軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第119話 失踪事件 2

どうやら失踪事件の真相は、この吸血鬼による拉致事件だったようだ。

そう言えば、吸血鬼には人を魅了したり、支配したりする力があると聞いたことがある。

「あなたたちまとめて、アタシのモノにしてあげるわ」

美女吸血鬼がそう言って妖艶に微笑むと、どこからともなく現れた大量の蝙蝠たちが、シーファさんたちに襲いかかった。

「ふふふ、この子たちに吸血されたら最後、アタシの思い通りよ」

小さな蝙蝠たちに群がられて、その吸血攻撃を完全に防ぎ切るのは困難だ。

と思ったけど、

「多過ぎだよーっ!」

悲鳴を上げながらも、セナは凄まじい斬撃速度で、すべての蝙蝠という蝙蝠を斬り落としていた。

「近づくな」

一方、シーファさんは【女帝の威光】の力で蝙蝠たちの動きを鈍らせ、槍を振り回して叩き落していく。

「っ! や、やるじゃないの……」

その光景に目を剥く吸血鬼だったけれど、すぐに笑みを取り戻した。

「だけど、他のお仲間さんたちには難しかったみたいねぇ」

「ちょっ、こっち来るなぁぁぁっ!?」

アニィは吸血蝙蝠たちから必死に逃げ惑っていた。

このままでは追いつかれるのは時間の問題だ。

「痛っ」

そしてサラッサさんは、あっさりとまた吸血を受けてしまう。

「さあ、こっちにいらっしゃい」

「……?」

「? どうしたの?」

「ええと……ライトニング」

「ぎゃっ!?」

サラッサさんの雷魔法が、吸血鬼に直撃した。

「ど、どういうことっ!? 確かに吸血されたはず!」

「何ともないですけど……」

もしかしたら先ほど浴びた聖水の効果がまだ続いているのかもしれない。

アニィもそれに気づいたらしく、

「これをかければ……っ!」

頭から聖水を被った。

「くっ! 随分と厄介なもの持っているじゃない! だけど、いつまで効果を保ってられるでしょうねぇ!」

「んー、その前に倒しちゃえば?」

「っ!?」

いつの間にか蝙蝠を倒し終えたセナが、吸血鬼との距離を詰めていた。

「首切ったらさすがに死ぬよね? ――あれ?」

首を狙ったその斬撃は空を切ってしまう。

吸血鬼は一瞬で無数の蝙蝠へと姿を変え、空へと退避、そこで再び人の姿となった。

「油断も隙もならない子ね……っ! だけど、この高さじゃ、どうあがいても届かないでしょ?」

吸血鬼は背中の翼で空中に浮遊している。

剣が届く距離ではない。

「届かなくもないよー?」

だがセナは構わず剣を振った。

すると衝撃波が巻き起こり、吸血鬼を吹き飛ばす。

「~~っ!?」

ミランダさんが剣に付与した特殊効果の力だ。

壁に叩きつけられた吸血鬼が悶絶している。

「いたたた……何なのよ、もうっ……」

さらにセナが追撃しようとしたけれど、その前に吸血鬼はまたしても無数の蝙蝠となって、四方八方へと飛び散った。

「今日のところはアタシの負けよ。でも、アタシを捕えることは不可能ね。また別の街で若い女の子たちの血をいただくことにするわ」

そして蝙蝠たちはどこかへ飛び去っていく。

「逃げられたー?」

「仕方ないわ。それより被害者を探すわよ」

それから僕たちは手分けして屋敷内を捜索した。

そして地下室で被害者たちを発見する。

「っ!? あ、あなたたちは……?」

「安心して。助けに来た」

「わ、私たち、ここから出られるの!?」

見たところ全員、無事のようだ。

どうやら血を吸うことが目的だったようで、そのためか、ちゃんと食事などは与えられていたという。

それにしても若い女性ばかりだ。

あの吸血鬼の趣味なのかな……?

ルアさんたちの姿もあった。

やっぱり彼女たちも被害にあっていたらしい。

「うええええええんっ! 怖がっだよおおおっ! やっどおうちに帰れるぅぅぅっ!」

「はいはい、助かってよかったわね」

そのルアさんは安堵からか大泣きして、仲間に慰められている。

他の被害者に比べると、それほど長く捕まっていたわけじゃないはずだけど、精神的にかなり参っていたようだ。

「彼女たちのお陰よ。ちゃんと礼を言わないと」

「うぅぅぅ……ありがどぉぉぉっ! あどっ、色々ど酷いごどじで、ごめんなざぁぁぁいぃぃぃっ! あなだだちに嫉妬じてまじだぁぁぁっ!」

涙と鼻水を溢れさせながら礼と謝罪を口にするルアさんに、アニィも「う、うん……き、気にしてないわ……」と返すことしかできなかった。

それから被害者女性たちを連れ、僕たちは屋敷を後にした。

「冒険者ギルドに行く」

「そうね。報告もだけど、彼女たちを保護してもらった方がいいわ」

冒険者ギルドは恐らく、この街で最も安全な場所の一つだ。

被害に遭った女性たちの精神面を考えても、いったんギルドに預けるのが良いだろう。

それにしても気になるのが、あの吸血鬼だ。

去り際に言っていた通り、たぶんまた別の街で同じことをするだろう。

「そうだ、ブラーディアさんに相談してみよう」

ブラーディアさんは同じ吸血鬼だ。

きっと何かいい解決方法が分かるかもしれない。

目には目を、歯には歯を、そして吸血鬼には吸血鬼を、というやつだね。

というわけで、僕はシーファさんにその旨を告げて、第二家庭菜園へ。

シーファさんたちはしばらく今回の報告等で忙しいだろうけど、冒険者じゃない僕は何もすることないし、ちょうどいい。