セナ……」

それをアニィが咎めようとするが、エリザベートは鷹揚に笑った。

「よいよい。マナーなど気にせずとも構わぬ。好きなだけ食べるがよい」

「わーい! いっただっきまーす」

言われた通りまったく遠慮することなく、ナイフとフォークを手に食べ始めるセナ。

「お、美味しい! 領主様、美味しい!」

「うむうむ、そうだろうそうだろう」

「でもこのお肉、どこかで食べたことあるような……?」

「こ、こらっ」

セナの口にした失礼過ぎる言葉に、アニィが慌てる。

だがその横で、シーファもまじまじと料理に使われた肉や野菜を見ていた。

「これって……」

「ちょっと、シーファまで……っ! 領主様の料理に、わたしたち庶民と同じ食材が使われてるわけ……あれ?」

アニィも気づく。

彼女の姉がやっている定食屋。

そこで使われている食材とよく似ていたのである。

「む? どうしたのだ?」

「い、いえ、何でもないですっ! それにしても本当に美味しいですね! 料理の技術はもちろんですけど、なんていうかもう、食材そのものが違うっていうか」

「ほう、お主、なかなか目の付け所がよいの。実はの、とある商人から特別な食材を仕入れておっての。ホピット族の商人なのだが、どうやって生産しているかは教えてくれんのだ」

(やっぱりお兄ちゃんのだーっ!)

(やっぱりあいつのじゃん!)

(やっぱりジオのだった)

三人の心の中の声が一致した瞬間だった。

なお、マーリンはずっと祈るように助手の名を心の中で呼び続けていた。

(デニスちゃんに会いたいデニスちゃんに会いたいデニスちゃんに会いたい――)