軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第173話 言ってる意味がよく分かりません

「はああ……美味しかったです……」

初めてのお寿司に僕は大満足していた。

特にイオさんが自信満々にメインと銘打ったマグロは、それに相応しいものだった。

しかも巨大な魚というだけあって、部位によってまったく別物なのだ。

さっぱりして味の濃い赤身に、程よく脂が乗った中トロ、口の中でとろける大トロ、ペースト状にされたネギトロなど、どれもこれも絶品だった。

セナにも食べさせてやりたい。

今度連れてこようかな。

「ふふふ、またジオ君のハジメテを戴いてしまったね……」

意味深な笑みを浮かべながらイオさんが陶器製のコップを出してくる。

湯気が立っていて、中には色の濃いお茶が入っていた。

「ずずず……」

あまり飲んだことのない、ちょっとクセのあるお茶だけど、これもイオさんたちの故郷で飲まれているものなのかな?

でもお寿司を食べた後にすごく合うような気がする。

「ちょっとワイドさんのところの様子も見ておこうかな。……怖いけど」

イオさんにお礼を言って獣人区域を後にした僕は、北西にあるドワーフ区域へ。

「うーん……相変わらず凄いことになってる……」

訳の分からない巨大なオブジェが数を増し、上にも横にも大きく広がっていた。

「おお、ジオ殿ではないか!」

「うわっ!?」

いきなり足元から髭もじゃの頭が飛び出してきて、僕は驚く。

「って、ワイドさん?」

「うむ! ワイドである!」

「ええと……もしかして地下にまで〝芸術〟を伸ばしてるんですか?」

「その通り! 天高く聳え立つ大樹のように、我らが芸術もまた力強く根を張ってこそ、高く大きくなることができるのだ!」

言ってる意味がよく分かりません。

「そうだ、ジオ殿。実は他にも新たな試みをしていてな。ぜひとも貴殿にそれを体験してもらいたいのだ」

「体験、ですか……?」

嫌な予感しかしない。

だけど前のめりなワイドさんの頼みを断ることができず。

そして連れて行かれた先にあったのは、やはり謎のオブジェ群だ。

見たところ他のと大差ないよう見えるけど……。

「わしはこの一連の作品たちに、こう名付けた! 遊べる芸術、とな!」

「遊べる芸術……ですか?」

「うむ。例えばだ。あの巨大ホースが渦巻いている作品だが、実はあのホースの内部は滑り台になっているのだ!」

「滑り台に……?」

「そして向こうに見える巨大な船! 空中からぶら下げられたあれは、言わば巨大なブランコである! 中に乗って、大きく揺らせば大海原を疾走しているような快感を味わうことができるだろう!」

さらにワイドさんが指さした場所には、内部に色んな動物が配置された謎の円形小屋だ。

「あれはメリーゴーラウンドである! 床が回転する仕掛けになっているのだが、動物に騎乗し、大地を疾駆する心地を味わうことが可能なのだ!」

「ええと……つまり、子供用の遊具になってるってことですか?」

「子供用などではな~~いっ!」

「っ!?」

いきなり怒鳴られたのでビクッとなってしまった。

「大人でも十分、楽しむことができるのだ! あれを見よ!」

ワイドさんに言われて視線を向けると、そこには弟子のドワーフたちの姿があった。

「うほほーいっ!」

「がははははっ!」

「いやっほぉ~~っ!」

……めちゃくちゃ楽しそうに遊んでいた。

地面に敷かれたレール。

その上を走るトロッコに乗っているのだ。

しかし全員漏れなく髭面で、ガタイのいいドワーフたちである。

それが子供のように無邪気に遊具で遊んでいる光景は、なかなかシュールだった。

「ジオ殿っ! 一緒に遊びましょうぞ!」

「さあ、ジオ殿もご一緒に!」

「いやっほぉ~~っ!」

そんなふうに力強く誘われたので、

「す、少しだけですよ……」

僕は仕方なくそれに応じるのだった。

「うわああああああいっ!」

「ひゃっははははっ!」

「やっほおおおおっ!」

「いええええええええええええいっ!」

「あははははははははっ!」

「うひょおおおおおおおっ!」

「うわああああああいっ!」

「ひゃっははははっ!」

「やっほおおおおっ!」

「いええええええええええええいっ!」

「あははははははははっ!」

「うひょおおおおおおおっ!」

……はっ!?

我に返る。

もしかして僕、めちゃくちゃ楽しんじゃってた!?

い、いやいや、子供じゃないんだし。

さすがにこんな遊具で時間を忘れるくらい喜ぶなんてこと……。

「って、気づいたら日が暮れかけてる!?」

よく見たら周りがもう暗くなり始めていた。

そろそろ帰って夕食の支度をしなければいけない時間だ。

「そんなに遊んでた……? せいぜい十回ずつくらいしか遊んでないと思うんだけど……そういえば、途中からドワーフたちがいなくなってたような……」

作業に戻ってしまったのか、最後は僕一人で遊んでいた。

いつ彼らがいなくなったのかも覚えていない。

「どれだけ夢中になってたんだ……は、恥ずかしい……」

「どうやらジオ殿も気に入ってくれたようだな!」

ワイドさんが嬉しそうに傷口を抉ってくる。

「大人でも楽しめると言った通りだっただろう!」

「そ、そうですね……」

うん、本当に大人でも楽しめるやつだ。

だから夢中になってしまったのは仕方がない。

仕方ないったら仕方がない。

「……次はセナを連れて来てやろうかな」

根っからの子供だからきっと楽しめるだろう。