軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第149話 動いていたように見えたんだけど

家庭菜園を草原の上へと離陸させた。

空を見上げてみると、すでに穴が塞がり始めている。

どうやら勝手に修復されるらしい。

凄いな、ダンジョン……。

お陰で助かった。

というのも、

ボトボトボトッ。

「「「う~あ~」」」

あの穴から何体ものゾンビが降ってきているからだ。

せっかくシーファさんが苦手な階層を突破したというのに、これではいつまで経っても顔を上げることができない。

実はシーファさん、先ほどからずっとアニィの豊かな胸に顔を埋めているのだ。

……羨ましい。

「この変態」

「えっ、なんで!?」

なぜかアニィに睨まれてしまった。

「さっきからわたしの胸ばっかり見てるでしょうが」

「ち、違うから! 誤解だ!」

羨ましいっていうのは、別にアニィの胸に僕も挟まれたいってことじゃないからね!?

いやまぁ、挟まれたくないかって言われると……その……。

「誤解? へえ、じゃあ一体何を見てらのかしらね?」

「ぐっ……そ、そんなことより! ここが第九階層か~」

盛大に誤魔化しながら、広大な草原を見渡す。

平坦な大地で、障害物もほとんどないので、かなり先の方まで見ることができる。

遠くにいる動物っぽいのは魔物かな?

この明るい雰囲気から考えて、この階層ならアンデッドなんて出ないはずだ。

「「「お~あ~」」」

って、そうだった。

まだ落ちてきたゾンビたちがいるんだった。

「セナ、早くそいつら片づけてくれ」

「ほえーい」

セナがあっさりゾンビを殲滅し、それをサラッサさんが魔法で焼き尽くす。

すでに穴は塞がったみたいなので、これでもうシーファさんも大丈夫なはずだ。

「シーファさん、ゾンビはもういませんよ」

「……ん、ありがとう」

恐る恐る顔を上げるシーファさん。

それにしても、遠くまで見通せるというのに、冒険者らしき影はまったく見当たらない。

ここまで潜ってくる冒険者なんて滅多にいないのだろう。

「大型の魔物がちらほら見受けられるわね」

「あれはブラッドエレファントですかね? あっちはビッグフットでしょうか? 向こうにバトルバイソンの群れらしきものもありますね」

一見すると平和的な草原地帯だが、そこは高難度ダンジョンの第九階層である。

棲息している魔物はいずれも危険度の高い強敵ばかりだ。

と、そのとき。

バトルバイソンの群れが突然、左右に割れた。

そのまま全速力でどこかへ逃げていく。

何が起こったのだろうと思っていると、群れの向こうから複数の巨大な影が迫ってくるのが見えた。

「人っぽい?」

「いや、それにしては大きいような気が……体長五メートルはあるバトルバイソンが、随分と小さく見えますし……」

「って、めちゃくちゃ大きくない!?」

二足歩行で走っているので、最初は人の集団かと思った。

だけどそれにしては大き過ぎる。

次第に地響きがこちらまで聞こえてきて、ようやくその正体を目視できるようになった。

「きょ、巨人の群れ!?」

「しかも誰か追いかけられてるわ!」

よく見ると小さな人影たちが必死に走っていた。

あれが普通の人のサイズだとしたら、それを追いかけている巨人たちの身長は十メートル、いや、中にはそれ以上の個体もいる。

「きっと冒険者。魔物に追われて逃げている」

「た、助けないと!」

咄嗟に家庭菜園を走らせ、巨人の群れの方へと突っ込んでいく。

普通なら自殺行為かもしれないけど、結界があるので大丈夫なはずだ。

「あの一番デカいやつ……もしかしてアトラスじゃ……?」

他の巨人より一回りも二回りも大きな巨人に、僕は見覚えがあった。

アーセルの街を襲ったスタンピードの原因にもなった、危険度Aの魔物アトラスだ。

どうやらこいつが他の巨人たちを従えているらしい。

たぶん下位種のサイクロプスだろう。

「雷撃を放ちます!」

巨人の群れまでかなり近づいてきたところで、サラッサさんが充填していた雷撃魔法を解き放った。

凄まじい破裂音が響き、中心にいたアトラスの右足に直撃。

アトラスは雄叫びを上げ、周囲の巨人を巻き添えにしながら轟音とともに地面にひっくり返った。

巨人たちの足が止まったので、その隙に逃げていた冒険者たちのところへ。

四人組だ。

しかも全員が僕たちとそう年齢の変わらない少年少女たちだった。

端正な顔立ちをした金髪の少年に、白い兎耳の少女、それからシーフ風の小柄な少年。

最後の一人は背の高い騎士風の少年だけど、怪我をしているのか、兎耳の少女に抱えられている。

よく自分よりも大きな人を抱えて走れるね……?

驚く僕だったけれど、向こうもこちらを見て目を丸くしていた。

「ぼくたち以外にこの階層に潜っている冒険者がいたなんて……」

「しかも随分と若いですネ」

「え? どうやって走ってんの? ってか、地面が動いてる……?」

「そんなことより、早くこっちに!」

僕が呼びかけると、不思議そうにしつつも大人しくこちらへと駆け寄ってくる。

そして家庭菜園へと飛び乗ってきた。

「何だ、この土は……」

「ふかふかしていますネ……もしかして、畑?」

「ねぇ、さっきこれ動いていたように見えたんだけど?」

「ウガアアアアアアッ!!」

「「「っ!?」」」

そこへ一体のサイクロプスが躍りかかってくる。

「くっ……危ない!」

「あ、心配しなくて大丈夫。結界があるんで」

サイクロプスが振り下ろしてきた拳が、結界に阻まれて弾き返された。

「「「……え?」」」