軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第114話 知らない人たち

僕たちが村に届けたのは、主に、食料、衣料品、医薬品、生理用品といったものだ。

どうやらこの村、一週間ほど前に酷い暴風雨の直撃を受けたらしい。

それにより川が氾濫して、重要な街との交通路だった橋が壊れ、さらには作物や家屋にも甚大な被害を被ったそうだ。

現在は村人総出で復興作業に当たっているところだというが、やはり橋が壊れて大きな迂回を余儀なくされてしまったことで、物資の不足が深刻化していたという。

僕たちが橋を架けてあげたので、今後はもう少し改善されることだろう。

さらに僕は、菜園で収穫した作物を提供することにした。

迂回ルートだと二、三日はかかっていたため、届けてもらう食料も大半が加工品などの保存食で、しばらく新鮮な食べ物にありつけていなかったそうなのだ。

それが予想以上に村の人たちから感謝されて、宴会が開かれることになり、豪華な料理をご馳走してもらった。

「何から何まで本当にありがとうございます。皆様方は村の大恩人ですじゃ」

ぜひと言われてしまったので一晩、村に泊めてもらった僕たちは、翌朝、村長さんをはじめとする村人たち全員に見送られて、メラの村を出発した。

一泊二日でランダールの街へと戻ってきた僕たちは、報告のため冒険者ギルドへ。

するとそこで、ルアさん一行にばったり出くわした。

ルアさんは怪訝そうな顔で訊いてくる。

「もしかしてまだ出発していなかったの? 急を要する依頼だから、あんまりのんびりしてられないわよ?」

「違う。依頼を終えて戻ってきた」

「……は?」

シーファさんが端的に否定すると、ルアさんは目を丸くした。

「ちょっ、なに冗談言ってるのよっ? こんな短期間で往復できるわけないじゃないっ! 片道でも二、三日は……」

そこでハッとしたような顔になり、ルアさんは慌てて口を閉じる。

それに目敏く反応したのはアニィだった。

「ねぇ、まさかとは思うけど……橋が壊れていることを知った上で、わたしたちにあの依頼を押し付けてきたわけじゃないわよね?」

「な、何のことかしら? 押し付けたなんて、人聞きが悪いこと言わないでよ。あなたたちに譲ってあげたの」

アニィの追及に、ルアさんは動揺からか目を泳がせながら言う。

明らかに怪しい反応に、すかさずアニィは切り込んだ。

「今あんた、片道で二、三日って言ったでしょ? 橋があったらそんなにかからない。明らかに迂回するしかないと知っていたでしょ」

「……」

ルアさんは何も言い返せないのか、しばし口を噤んだ後、

「だったら何だっていうのよ? もし知っていたとしても、伝えなくちゃいけない義務なんてないでしょ?」

うわ、完全に開き直った……。

アニィが苛立ちながら言い返す。

「マナーとしておかしいっつってんのよ」

「はっ、冒険者にマナーを求める方がどうかしてると思うけどね」

「……わたしたちに教えた宿や飲食店、どっちもおススメどころか、評判の悪い店だったでしょ? 怪しいと思って調べたのよ」

そうだったんだ……親切心からだと思ったのに……。

それにしてもいつの間に調べたのだろう?

「あら、そう? 生憎、あたしも人から勧められただけだから、実はよく知らないのよねー」

「白々しい……。どうせ、わたしたちにヒドラ討伐の依頼を横取りされた腹いせでしょ? まったく、度量の小さと性格の悪さに呆れるわね。そんなんだから、いつまで経ってもBランクに昇格できないのよ。ま、男たちにチヤホヤされて喜んでるだけの典型的な女子会パーティじゃ、仕方ないでしょうけどね」

「な、何ですって……っ!」

逆鱗に触れる内容だったのか、ルアさんはいきなり声を荒らげた。

「ちょっ、ルア! 落ち着いて!」

「ここで喧嘩はダメよ!」

今にも殴りかかろうとするルアさんを、メンバーたちが慌てて止める。

と、そのときだ。

ずっと興味なさそうに明後日の方を見ていたセナが、不意に口を開いた。

「ねーねー、この人たち、誰~?」

もちろん今までも何度か会っているはずなんだけれど、どうやらセナの記憶にはさっぱり残っていないらしい。

……まぁセナだから仕方ないよね。

「「「なっ……」」」

ただ、うちの妹のそうした性質を知らないルアさんたちは、ショックを受けたようだ。

さらに追い打ちをかけるように。

セナの質問に答えようとしたシーファさんが、うーんと唸って、

「………………名前、忘れた」

確かに名前はちょっと難易度が高いよね。

僕も名前まで覚えているのはルアさんだけだ。

「「「っ……」」」

ルアさんたちは言葉を失っている。

「知らない人? 知らない人といつまで話してるのー? 早く帰ろーよ」

「セナ、お前はもうちょっと空気を読めるようになろうな……」

「ほえ?」

絶句するルアさんたちを見て、アニィが意地悪な笑みを浮かべた。

「ぷぷぷっ、どうやらうちのメンバーたちの眼中にすらなかったみたいねー? ま、悔しかったらこんな陰湿なやり方じゃなくて、冒険者としての実績で勝負してきなさいよ」

「っ……う、うるさいっ! 行くわよっ!」

ルアさんは怒りからか恥ずかしさからか、全身をプルプル震わせながらそう怒鳴ると、メンバーたちとともに足早に立ち去ったのだった。