軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第159話 あれはヤバい子

「凄いな。こんなに大勢が参加するんだ。セナのやつ、大丈夫かな?」

「心配は要らない。セナなら予選くらい楽勝」

僕たちは武術大会の予選会場に来ていた。

シード権保持者を除けば、ここを勝ち抜いた人だけが本戦である大会に出場できるという。

予選には誰でも参加することができるらしく、そのためか予選会場には大勢の人たちがいた。

会場は本戦でも使用するという闘技場で、僕たちのような見学者は観客席から予選の様子を見ることができる。

「大勢に見られたりしなければ、シーファさんも絶対本戦にいけると思うんですが……」

「ギフトがあっても、どのみちセナには勝てない」

「そうなんですか?」

「あれはヤバい子」

ヤバい子って……。

「サラッサさんも出場しないんですね?」

「(ああああああああっ! こんなに屈強な男たちが沢山いたら、捗って仕方ないんですけどおおおおおおおっ!)」

「サラッサさん? だ、大丈夫ですか? 鼻から血が……」

「はっ!? ……な、何でも……ありません……ええと、何の話でしょうか……?」

「さ、サラッサさんは出場されないのかな、と思って……」

「……魔法使いには……不向きの大会ですから……もちろん、対人戦を得意としている魔法使いもいますが……」

確かに魔法の発動に詠唱が必要な魔法使いは、前衛がいて活きる職業だ。

短い詠唱で放つこともできるけれど、それだと十分な威力が出ないしね。

しかも一対一の本戦はともかく、予選は集団での勝ち抜き戦なので、なおさら難しい。

お陰で出場した魔法使いの大半が予選で敗退するそうだった。

その予選だけれど、今回は八のグループに分かれているという。

各グループには三十人近い出場者がいて、彼らが広い闘技場のフィールドを舞台に一斉に戦いを始める。

そうして最後まで残ったたった一人だけが、本選に進むことができるのだ。

本戦は、予選勝者たちとシード権保持者の、計八名によるトーナメントで争われる。

ちなみにシード権を得られるのは、昨年の大会の優勝者だけだ。

ただ今年は優勝者が不参加で、シードはないらしい。

「あ、見て。次がセナちゃんの番みたいよ」

アニィに言われてフィールドへ視線を向けると、三十人ほどの出場者に交じってセナが入ってくるところだった。

すでに二つのグループの試合が終わっていて、これが三つ目のグループになる。

「このグループでの最注目はあの金髪のイケメン騎士ね。王宮騎士団に所属していて、あの若さですでに副隊長を任されているそうよ。その実力は確かで、昨年は本戦に出場して二回戦まで勝ち進んだらしいわ」

その騎士が登場するや、観客席にいた女子たちから黄色い歓声が飛んだ。

「きゃーっ! ミシェル様よ!」

「かっこいい~っ!」

「抱いて~っ!」

「きゃっ、こっち見てるわ!?」

「はああ……死ぬぅ……」

彼が手を振って応えると、嬉しさのあまり気を失ったのか、女子たちが次々と倒れていく。

だ、大丈夫かな……?

それにしても凄い女性人気っぷりだ。

一方で、男たちからはブーイングが上がっている。

僕もそれに乗じて叫んでみた。

「セナ、あんなやつ倒してやれ!」

「自分がモテないからって、なに僻んでんのよ?」

「……」

アニィに図星を刺されてしまった。

そのセナはと言うと、こっちに向かって暢気に手を振っている。

「わー、お兄ちゃーん! お~い!」

緊張しろとは言わないが、もうちょっとくらい気を引き締めてもらいたいところだ。

「ちっ、能天気なガキだな。幾ら予選だからって、てめぇみてぇなのがいるとやる気が削がれるだろうが」

「ほえ?」

あーあ、言わんこっちゃない。

近くにいたガタイのいい男から注意されてるよ。

「最初は最有力候補を狙うってのがセオリーだが、まずはてめぇからぶっ倒してやるぜ。どうせ一秒もかからねぇだろうからな」

しかもターゲットにされてしまったようだ。

この予選、完全な乱戦になるので、展開次第でどうしても有利不利が出てしまう。

いきなり強者から攻撃されたり、複数人に狙われたりすると、実力者であっても敗退してしまうことがあった。

「ねぇ、セナちゃんの剣って」

「あ。取り替えてもらうの、忘れてる」

「ちょっ、大丈夫!?」

「そ、それって、あの信じられない魔法付与が施された剣ですよね……? 予選であれを使うのは危険なのでは……」

「い、一応、殺さないよう加減しなさいとは何度も言っておいたけど……」

女性陣がそんなやり取りをしていると、ついに試合開始のゴングが鳴り響いた。

その瞬間、出場者の大半が向かっていったのは、先ほどのイケメン騎士、ミシェルだった。

どうやらまずは力を合わせて最有力候補を倒すつもりらしい。

一方、男は宣言通りセナに向かっていた。

武器は長さ三メートルに迫る巨大な棍だが、両端は鉄球となっており、それが大ぶりの刺で覆われている。

相当な重量のはずだが、男は軽々と片手で振り回していた。

「こいつの重さは一トン! 普通の人間じゃ持ち上げることすら不可能だが、【超怪力】ギフトを持つオレには棒切れ同然! てめぇの貧弱な身体なんざ、一撃で粉々だろうよっ! おらああああああああっ!」

「ほい」

「……へ?」

セナの身体に激突する前に、鉄球部分が真っ二つに分かれ、上半分がどこかへ飛んでいってしまった。