軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第184話 もう嫌……おうち帰る

黄金のドラゴンの襲撃を受けた後、僕は単身で第二家庭菜園へと舞い戻った。

というのも、あそこには今や色んな住民たちが住んでいる。

あのドラゴンに襲われていないか、心配だったのだ。

狙いはクルルだけみたいだったし、大丈夫だとは思うのだけれど、念のためだ。

僕の菜園間転移があれば、すぐに避難させることができるしね。

だけど転移した僕が見たのは、イオさんをはじめとする獣人たちだった。

なぜかとても殺気立っていて、

「逃がしはしない! 絶対にジオ君の仇を取る!」

「え? どういうことですか? 僕の仇……?」

僕がどうかしたのだろうか?

「あいつのせいでぼくのジオ君が死んでしまったんだ!」

「死んでしまった……? い、生きてますけど……」

「……へ?」

ゴーストじゃないよね?

ちょっと心配になって自分の身体を触ってみたけど、ちゃんとした感触があった。

「い、い、い、生きていたのかいっ!?」

こちらを振り返ったイオさんが仰天している。

詳しく話を聞いてみると、どうやらイオさんたちのところからもあの黄金竜の姿が見えたようで、心配になって菜園の中央まで駆けつけてくれたらしい。

黄金竜がブレスを放ったのがまさにそのときで、イオさんにはあれで僕たちが消し飛ばされてしまったように見えたようだ。

「大丈夫ですよ。いつもの転移を使って、その前に逃げていたので」

「あああ、よかったよおおおおおお……」

涙ながらに僕の無事を喜んでくれるイオさん。

「それで、あのドラゴンは……?」

「ああ、それなら向こうにいるよ」

イオさんが指さしたのはドワーフたちのいる一帯だ。

視線を転じると、先ほどのドラゴンらしき巨体が確かに見えた。

「って、戦ってる……っ?」

よく見るとワイドさんたちドワーフと交戦しているようだった。

あのドラゴン、狙いはクルルだけじゃなかったのか!?

「は、早く助けにいかないと……っ!」

魔境の森を突破してきたことから、ワイドさんたちが並の強さではないことは分かっている。

それでもあのドラゴンが相手では厳しいはずだ。

と思っていたら、黄金竜の巨体がぐるぐると回転し始めた。

えええっ、ワイドさんが尻尾を掴んで振り回してる!?

なんて力なんだ!?

それどころか、勢いよく放り投げてしまう。

ドラゴンの巨大な身体は、何度か地面を転がりながらブラーディアさんたちがいる吸血鬼たちのところへ。

今度はその吸血鬼たちと戦い始めた。

ここからだと遠くてよく分からないけれど、ブラーディアさんがめちゃくちゃ怒っているように見える。

「ええと……どうなってるの?」

さらに黄金竜が吹き飛ばされて、ミランダさんの塔――ただし彼女は不在――に激突してしまう。

すると弟子志望の魔法使いたちが出てきて、魔法を黄金竜にぶつけまくる。

ようやく魔法の嵐が収まったときには、鱗が剥がれ落ちてしまったのか、黄金竜からは眩い輝きが完全に失われていた。

そしてふらふらと逃げるように空へと昇っていく。

そのとき黄金竜がちらりとこちらを向いた。

一瞬だけ『……は? 何で生きている!?』という顔になった気がしたけれど、そのまま天へと帰っていく。

ひとまず危機は去ったみたいだ。

だけどもしクルルが生きていると知ったら、また襲ってくるかもしれない。

今回は僕がいたから大丈夫だったけど、もしクルルたちしかいないときだったら?

……ちょっと対策を考えないと。

◇ ◇ ◇

『ひ、酷い目に遭ったぞ……』

黄金竜はボロ雑巾のようになった身体に鞭を打ち、何とか空へと飛び上がった。

『白虎族にエルダードワーフ、それに吸血鬼まで……ここは一体何だったんだ……? まぁいい、目的は果たした。結局なぜ奴が復活したのか、そもそも本当に奴だったのか、分からないままだが……』

とそのとき、視界の端にあり得ないものが映った気がして、思わず二度見してしまう。

『……は? 何で生きている!?』

見間違いではなかった。

先ほど彼を襲った獣人たちに交じって、あの人間の少年の姿があったのだ。

『な、なぜだ!? 我のブレスで消滅したはず……っ!』

しかもまったくの無傷である。

どうやってブレスを防いだのかと、黄金竜は驚愕するが、近づいて問い詰めるわけにもいかない。

なにせあの獣人たちが傍にいるのだ。

今のこの身体では今度こそ殺されかねない。

『いや、生きているなら、なぜ我は攻撃されたのか……』

そもそもあれだけ激怒していたのに、あの後こちらを追ってくることがなかったのは、彼らが少年の生存を確認したからかもしれない。

幸い近くに危険な子竜の姿はない。

生き延びたのはあの人間だけか。

『っ……違う! この気配っ……や、奴はまだ、生きている……っ!?』

呆然とするあまり、またしても地上に墜落しかけたが、慌てて立て直す。

つまりこんな目に遭いながら、何の目的も果たせなかったわけだ。

踏んだり蹴ったりである。

『……もう嫌……おうち帰る……』

再び襲撃するような体力や気力があるはずもなく。

黄金竜はただよろよろと大山脈の巣へと帰っていくのだった。

◇ ◇ ◇

「よし、あのドラゴンの攻撃にも耐えられるはず」

「にゃ!」

「ぴぴぴ!」

「くるる~」

破壊されてしまった屋敷の代わりに、僕は三匹のための新たな家を作ってあげた。

といっても、僕が作ったわけじゃない。

ワイドさんたちドワーフの皆さんに頑張ってもらったのだ。

大きさはちょっと小さくなってしまったけれど、その代わり内部は各部屋の壁を取っ払った上に、余計な家具も置いていないため、かなり広く使うことができる。

これなら三匹でも十分に動き回れるはずだ。

……もちろんワイドさんたちが作ったものなので、所々に不必要な謎デザインが施されてはいるけれど。

まぁ多少は仕方ないだろう。

「ワイドさん、ありがとうございます」

「う、うむ。いつも世話になっているのだ。これくらいはお安い御用なのだが……」

ワイドさんはできたばかりの家を見上げ、言った。

「こんな大量のオリハルコン、一体どうしたのだ!?」

そう。

新しくできたこの家は、すべてがオリハルコンによって作られているのである。

あのドラゴンの鱗のように凄まじい光沢を放って眩し過ぎるので、一応塗装してそれを抑えているはずなのだけれど、それでも塗料越しに光が漏れてきていた。

無論このオリハルコンは菜園で栽培したものだ。

普通のやり方じゃ加工ができない超希少金属だけれど、普段から当たり前のようにアダマンタイトで芸術作品を作っているワイドさんたちならと思って、頼んでみたのである。

「この菜園で作れるようになったんです」

「オリハルコンまで……」

「アダマンタイトみたいに、もし必要なら言ってください」

「お、おう……」

ワイドさんが珍しく顔を引きつらせた。

「いいね、またあいつが来たら、この中に避難するんだよ?」

「にゃ!」

「ぴぴぴ!」

「くるる!」

僕が三匹に言い聞かせると、了解とばかりにそろって力強く敬礼した。

どこで覚えたんだろう。

そしてイオさんやブラーディアさんたちには、再びあの黄金竜が現れたときには、助けてくれるようお願いしてある。

この家、というか、強固なフィルター内に逃げ込んで、救援を待つという戦法だ。

「うんうん、これで三匹とも安心して暮らせるね」