軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 ドワーフが増えた(泣

「ジオ君! また来てくれたんだね!」

家に近づくと、まだドアに辿り着く前にイオさんが飛び出してくる。

いつもこうなんだけど、僕が来たことが分かるのかな?

「はい。実はお客さんが――」

「「「イオ様!」」」

僕が説明する前に、いても経ってもいられないとばかりに獣人たちが割り込んできた。

「っ! お前たちっ!? なぜここがっ?」

「イオ様の匂いを辿ってきたのです! よくご無事で!」

「お前たちもよくぞ無事で……」

涙ながらに抱き合っている。

事情は知らないけれど、感動の再会といった様子だ。

……水を差しちゃ悪いよね。

詳しいことを聞くのはまた今度にしようと考えて、ひとまず僕はこっそりこの場を立ち去るのだった。

「うん、少しは魔物が戻ってきたみたいだ」

自動菜園レベルアップ法を再開し、僕は順調に魔物を倒していく。

だけど、これをやるためには結界の一部を開けておく必要があるので、誰かが間違って入って来ちゃうこともある。

さっきはイオさんの知り合いだったのでまだよかったけど、今後は対策を考えないと。

って、よく考えたらここは魔境の傍だ。

こんなケース、滅多にあることじゃないし、心配しても仕方な――

「何だ、ここは!?」

「農園か? しかしなぜこんなところに!?」

言ってる傍からまた誰か入って来たし!?

今度はドワーフたちだ。

もしかしてだけど、ワイドさんの知り合いとかじゃないよね?

「ええと、初めまして。訳あって、ここで家庭菜園をやってます。あなた方は……?」

「見ての通り、旅のドワーフだ。里を追放されたある方を探している」

「里を追放された……?」

「そうだ。素晴らしい鍛冶の腕を持ちながらも、少々破天荒な方であったがゆえ、里長を激怒させてしまったのだ」

どこかで聞いた話だ。

ていうか、どう考えてもワイドさんのことだよね……。

「そして我々はあの方を慕っている者たちだ。また里に戻っていただけるよう説得するため、こうして行方を追って旅をしている」

どこにいるかも分からない追放者を探して旅をするなんて、並大抵の覚悟じゃできない。

あの変人をそこまで慕う人たちがいたなんて……鍛冶の腕の方はきっと超一流なのだろう。

……何とも惜しい話だ。

でも、もしかしたらこの人たちに説得されれば、ワイドさんも心を入れ替えてくれるかもしれない。

僕はそんな期待を抱きながら、目の前のドワーフたちに伝えた。

「実は心当たりがあります。その人、ワイドさんって言いませんか?」

「っ!? 知っているのか!?」

「はい。実はこの菜園にいるんです」

というわけで、彼らをワイドさんのところへ案内することにした。

「「「こ、これは……」」」

ドワーフたちが絶句している。

……ワイドさん、また変なのたくさん作ったな。

あの魔改造された自宅の周囲に、謎のオブジェが林のように乱立しているのだ。

どこか異界にでも迷い込んでしまった心地になる。

うーん……さっきは同族の人たちが説得すれば心を入れ替えるかもと思ったけれど、これを見ていると難しい気がするなぁ。

むしろ僕が気軽に素材を提供したせいで、ワイドさんの暴走を加速させてしまったかも……。

「ええと……どこかにいるはずなんですが……」

言葉を失っている様子のドワーフたちに、僕は申し訳なくなりながら声をかける。

よほど衝撃だったのか、身体をぶるぶると震わせてるし……。

「「「す……」」」

「す?」

「「「素晴らしいぃぃぃっ!」」」

「……ええっ?」

突然、彼らが上げた叫び声に、僕は耳を疑った。

素晴らしい?

何が? どういうこと?

「なんて素晴らしい作品たちなのだ!」

「そうかっ……これがっ……これこそが、ワイド師匠の目指していた芸術……っ!」

「今ようやく分かった……っ! 師匠が鍛冶を捨ててまで、芸術を志したその意味が……っ!」

「師匠はやはり天才だ! いや、大天才だ!」

ええええええっ!?

ちょっ、何でこの人たち、感化されちゃってるの!?

芸術とか言って、どれもこれも意味わかんないでしょっ?

どこがいいの!?

と、そこへ彼らの叫び声が聞こえたのか、蛙っぽい謎のオブジェの口からワイドさんがひょっこり顔を出した。

……それ、中に入れるんだ。

「む? お前たちはっ……。一体、何の用だ? まさか、わしを連れ戻しにきたわけではあるまいな? 生憎、ここはわしにとっての天国だ。帰るつもりなど毛頭ないぞ?」

彼らの目的を鋭く察知したワイドさんは、先回りするように断言した。

けれど、ドワーフの一人は大きく首を振って、

「そのつもりで里を出ましたが、その考えはたった今、捨て去りました! 師匠! 俺はあなたとともに芸術の道を追い求めてみたい!」

いやいやいや、絶対にやめた方がいいって!

悪いこと言わないから思い止まって!

僕のそんな心の叫びも虚しく、ドワーフたちは次々と表明する。

「俺も同じ気持ちです! こんな素晴らしい作品を見せられて、魅せられないはずがない!」

「ああっ、芸術を馬鹿にしていた今までの自分を殴りたい!」

ワイドさんは同族からの大絶賛に先ほどまでとは打って変わって、満面の笑みを浮かべた。

「おおっ! お前たちもわしの芸術の価値がようやく理解できたか! いいだろう! お前たちもここで芸術を追求してみるがよい!」

勝手に決めないで!?

ここ僕の家庭菜園なんだけど!

「ただし、わしに教えられることはほとんどないぞ! なぜなら芸術というのは、己の魂の爆発だからだ! 他者に言われてやるものではない!」

「「「はいっ、師匠っ!」」」